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街の子

薄暗くなったキャラバンで焚き火と魔道具の照明の下、何日目かぶりで全員揃った夕食の時間。


ケールとセーラは定位置の馬車の屋根の上で食べている。今日はワンプレートでそれなりの量が有るのにどうやってあそこまで持ってあがったんだか。


「えーと、あれは誰?」


指差すほうにはどこからどう見たってただのおっさん。カナタの質問に隣に座ったクオンが答える。


「隣の区画の単身赴任の行商人。地元にはあの人基準で町一番のキレイな奥さんがいて間に双子の子供がいるそうだ。本人の妄想じゃ無いことを祈る。なんか居着いて自分の店の店番までこっちからやってる。帰るのは寝る時だけ。ちゃんとお代は貰ってるから心配しなくていい。たぶんあ、胃袋をつかんだんだとおもわれ。」

 

「ふーん。で、あっちは?」

  

結局、そっちにはあまり興味をしめさずに、もう一度、指差すほうには子供が二人。


「メアリーがご飯をあげたら懐いて居着いた。お金は持って無いから体で払って貰ってる。


ちっこいのが町の子、少しおっきいのは親がめったに食べ物をくれないから自分でなんとかしているらしい。」


クオンの解説、

町の子はいわゆる浮浪児。公認、非公認で多くの街々に居る。名称は街によりまちまちだが、どの街でも町の子の呼び名で通用する。お目溢しと将来の働き手確保のために城門の内側に入ることを許されている。


「うちの連中はごっついのが多いから子供なんて寄って来た試しがないんだがなあ。」


などとつぶやきながら二人を見るカナタの目が光ったのは誰も気づかない。


「それより、」


切り出したのはクオン、


「あっちのほうがみんな気になると思う。」


指差す先にはニクスの周りで飛びまわったり肩に止まったりしている4人の妖精さん。見えるか見えないかなんて状態じゃなく誰にでもはっきりと見えるくらい顕現している。


「森の中でニクスがカッコイイとこを見せたら惚れられたっぽい。」


カナタの説明に、


「シーラについてきたんじゃないんだ。ニクスは肝心なのにもてないくせに、へんなのにもてる。」


とのクオンの言葉に、離れて座っているニクスから


「それは無いだろー。」


との本人のへ声が。しかし周りからはもっともだの声が多数。


料理があらかた食べ終わった頃合いでお隣りさんがカナタの前にやってくる。


「行商をやってるカロンてもんだ。こうやって出会ったのも何かの縁だ。この街を出るまでよろしく頼むよ。」


更に夜が深まっていく。


ロンザとダリがカロンと酒盛りを始めたようだ。珍しくウイルも加わっている。ウイルは飲まないわけじゃないが何故か外の人間が参加する酒盛りには加わらない。あ、メアリーまで。彼女は酒好きだけどいつもの馬車の中かテントの中でひとりで飲んでいるのに。


そしてみんなが寝静まる。セーラとケールはそのまま馬車の屋根の上で眠ってしまった。食べ終わった食器を片付けずに傍らに置いたまま、馬車の

上に。



そして翌朝、クオンの朝は早い。ホットドッグ屋の店主は朝食を済ませて店に帰った。クオンは後片付けをしている。今日はティーナも起きて作業をはじめている。こっちのほうが普通の光景だけど、ごくたまに寝坊するのは御愛嬌。何故か御愛嬌と言えないくらいの寝坊になるが。いつもと違うのはちびっ子二人がティーナについてわまって騎獣と馬の世話をしていること。


「おはよう」


カナタが起きてきてクオンに声をかける。


「おはよう、マスター。お茶飲む?」

 

「ありがとう、もらおうか。」


朝ののどかな風景。


「ありゃ、またメアリーに叱られるな。」


馬車の屋根の上に残った食器が目に入りカナタの独り言。当然セーラとケールは屋根の上。寝入った体制のまま昨夜からまるきり動いてなさそう。夕べの記憶のままの姿勢。


そういえば妖精さんもティーナ達の周りを飛び回りお手伝いしているようだ。


「地水火風、さすがはニクス。」


ティーナの独り言にいつの間にか来た朝食目当てのお隣りさんのカロンが声をかける


「なんでもない。」


餌やりを終えた居候のチッコいほうが掃き掃除を始める。少し大っきいほうはクオンのお手伝い。


「名前は?」


近くにいる居候のちょっと大きいほうにカナタが尋ねる。


「キノです。」


固くなる少年に、


「畏まることないよ。年だってあまりかわらないみたいだし。」


そう言いながら続けて


「計算はできるかな?出来なくてもいいから今日はあっちの店番を誰かについてやってくれるかな。」


とカナタ。


?な表情のクオンとキノ。


「そういや、あっちのはなんて名前なんだい?」


カナタは続けてクオンに聞く、


「ザック。」


「ふーん。朝のお使いに連れて行こうかな。」


「久々にピンとくるものがありましたか。」 


いつの間にか起き出して来たメアリーが声をかけてきた。


「まあね。あの二人、ウィルと勉強を見てやってくれたら助かるかなあ。」


掃き掃除が終わったザックはロザンについて朝食の準備を始めたようだ。


馬車の上には明るくなっていく周囲など気にすること無く寝続けるセーラとケール。置きっぱなしの食器に気づいたメアリーの表情が見る見る変わっていく。

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