表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者(♀)の異世界旅行記《トラヴェローグ》  作者: 青咲凛
第1章 地下水道の幽霊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/46

27. 幻影?


「情報交換……?」

「そ。お兄さんが知ってること全部吐いてくれたら、こっちも知りたいことなんでも教えてあげる」


 優しい笑みを浮かべながら、獣人の少年がそんな提案を口にするのを聞いて、マーリンは顔をしかめた。


(つっても、こっちも知ってることとかあんまりないんだが……)


 チラリ、と首もとの刃物の感触に視線を落とす。


 おそらく、これは脅迫だ。

 お願いという形をとった命令。

 ただ知ってることを全部吐いてそれで終わりとはいかないだろう。

 話せば用済みだから殺す、というのも全然ありうる。

 知ったからには生かしてはおけないなんて話はありふれているものである。


「……命の保証をしてくださるのなら」


 何の意味もない口約束。

 しかし、保険として言っておくことくらいはやっておいてもいいだろう。


「それを決めるのはお前じゃねぇ」

「まぁまぁ、待ってよカシュ―」


 苛立たし気に声を荒げるカシュ―と呼ばれた少年に、獣人がなだめるように制止する。


「いいじゃないか。君のご主人様についても色々聞きたいことがあるからね。

 情報次第じゃ、奴隷身分からの解放を手伝ってあげても構わない」

「チッ、これだから勇者ってやつは……」


 カシュ―が舌打ちし、押し付けられた刃物の感触が緩くなる。


 どうやら、一応話は通じるみたいだ。

 マーリンがほっと胸をなでおろすと、獣人はスッと目を細めてこちらを覗き込んだ。


「それじゃあ、話を聞こうか。

 まずはそうだね──どうして、ここにいるのかな?」


 ***


 ゲシュペンストの肋骨にへし折られた剣を見て、私は舌打ちしながら次の作戦を練り上げていた。


 案はある。

 〈金属操作〉で折れた剣の破片を操作して魔石に突き刺すのだ。

 しかしあの頭の良さだ、そんなに簡単にうまくいくとは思えない。


 もっと何か、何か見落としているものがあるはずだ──。


 高速で回る思考をよそに、ゲシュペンストが大鎌をこちらに向ける。

 鎖分銅が風を切って、こちらに打ち出された。


「くッ!?」


 反射的に手斧をストレージから引っ張り出してパリィする。


 とにかく逃げてちゃだめだ。

 攻めて攻めて、相手の隙を作り出す──!


「せやぁ!」


 姿勢を低くしてゲシュペンストに突っ込んだ。


 引き戻される鎖分銅を気配で察知しながら手斧を投げて〈金属操作〉でパリィしつつ、同時に奴の足元に転がる折れたショートソートを引き戻す。


 リーチは短くなったが、おかげで大鎌の間合いより内側に潜り込める!


 振り回される大鎌を、ゆっくりと動く視界の中で見極めながら回避する。


『スキル〈高速思考〉のレベルが2に上がりました』


 レベルが上がったことでさらに遅くなる世界。

 パリィのタイミングがずれる──


「ぐッ!?」


 捌ききれずに一撃をもらい、獲物が手から離れて右目が裂ける。

 痛い。

 怖い。

 だけど──


(止まれば死ぬ──!)


 一瞬、脳裏にマーリンの生意気な顔が過った。

 私はまだ彼に何もしてあげられていない。

 ただ自分の手元に寄せて、少しだけマシな環境に移してあげただけ。


 私が死ねば、あの子の面倒は誰が見る?


「ぁぁぁあああああ!!!!」


 ──死ねない!


 〈金属操作〉で引き戻した手斧で何とか続く袈裟の一撃をいなしながら、弾き飛ばされたショートソードを上空からその頭に向かって落下させる。


「ギュワワワ!?」


 衝突の寸前で気づいたゲシュペンストが身を翻す──と、同時。

 奴の足元に転がっていたショートソードの破片を〈金属操作〉で真上の赤い魔石へと打ち込んだ──が。


「な……ッ!?」


 奴の持っていた大鎌の石突が、私が狙っていた破片を押さえつけて動きを止めていたのである。


 頭上からの接近に気づくのに遅れたのは、初めからこっちを警戒していたからか!


 ゲシュペンストが石突に力を込めて破片を砕く。

 それと同時に、振り回された鎖分銅が思いっきり私の鳩尾に叩きつけられた。


「ごふぁ……ッ!?」


 ──吐血。


 口の中一杯の鉄錆の味に、私は何度も咽ながら石畳の上を転げまわった。

 中学生のころに経験した車との衝突事故なんて比べ物にならない激痛と共に、血まみれの吐瀉物があたり一帯に吐き散らかされる。


「……ッ」


 まずい。

 まずいまずいまずいまずいまずい……!


