18. 重要キャラ?
結論から言うと、私が今回使ったのは〈金属操作〉のスキルだった。
ただ、それだけだと不安が強いので、ショップで購入した麻痺毒を剣に塗って、傷口から徐々に敵を弱らせていくという作戦を併用したのである。
あとは、アイザックから習った陰中の陽。
〈認識阻害〉で距離を誤認させて、相手の剣は届かないけど私の剣は届くようにしたりとか、〈金属操作〉で一瞬剣を止めて相手の戦闘リズムを崩したりした。
これを習っていなければ、多分私は死んでいたかもしれない。
だって、なかなか毒が効かないんだもの。
正直滅茶苦茶焦ったね。
スタミナもかなり危うかった。
挑む前にデイリークエストでスタミナ上げておいてよかったよ。
詰め所で調書を書き、ジルバを抱っこしてミネルバ宅へ返した私は、ギルドで報酬をもらってその場を後にする。
見上げれば空はすでに暗く、満天の星と明るく大きな満月だけがこちらを見下ろしていた。
「今日1日、これだけ働いて、報酬が危険手当込みで銀貨1枚と大銅貨30枚か……。
クエスト画面からの報酬を合わせても銀貨3枚……」
ログインボーナスでお金がもらえてなかったら、金欠過ぎて生きていけないな、まったく。
スマホに感謝しながら宿までの帰路を進む。
道は、星明りと月光のおかげで、思っていた以上に暗くはなかった。
加えて今回の依頼で習得した〈暗視〉のスキルのおかげで、ほとんど昼間と変わらない明るさで見えている。
レベル1でこれくらい明るいなら、レベル5になるとどうなっちゃうんだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、今朝に奴隷市が開かれていた場所に差し掛かった。
馬車では奴隷商の主人がちょうど片づけをしているところで、檻には1人の少年を残すのみになっていた。
さらさらとした銀色の髪。
まるで宝石のような蒼い瞳。
骨と皮だけの細い体だったが、何か強く惹かれる魅力のようなものがあった。
この世界に来てまだ日は浅いが、このような髪色と瞳の人物は見たことがない。
おそらく一般的ではないのだろう。
長年鍛えたゲーム脳が、フラグの匂いを検知する。
それに何より個人的に銀髪碧眼奴隷ショタという属性がなんというかもう、捨て置けないというか、癖というか。
ふらっと入ったペットショップで一目ぼれしたような感覚に近い感動を覚えた私は、そのまましばらく立ち尽くしてしまった。
不意に、少年の視線が持ち上がり──
「なんだい嬢ちゃん、店はもうしまいだよ」
奴隷商の声で我に返る。
少年から視線を移すと、男は疲れた顔でこちらを見下ろしていた。
「尤も、この不良在庫を買ってくれるってんなら付き合ってやらんでもないがね」
木箱を片付ける手を止めて、少年の方へ顎をしゃくる。
「不良在庫、ですか?」
「あぁ、見た目はいいんだが、こいつの素性のせいで全く売れなくてな。
頭抱えてんだよ」
ため息を吐き、木箱に腰を下ろす商人。
「聞いてくかい?」
自虐気味な笑みを浮かべながら尋ねてくる。
私は少年から向けられる視線に、どことなく諦めのような色を感じた。
たぶんきっと、自分を買ってくれると期待したのに、商人のその言葉のせいでまた売れ残るのだと確信したような、そんな感じの顔だった。
「じゃあ、えっと、聞くだけ」
「まあ、愚痴みたいなもんなんだけどさ──」
商人の話によると、どうやら彼はもともとある司祭の子供だったらしい。
それが、2年前の飢饉を期に口減らしとして売られていたので、商人は喜んで彼を買ったという。
貴族、しかも神殿関係者が自分の子供を売ることは珍しい。
きっといい金になると期待して買ったはいいが、後にその司祭が、夢魔に犯されてできた子供だから売ったという噂が市井の間に流行してしまった。
要するに──血筋はいいが、曰く付きすぎて売れないと、そういうことらしい。
「夢魔って、サキュバスとかインキュバスとか、そういうのですか?」
「そうそう。
おかげで貴族には売れないし平民の方も魔物との間にできた子供だって気味悪がって買ってくれなくてよ。
俺ぁ、多分司祭が浮気してできたのをとりあえずそういうことにして売っ払ったんじゃないかって睨んでるんだが……そんなこと公に言ったりしちゃあこっちの首が飛ぶんでね。だから今のはここだけの話にしてくれると助かる」
個人的には、夢魔の血を引いてくれていた方が中二病感あっていいと思ったが、商人の話を聞くと実際の方はそちらの方がもっともらしい説明に思えた。
「さらに言えば、買い取ってくれるならもっと助かるぜ。
何せ2年も売れてないんだ、こいつの世話代だけでも浮けば、こっちも身軽になれて良いしな……どうだ? 今なら大銅貨30で売ってやってもいいぜ?」
「大銅貨!?」
大銅貨で、この男の子を好きにしていい権利が手に入るのか!?
