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転生勇者(♀)の異世界旅行記《トラヴェローグ》  作者: 青咲凛
第1章 地下水道の幽霊

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13. 永年ソロボッチ?


 追加報酬クエスト。

 その内容は柔軟体操をすることだった。

 報酬は何とステータスポイント+5点という破格の提案である。


「柔軟体操……。

 私これ苦手なんだけどなぁ……」


 開脚はもちろん、長座体前屈すらまともにできたことは無い。

 多少体は動くようになったとはいえ、それはあくまでスキルによる補正。

 私がすごくなったわけではないのだ。


 とはいえ、報酬はかなりおいしい。

 ゲーマーとしてやらないわけにはいかないだろう。


 私はベッドを整えると股関節をメインにストレッチを開始した。


「ぬん……っふぅ……!」


 脚をまっすぐ延ばすというのは、身体が硬い人間にとってはかなりきつい。

 しばらくそうやって関節を伸ばしていると、ふと、そういえば以前テレビで、身体が硬い人は股関節からじゃなくて背中から曲げているから硬いんだって説明を聞いたことがあることを思い出す。

 だけどそうは言われたってやり方がわからないのではどうしようもない。

 このまま続けても多分、間違った姿勢だからという理由でクエストはクリアにならないだろう。


 開いたままのウィンドウのカウンターが、少しも動かないことをしばらく観察してストレッチをやめる。


 感覚としては、膝裏にストレッチパワーがたまってきた感覚なのだが、デイリークエストさんは数には入れたくないらしい。


「……とするなら、バレエとか参考にしてみるか」


 バラエティ番組で何回か見たことがある。

 確か腰くらいの高さの手すりに踵を引っ掻けて、関節を伸ばしていた気がする。


「手すり……は、無いし、机でいいかな」


 ちょうど良さそうな高さのものがそれしかない。

 手すりじゃないけど、必要なのは足をかける高さなのだからこれで問題ないだろう。


 私は机に踵を乗せると、そのまま体重を乗せて膝を伸ばし──


「痛った!?」


 思わず机から足を離し、その場にしゃがみ込む。


 ズキズキと脹脛から太ももにかけて鋭い痛みが走っていた。

 さっきまでのなんとなく伸びてる感覚とはまるで違う。

 筋が引きちぎれるんじゃないかと思うような、明確な拒絶反応。


「無理ぃ痛いぃ……っ!」


 思わず弱音が漏れる。


 けれど、視界の端に表示されたままのクエストウィンドウがちらつく。


 ステータスポイント+5点。


 たったそれだけで、筋力も速度も底上げできる。

 序盤でこれを逃すのは、どう考えても損だ。


「……やるしかないかぁ……」


 私はもう一度、ゆっくりと足を机に乗せた。


 さっきみたいに勢いよく体重はかけない。

 今度は慎重に、様子を見るように、少しずつ。


 そのとき、ふとさっき思い出した言葉が頭をよぎる。


 ――股関節から曲げる。


「股関節……股関節……」


 腰でもなく、背中でもない。

 脚の付け根から、前に倒すイメージ。

 関節を球体のようにイメージして、骨と腱の感覚をつかんでいく。


(この感じだと、背中丸めてたらできそうにないな……)


