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十二月(3)

十二月(3)


「――僕は、現時刻をもってディアナ・ラウ・レイヤ嬢との婚約を破棄する。そして、ここにいるマリア・メイヤー嬢との婚約を発表する!」


 国王をはじめとした国の重鎮たちが集まる王立魔法学園の記念パーティーで、第三王子のアーサー様がディアナ公爵令嬢の婚約破棄を宣言した。


 ちょっと待ってアーサー様。

 ここまで大袈裟にディアナ嬢との婚約破棄を宣言しなくても良かったのに。


 『魔眼:人心操作』によって、アーサー様の感情が増幅されてしまった。

 マリアを愛するために、ディアナ嬢を切り捨ててしまった。


 魔眼は、非常に使いづらい能力だ。

 私にできることは、人の欲望や感情を増幅して、そっと背中を押すだけなのだ。


「僕は、ディアナが行った数々の悪行をここで断罪し、この学園から追放する!」


 ディアナ嬢は、じっとうつむいて震えている。


 ごめんなさい、ディアナ嬢。

 私には、もうどうすることもできないわ。


 でも、そのときアーサー様の親友ケイの声が響いた。


「アーサー様にひとつご提案があります」

「ん?なんだ」

「マリア嬢のために、ディアナ嬢の学園追放を撤回してください」

「マリアのため?どういうことだ?」


 ケイは、ディアナ嬢の断罪追放を阻止するつもりなのね。


 でも、おかしいわ。

 乙女ゲームのケイは、アーサー様のやることには口を出さない性格だった。


 ケイが『ディアナ嬢をかばう』なんて行動に違和感を感じつつ、私はケイを応援した。


 ケイ、お願い。

 せめてディアナ嬢を助けてあげて。


 そしてケイは、言った。

「私がアーサー様の立場であれば、学園最高峰の知識と教養を持ったディアナ嬢を、何があっても手放すことなく側に置いておきます」


 なんだこれ?

 ケイ、あなた本当にどうしてしまったの?

 こんなの愛の告白も同然じゃないの。


 私が困惑していると、少年の声がした。

「お前、良いことを言った!」


 振り向くと、黒目黒髪の美少年が立っていた。


「ユーリ君?」

 マリアが驚いた声をあげた。


「久しぶりだね、お姉ちゃん。途中から聞かせてもらったけど……ノリで他人に迷惑をかけるんじゃねぇ!って、いつも言っているよね?」


 マリアが青い顔をして震えている。

 もしかして、あれがマリアの弟で『勇者』のユーリなの!?


「お前ら貴族王族はノリで断罪とか追放とか言い過ぎなんだよ!」

 勇者となったユーリ君。


 あれは、なんなの?

 見た目こそ同じだが、乙女ゲームのユーリ君と全くの別人だった。


 その後、魔法学園の記念パーティーは、勇者ユーリの登場でぐだぐだのまま閉会した。


『俺は悪役令嬢の幼馴染。断罪追放だけは阻止したい』の別視点です。

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