彼のセリフに、私は思わず目を見張った。
今朝の奴隷市じゃあ、大銀貨でやり取りしていた代物だ。
あのジルバでさえ大銀貨8枚はした。
私の今までの感覚で大銅貨と言えば、ちょっといい食事とか、あるいは安い下着を買うのに使うような硬貨だ。
下手すればパンツとかと同じ値段ですらある。
「破格だろう? こんな曰くがなけりゃあ金貨何枚になってたかわかんねぇツラだ。
護衛や弾避けに使ってもいいし、嬢ちゃんくらいの年齢なら夜の相手にしたって不足はねぇ」
「~~っ!?」
夜の相手、という言葉に、思わず顔を赤くする。
もちろんそういうことをするのには肉付きが悪いので治療したりなんなりが優先されるが、もろもろ準備が整えばそういうことも悪くないかもしれないとは確かに思った。
しかし、年齢的にそういうことをするのはよろしくない。
イエスショタノータッチである。
まあ、相手から誘ってきた分には?
こちらもやぶさかではございませんが。
「冗談だよ冗談!
法律でもちゃんと、そういうことは例え奴隷であっても未成年にはしちゃいかんって決まっとるからな。
奴隷にも基本的人権はある」
笑いながら背中を叩く商人に、私は恥ずかしくて少し大きなため息をついて、話題転換を図った。
「基本的人権、っていうのは?」
「ああ、命の保証だな。故意に怪我をさせたり殺したりしちゃダメって話だ。
昔流行ったんだよ、ストレス解消のために奴隷を殺すのがな。
でもそんなことしてたら奴隷がこの世からいなくなっちまうだろ? そしたら人攫いが増えて違法な奴隷も増える。 そうなると治安が悪化して不味いから、せめて命の保障だけは基本的な人権として奴隷にも持たせた方がいいってなったのさ」
「な、なるほど……」
倫理的な理由というよりは、どうやらきわめて合理的な理由による制限らしい。
未成年に対する性的な行為が禁止されているのも、おそらくここにあるのかもしれない。
未成年での妊娠出産は死亡リスクが高いからな……。
「それでどうするよ?
こいつの自己申告ではあるが、貴族出身のくせして家事炊事なんでもできるらしいぜ?
雑用押し付けるにはもってこいだ。
それに、嬢ちゃん見た感じ前衛だろ?
