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お隣さんと

青空はまだまだ続くが、頂点から傾いた太陽。


ここは一見行商人のキャンプ兼露店のバザー区画。


一行の馬車には割り当てられた区割りの使用許可と営業許可の割符が下げられている。割符は常に見えるところに出しておかないといけないのはこういう場所の不文律。魔法の割符に手書きで貸し出し期間が書かれている。魔法の割符なんだから必要事項は魔法で登録されているが魔法の使えない役人その他が一目見て分かるようにと手書きでも書かれてある。


キャラバンでは、

ティーナとシーラは馬のお世話。飼い葉に水やりと大忙し。

マキシムとダリはテントの設営。

ウイルはその他の設営。

カナタは出かけてこの場所に居ない。


カナタは歩いて始めにキャラバンを停めた天使の像のある広場に向かっている。キャラバンはすでに移動して残るは目印にと置いてきた昼寝をしていたふたりと一匹の騎獣の小さな荷車ひとつ。大人の男手はキャンプの設営に必要だし、女の子のティーナとシーラだけで街中を歩かせるわけにはいかないのでリーダー自らの帰っていないメンバーのお迎えとなった。そのまま天使の像のある広場に残っていても良かったのだが移動先の場所の確認をしておかないと迷子になる可能性もあるので一旦は移動先を見てからここに戻ってきた。


天使の像のある広場に戻るとなんとものどかな我がキャラバンの荷車。別に広場が殺伐としているわけでも度を越して忙しないわけでもないが、さすがにのどか過ぎの度を越して場違いかもなどと思いながら荷車に向かう。


他のメンバーはまだ帰ってきていない。荷車に乗り込むカナタに二人と一匹は我関せずで無反応。なんなら微動だにしない。その様子にちょっとおかしくなり苦笑するカナタ。



一方、キャラバンでは馬の世話を終えたティーナは一人で羊のお世話。ティーナにかかかればもともと人懐こい羊がさらにお利口さんになる。メンバーも始めのころは何かのギフトかと思ったもんだがそうでもないらしい。


「明日の朝一で家畜の市に連れていったほうが仕事が減っていいかもしれませんね〜。」 


荷物を持って通りかかったウイルの独り言。


この街には常設の家畜市が小規模ながらもあるとは冒険者ギルドのやり取りで得た情報。


「2区画借りるとは豪勢もんだねぇ。明日から商売かい?」


隣の区画の商人がキャンプ周りの細々としたことをやっているシーラに声をかけてくる。反対側の隣の区画は空いているようだ。


「こんにちわー。」


声をかけられたシーラが愛顔で挨拶をする。


「こんにちは。ここは一体何を売るお店なのかな?」


挨拶を返して商人は聞いてくる。


「いろいろ。」


少し間を置いた後にシーラがさらに、


「いつもマスターがバザーを見たりして決めるの。私には難しくてわからないや。」


「ははは、そうなんだね。それでマスターはどねの人なんだい?しばらくはお隣通しだし挨拶をしておきたいんだがね、……、あの人かな?」


視線の先にはウイル、確かに大商人の風格は漂っている。


会話が聞こえる距離にいたウイルは中指の指輪をさて


「私はこれですよ〜。」


軽い口調で。その指には奴隷の指輪。奴隷契約をすると奴隷開放の手続きが終わるまで外れない。奴隷の契約グッズはほかにもいくつかあるが指輪が一番目立たないかもしれない。


「すんごい強そうなあんたがそれかい。」


さらにウイルがお隣さんに。


「うちの男衆は御主人様以外はみんなこれですから。」


ウイルは朗らかにふたたび指輪を指差す。


屈強としか言いようのないメンバーを見回し目が泳ぐお隣りさん、


「マスターは出かけていていないの。うちのマスターはまだ子供。


…、お近づきの挨拶にどうぞ、明日からはお金を貰いますけど。」


いつの間に準備したのかシーラからさし出されたのはお茶とクッキー。


お隣さんは遠慮なく手を出して食べ始める。


「うんまいなあ、これは異国のお茶かな?」


シーラは答える


「異国じゃないよ、この国の端っこ。」


割と真剣にお隣さん、


「…、うーん、私にも仕入れられますかね。」


シーラは真顔で


「たぶん大丈夫、ドラゴンなんてめったに出ないから」


ぎょっとしながらも社交辞令的にお隣さんは、


「ドラゴンが出る場所なのかい?」


さらに真顔でシーラ


「たまに、」


鼻白んだ様子のお隣りさんは、


「……、ホントに出るの?」


手が空いたウイルが自分で入れたお茶を飲みながら会話に入る。


「あすこに行くのは骨ですよ。なんせヘタな外国に行くより日数がかかりますからね。ウチも在庫が切れたらオシマイで別のに変えるしかないですね。二度とたどり着けないかもしれないですし。」


残念そうなお隣さんは真剣に仕入れようと考えていたようだ。



一通りの世間話を済ませたお隣りさんはどこかへ出かけたようでいない。設営を終わらせてメンバーみんなで集まってのんびりお茶をしている。

そんな和んだ中でのマキシムのつぶやき、


「帰って来たようだな」


みんな視線が向く方向にはとぼとぼと歩く騎獣に引かれた荷車が見えてくる。荷物を積んでいるのでまわりに徒歩のメンバー。小さなクオンは御者台に乗っている。セーラとケールはまだお昼寝中で場所だけ変わって騎獣の背中、騎獣は荷車を引いたうえに二人を背負ってもまだ余裕があるようで他人事顔で何事も無さそうに歩いている。


太陽はだいぶ傾いてきたが夕刻には少しかかるようだ。


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