 何とか体勢を立て直そうともがくが〈自然回復〉が間に合わない。

 スキルレベルを底上げしようにもポイントはすでに〈気配察知〉に使ってしまった。


 今他に使えるものは何がある?


 スキル欄を開きながら、ゆっくりとこちらに近づいてくるゲシュペンストを見やる。


 ──と、不意にその真横に、今もなお悪夢に犯されているらしいジュンたち3人の姿が目に入った。


(……そういえば、なんでこの3人はまだ死んでないんだ?)


 普段なら不謹慎だとたしなめられそうな思考。

 しかし現にあの3人はまだ死んでいない。


 20時間も放置されていた?

 何のために?


 まさかとは思うがあの魔物……何かに操られているのでは?


 初心者講習の時に、アイザックが言っていたことを思い出す。


『一説によれば、それは自然と人類のバランスをとるために、神がそう仕組んだのだと言われている』


 私はこれを聞いた時、人類が増えすぎないようにするために、人間を間引く役割として魔物がいるという仮説だと認識した。

 それが、魔物が人類を襲う本能に対する一般的な解釈だと。


(そういえばマーリンが術式の説明の時に言ってたな……たしか、魔力は精神の働きに直接的に作用するって……)


 魔物は純粋な魔力の塊であって生き物ではない。

 そして魔力は精神の働きにダイレクトに干渉を受ける。


 ──ということは。


「魔法は、イメージが重要なんだっけなぁ……ッ!」


 振りかざされる大鎌に、私はにやりと笑みを浮かべた。


「鑑定!」

「ギュワ?」


 怪訝な表情をしつつも、警戒したように立ち止まるゲシュペンストを脇に置いて、私は鑑定画面を開いた。


 鑑定対象は、この結界の術式そのもの。

 そこから魔力の流れを再鑑定。


 新しく開いたウィンドウに、まるでプログラムコードのような羅列が展開する。


 プログラミングとかはあまり詳しくないが、しかしそれについては問題ない。

 マップ画面を開いて鑑定画面と接続し、術式と魔力の接続が物理的に見えるようにUIを変更。

 さらにそこから主導権までのバックドアを鑑定で導き出し、物理的にそれが繋がっているコンセント的なものを検索する。


「見つけた!」


 そしてそれを物理的に手で引き抜いて、その権限を自分に移植しなおした──直後。


「ギュワワ!?」


 突如、空間全体がバリバリと軋みを上げるような音を立て始め、グラグラと揺れだした。


 術式の権限が私に移った瞬間、術式へ流れるのに十分な魔力を失った結界が自壊を始めたのだ。


 世界が形を失いだす。

 歪み、千切れ、狂い、まるで嵐の海に生まれた渦潮に吞み込まれるがごとく、ただ一点──部屋の中央へと吸い込まれていく。


「ハハハ、大当たりだ!

 やっぱりそうだと思ったんだ!」


 轟音とともに圧縮されていく世界の中で、私は叫んだ。


 あの怪物──ゲシュペンストは実在する魔物なんかじゃない。

 全部、この〈反転結界〉の術式、その使用目的が作り出した幻影だったんだ。


 魔物のくせに人を襲って殺さないなんて変だと思ったんだ。

 つまりそもそも、この結界自体が殺人を目的にしているわけじゃなかった。


 だからあの3人は死んでいなかった!


 魔法はイメージがすべて。

 そのイメージを成立させるための強固な自己暗示的なものが結界を支えているのなら、その魔力を奪いつつそのイメージの根拠を崩してやればよかったんだ!