こいつ魔法も得意らしいから、いいサポーターになると思うぜ?」
最後の一押しと言わんばかりに売り文句を重ねる奴隷商。
私としても、銀髪碧眼の元貴族のショタを見過ごすのは正直かなり惜しい。
とはいえ、喜び勇んで買うのも何というかはばかられる。
そんなわけで私は、彼の熱意に負けたという風を装って懐から大銅貨を30枚引っ張り出した。
「……そうですね。
私もパーティに後衛が欲しいと思っていましたし、ちょうどいいかもしれません」
「なら、商談成立だな!」
商人はニッと笑みを浮かべると、馬車の方に一度身を引っ込めた。
現在の悠里のステータス
+++
■ステータス■
名前:鑑 悠里 Lv.1
性別:女
種族:異世界人 Lv.1
職業:ノービス Lv.1
称号:〈異世界人〉Lv.1
〈臆病者〉Lv.2
〈何にも束縛されない〉Lv.1
〈無謀な挑戦者〉Lv.1
〈導師見習い〉Lv.1
〈追跡者〉Lv.1
〈暗がりに潜む者〉Lv.1
HP:10/10
MP:10/10
SP:30/30
筋力:10
活力:1
速度:1
知能:1
感覚:8
残りステータスポイント:0
■スキル■
◇武術系◇
〈剣術〉Lv.4
└〈偃月殺法〉Lv.1
〈体術〉Lv.1
└〈空気投げ〉Lv.1
◇魔術系◇
〈呪詛〉Lv.1
└〈隷属の首輪〉Lv.1
〈契約の呪詛〉Lv.1
〈制限の呪詛〉Lv.1
〈洗脳〉Lv.1
〈幻惑〉Lv.1
〈認識阻害〉Lv.3
〈夢の檻〉Lv.1
〈金縛り〉Lv.1
〈蝕む痣〉Lv.1
〈服従の呪詛〉Lv.1
◇身体操作系◇
〈跳躍〉Lv.1
〈咆哮〉Lv.1
〈疾走〉Lv.1
〈パルクール〉Lv.1
◇防御・回復系◇
〈自動回復〉Lv.2
〈食い縛り〉Lv.1
◇耐性系◇
〈驚愕耐性〉Lv.1
〈痛覚耐性〉Lv.1
〈負傷耐性〉Lv.2
〈転倒耐性〉Lv.1
〈気絶耐性〉Lv.2
〈トラウマ耐性〉Lv.1
〈脱水症耐性〉Lv.1
〈熱中症耐性〉Lv.1
〈精神攻撃耐性〉Lv.1
〈拘束耐性〉Lv.1
〈呪詛耐性〉Lv.4
〈隷属無効〉Lv.1
〈恐怖耐性〉Lv.1
〈不意打ち耐性〉Lv.1
〈閃光耐性〉Lv.1
〈麻痺耐性〉Lv.1
◇隠遁系◇
〈忍足〉Lv.2
〈気配隠蔽〉Lv.2
◇感知系◇
〈洞察〉Lv.2
└〈名推理〉Lv.1
〈気配察知〉Lv.1
〈魔力感知〉Lv.1
〈遠見〉Lv.1
〈暗視〉Lv.1
◇生活系◇
〈交渉〉Lv.1
〈高速思考〉Lv.1
◇ギフト系◇
〈水神の加護〉Lv.1
└〈水中呼吸〉Lv.1
〈水上歩行〉Lv.1
〈水袋勁〉Lv.1
〈木神の加護〉Lv.1
└〈成長促進〉Lv.1
〈効力増強〉Lv.1
〈笑桜勁〉Lv.1
〈火神の加護〉Lv.1
└〈二段跳び〉Lv.1
〈燃焼無効〉Lv.1
〈火鳥勁〉Lv.1
〈土神の加護〉Lv.1
└〈障壁〉Lv.1
〈土圧無効〉Lv.1
〈捻央勁〉Lv.1
〈金神の加護〉Lv.1
└〈金属操作〉Lv.2
〈即死耐性〉Lv.1
〈拡金勁〉Lv.1
〈五行神の加護〉Lv.1
└〈気功法〉Lv.1
└〈遠当て〉Lv.1
〈沈墜勁〉Lv.1
〈纏絲勁〉Lv.1
〈十字勁〉Lv.1
残りスキルポイント:0
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読んでいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いいたします!