 胸を張って、できるだけ筋を伸ばすように意識しながらゆっくりと前へ体を倒す。

 まるで、体の中で綱引きでもしている気分だ。


「……っ!」


 さっきとは違うところに、じわりと負荷がかかるのを感じる。


 痛い。

 でもさっきより正しい痛みな気がする。

 なんていうか、効くべき場所に効いているような、そんな感じだ。


 そのまま数秒キープ。


『進捗:1%』


「……んっ」


 思わず声が漏れる。


 やっぱり。

 正しい姿勢じゃないとカウントされないという仮説は正しかったみたいだ。


「そうとわかれば……!」


 続けてじわじわと関節を伸ばし、進捗率を上げていく。

 片方だけ伸ばすのはなんだか気持ちが悪いので、50%に到達した辺りでもう片方の関節も同じように伸ばした。


 今日は走ったりなんだりしてつかれたけど、こうして最後にストレッチをするのは気分がいいものだな……。


 こうして、私は何とかデイリークエストの追加報酬を獲得したのだった。


 ***


 鳥の鳴き声とともに目を覚ます。

 窓からの日差しに目をしばたかせて起き上がると、私は目の前に浮かぶログインボーナス画面を適当に処理しながら朝の身支度を済ませにかかった。


「今日のログボは銀貨5枚か」


 正直、ログボでお金がもらえるのはすごく助かる。

 生きていれば生活資金は手に入ったそばから消えていくからね……。


 ショップで購入したウェットシートで顔を拭き、櫛で適当に髪を梳かす。

 パジャマ代わりのジャージをストレージに放り投げて洗濯機能を有効化し、代わりに昨日のうちに洗濯が終わっていた冒険者用の装備を引っ張り出した。

 黒いリネンのシャツに袖を通し、安い革鎧を胸に当てる。

 最後にショートソードを腰に刷いて、準備は完了だ。


「ストレージに洗濯機能がついてるの、地味に助かるんだよなぁ」


 こっちには洗濯機なんて家電は置いていない。

 洗うなら井戸から水を汲んできて手洗いするのが一般的である。

 歯磨きも顔を洗うのも、全部井戸水。


 とはいえ都会暮らしの現代日本人たるもの、井戸水で洗うという行為には若干の抵抗があるものだ。

 だって地下水だよ?

 何が溶けてるかわからないもので顔洗ったり歯を磨いたりなんて到底できやしない。


 というわけで顔を洗うのはウェットティッシュ、歯を磨くのはミネラルウォーターをショップで買ってきて使っている。

 公共の水が使えないというのは、ちょっと不便を感じるよ……。


「そうは言いつつ、浴場は普通に利用するんだけどね……」


 ああいうところの水は一回火を通してるから大丈夫……そう思いたい。


「できれば、ベッドも藁じゃない奴がいいよねぇ。

 こうなったら速攻でお金貯めて、一軒家でも建ててしまうか」


 こういうRPGでは自分だけの家を持てるようになるのはだいたいストーリーの後半とかだけど、ここはゲームチックではありつつも完全なゲームじゃない。

 お金さえ溜まればきっとすぐにでも手に入れられるだろう。


「よし、それじゃあ一先ずの目安はお家を立てるところまでかな!」


 目標が決まれば仕事にも精が出るってものだ。

 仕事、そんなにしたことないけど。


 朝食を終えて、家を建てるとしたらどんな間取りにしようかなどと考えながらギルドに向かっていた時だった。

 ふと、視界の端に人が集まっているのが見えた。


「なんだろ?」


 気になって人垣の方へ顔をのぞかせると、1人の小太りなおじさんが、木箱の上に数人の裸の人間や獣人を並べているところだった。

 センシティブなところは、幸いと言っていいのか、集まった人たちの頭で隠れてよく見えなかった。


「奴隷の競売か……」


 首に鉄の輪をつけられ、伸びた鎖が後ろで止まっている馬車の鉄の檻に括り付けられているのが見える。


「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!

 力仕事に獣人の奴隷はいかがかな!? 健康状態は見ての通りだ!

 まずは大銀貨1枚からいってみよう!

 どうだどうだ、買い手はいるかい? 獣人は大人の男なんかよりずっと力持ち! 体力も桁違いだ、農作業をやらせれば一日家でのんびりできるぞ!」


 人々は奴隷商に突き出された1人の大柄な獣人をまじまじと観察しながら値踏みし、指を1本、2本と上げていく。


 奴隷……奴隷かぁ……。


 商人が獣人の鎖を引っ張って、無理やりに口を開かせて健康だの丈夫だのと紹介する様は、まるで同じ人間ではなく動物でも売りさばいているかのようだ。

 いや、彼らはそもそも、同じ人類だとは思っていないのかもしれない。


 日本にいたころは、異世界に行って奴隷でハーレムを作る、みたいな作品はちらほら見かけたけど、実際に競売というのを見てみると、とても自分には手が出せない領域だろうな、と肩をすくめる。