 すべてが渦に飲み込まれ、世界ががらりと切り替わる。


 するとそこには、既にゲシュペンストの姿は影も形も残ってすらいなかった。


『スキル〈結界〉を獲得しました』

『結界スキル関連アーツ〈反転結界〉を獲得しました』

『ステータスレベルが8に上がりました』

『称号〈何にも束縛されない〉のレベルが2に上がりました』

『称号〈無謀な挑戦者〉のレベルが2に上がりました』


 ***


「なるほど、そんなところにまで被害が……」


 マーリンが今回の依頼についての説明を終えると、獣人の少年は顎先に指を立てながらぽつりとつぶやいた。


「何か心当たりが?」

「心当たりというより、その事件の原因だね」


 言って、彼は何かを問いかけるように視線を背後の少年カシュ―へと向けた。


「君、勇者って知ってるかい?」

「……勇者って、あの神話に出てくる勇者ですか?」


 土から世界を生み出し、光を満たした主神ダグダ。

 しかし強い光には同時に濃い影を生むもの。

 創世の光を蝕むように生まれた影は魔物を生み出し、中でもより強大な影は魔王となって神々へ反逆した。

 その反逆者たる魔王から人類を護るために主神ダグダが生み出したのが──勇者。


 だが、それはあくまで御伽話だ。

 神話は実話ではなく、教義を学ばせるための寓話。

 だから勇者というのも実際には、率先して魔物の脅威から人類を護ることを是とせよ、という神殿の教えの一環だと、マーリンは解釈していたのだが。


「そう。あれ、実話なんだよ」

「……は?」


 だから、彼の口から飛び出してきたその言葉に、思わず素っ頓狂な声が出てしまったのは仕方がなかったのかもしれない。


「あははは、君、面白い顔するね!」

「い、いやだって、勇者はただの御伽話で──」


 そんな風に戸惑っていた時だった。


 突如、彼が持っていた鏡が大きな音を立てて砕け散ったのは。



現在の悠里のステータス


 +++


■ステータス■

 名前:鑑 悠里 Lv.8

 性別:女

 種族:異世界人 Lv.1

 職業:ノービス Lv.1

 称号:〈異世界人〉Lv.1

    〈臆病者〉Lv.2

    〈何にも束縛されない〉Lv.2

    〈無謀な挑戦者〉Lv.2

    〈導師見習い〉Lv.1

    〈追跡者〉Lv.1

    〈暗がりに潜む者〉Lv.1


 HP:80/80

 MP:80/80

 SP:110/110


 筋力:25

 活力:9

 速度:9

 知能:9

 感覚:15


 残りステータスポイント:0


■スキル■

◇武術系◇

 〈剣術〉Lv.4

  └〈偃月殺法〉Lv.1

   〈聖柄の太刀〉Lv.1

 〈体術〉Lv.1

  └〈空気投げ〉Lv.1

   〈投擲〉Lv.1


◇魔術系◇

 〈呪詛〉Lv.1

  └〈隷属の首輪〉Lv.1

   〈契約の呪詛〉Lv.1

   〈制限の呪詛〉Lv.1

   〈洗脳〉Lv.1

   〈幻惑〉Lv.1

   〈認識阻害〉Lv.3

   〈夢の檻〉Lv.1

   〈金縛り〉Lv.1

   〈蝕む痣〉Lv.1

   〈服従の呪詛〉Lv.1

 〈魔法〉Lv.1

  └〈術式理解I〉Lv.1

 〈結界〉Lv.1

  └〈反転結界〉Lv.1



◇身体操作系◇

 〈身体操作マスタリ〉Lv.1


◇防御・回復系◇

 〈自動回復〉Lv.2

 〈食い縛り〉Lv.1


◇耐性系◇

 〈驚愕耐性〉Lv.1

 〈痛覚耐性〉Lv.1

 〈負傷耐性〉Lv.2

 〈転倒耐性〉Lv.1

 〈気絶耐性〉Lv.2

 〈トラウマ耐性〉Lv.1

 〈脱水症耐性〉Lv.1

 〈熱中症耐性〉Lv.1

 〈精神攻撃耐性〉Lv.1

 〈拘束耐性〉Lv.1

 〈呪詛耐性〉Lv.4

 〈隷属無効〉Lv.1

 〈恐怖耐性〉Lv.3

 〈不意打ち耐性〉Lv.1

 〈閃光耐性〉Lv.2

 〈麻痺耐性〉Lv.1


◇隠遁系◇

 〈忍足〉Lv.2

 〈気配隠蔽〉Lv.2


◇感知系◇

 〈洞察〉Lv.2

  └〈名推理〉Lv.1

 〈気配察知〉Lv.5

  └〈霊感〉Lv.1

   〈先の先〉Lv.1

 〈魔力感知〉Lv.1

 〈遠見〉Lv.1

 〈暗視〉Lv.1


◇生活系◇

 〈交渉〉Lv.1

 〈高速思考〉Lv.2


◇ギフト系◇

 〈水神の加護〉Lv.1

  └〈水中呼吸〉Lv.1

   〈水上歩行〉Lv.1

   〈水袋勁〉Lv.1


 〈木神の加護〉Lv.1

  └〈成長促進〉Lv.1

   〈効力増強〉Lv.1

   〈笑桜勁〉Lv.1


 〈火神の加護〉Lv.1

  └〈二段跳び〉Lv.1

   〈燃焼無効〉Lv.1

   〈火鳥勁〉Lv.1


 〈土神の加護〉Lv.1

  └〈障壁〉Lv.1

   〈土圧無効〉Lv.1

   〈捻央勁〉Lv.1


 〈金神の加護〉Lv.1

  └〈金属操作〉Lv.2

   〈即死耐性〉Lv.1

   〈拡金勁〉Lv.1


 〈五行神の加護〉Lv.1

  └〈気功法〉Lv.1

    └〈遠当て〉Lv.1

     〈沈墜勁〉Lv.1

     〈纏絲勁〉Lv.1

     〈十字勁〉Lv.1


 残りスキルポイント:3


 +++



読んでいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