 あの人混みの中に分け入って値段を叫ぶなんて、コミュ障な私には到底できる気がしない。

 声を張り上げたところで、きっと周りの熱気に押しつぶされるに決まっているだろう。


 多分、冒険者になってもパーティを組むなんてことはできないだろうし、奴隷もまともに買えないんじゃあ、永年ソロボッチは確定かな。


 私は小さくため息を吐くと、競売場から踵を返してギルドへと向かった。


現在の悠里のステータス


 +++


■ステータス■

 名前:鑑 悠里 Lv.1

 性別:女

 種族:異世界人 Lv.1

 職業:ノービス Lv.1

 称号:〈異世界人〉Lv.1

    〈臆病者〉Lv.2

    〈何にも束縛されない〉Lv.1

    〈無謀な挑戦者〉Lv.1

    〈導師見習い〉Lv.1


 HP:10/10

 MP:10/10

 SP:20/20


 筋力:5

 活力:1

 速度:1

 知能:1

 感覚:1


 残りステータスポイント:5


■スキル■

◇武術系◇

 〈剣術〉Lv.4

  └〈偃月殺法〉Lv.1


◇魔術系◇

 〈呪詛〉Lv.1

  └〈隷属の首輪〉Lv.1

   〈契約の呪詛〉Lv.1

   〈制限の呪詛〉Lv.1

   〈洗脳〉Lv.1

   〈幻惑〉Lv.1

   〈認識阻害〉Lv.2

   〈夢の檻〉Lv.1

   〈金縛り〉Lv.1

   〈蝕む痣〉Lv.1

   〈服従の呪詛〉Lv.1


◇身体操作系◇

 〈跳躍〉Lv.1

 〈咆哮〉Lv.1

 〈疾走〉Lv.1

 〈パルクール〉Lv.1


◇防御・回復系◇

 〈自動回復〉Lv.2

 〈食い縛り〉Lv.1


◇耐性系◇

 〈驚愕耐性〉Lv.1

 〈痛覚耐性〉Lv.1

 〈負傷耐性〉Lv.2

 〈転倒耐性〉Lv.1

 〈気絶耐性〉Lv.2

 〈トラウマ耐性〉Lv.1

 〈脱水症耐性〉Lv.1

 〈熱中症耐性〉Lv.1

 〈精神攻撃耐性〉Lv.1

 〈拘束耐性〉Lv.1

 〈呪詛耐性〉Lv.4

 〈隷属無効〉Lv.1

 〈恐怖耐性〉Lv.1

 〈不意打ち耐性〉Lv.1


◇隠遁系◇

 〈忍足〉Lv.2

 〈気配隠蔽〉Lv.2


◇感知系◇

 〈洞察〉Lv.1

 〈気配察知〉Lv.1

 〈魔力感知〉Lv.1


◇生活系◇

 〈交渉〉Lv.1

 〈高速思考〉Lv.1


◇ギフト系◇

 〈水神の加護〉Lv.1

  └〈水中呼吸〉Lv.1

   〈水上歩行〉Lv.1

   〈水袋勁〉Lv.1


 〈木神の加護〉Lv.1

  └〈成長促進〉Lv.1

   〈効力増強〉Lv.1

   〈笑桜勁〉Lv.1


 〈火神の加護〉Lv.1

  └〈二段跳び〉Lv.1

   〈燃焼無効〉Lv.1

   〈火鳥勁〉Lv.1


 〈土神の加護〉Lv.1

  └〈障壁〉Lv.1

   〈土圧無効〉Lv.1

   〈捻央勁〉Lv.1


 〈金神の加護〉Lv.1

  └〈金属操作〉Lv.1

   〈即死耐性〉Lv.1

   〈拡金勁〉Lv.1


 〈五行神の加護〉Lv.1

  └〈気功法〉Lv.1

   └〈遠当て〉Lv.1

    〈沈墜勁〉Lv.1

    〈纏絲勁〉Lv.1

    〈十字勁〉Lv.1


 残りスキルポイント:0


 +++



読んでいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いいたします!


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