SHALLOW SLEEP
本日の礼拝を終えて自分の家へと足を運ぶ。帰りは一人だ、自分以外は神学校に通っているので寮に住んでいるし明英は司祭館...教会の敷地から出ることはない。ぼーっとしながらも頭の中は彼のことばかりだ。黄昏時の今、彼がここに表れても変ではないな、こういう道を一緒に歩いたらだれもが振り返っちゃうほどはえるんだろうなと夢で出会った人であることも忘れたように妄想しつづけるうちにすぐ家へついた。
「今日は早く寝よう」
早く会いたいと恋する乙女の様な思考へ入ってしまっている吉良は急いで食事を済ませ風呂へも入り布団を敷く。早く早くとせかす気持ちとは裏腹に体は全然眠くないと眠りに入るのを拒んだ。なんせ時間はまだ8時頃である、普段ならまだダラダラとご飯でも食べているのではないだろうか…しょうがないと布団から這い出て、ソファーへ腰を下ろす。こんなにも人に思いを馳せるのは初めてだ。しかも女性でもなく男性な上に一度夢の中で目にしただけであるのに...もし夢で逢えなかったら一生会う事なんかもちろんできない。夢なのだから全て自分の都合のいいようにできているのだろう、でもなぜか、彼の言っていた「明日」を信じ切っている自分がいたのだ。
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目を開けるとそこは昨日と同じ何もない真っ白い世界で。いつのまにか眠ってしまっていたのだろう、よかった会えると思ったが周りを見渡しても彼の姿はない。吉良は血眼になって彼を走り回り探す。
しばらく探し続けて疲れてきたところで自分の上の方からくすくすと笑う声が聞こえた。驚いて見上げると肩を震わせて笑っているあの彼が浮いていた。
「あ...っ!神様!!!」
「神様?!」
神様、と声を上げた吉良を見てぎょっとして地に足をつける。えぇ...と困ったように頬をかいて「そうくるか」と少しの間考え込んだが直ぐに顔を上げた。
「俺は神様なんかじゃないよ、吉良」
彼は吉良の顔を覗き込むようにしゃがんで上目遣いをし笑った。端正な顔が近づいてきたものだから思わず吉良は後退ってしまったのだが彼はその様子に不服そうな顔をしてまたさらに近づいていく。それにまた吉良が逃げて行って...を繰り返すうちに耐えられなくなったのか彼は吉良の腕を強くつかんだ。
「俺は圷 壱桜!お前よりも年上なんだぞ、圷くんとでも呼びなさい」
そういった彼...圷はそれを伝えると満足そうに腕を組んだ。「あくつくん...」とつぶやいてから脳内で圷、圷、圷と繰り返してインプットする。圷くんとでも呼びなさい、その話し方はどこかで聞いたことがあるなと思った吉良はプラスして硬直したまま何も言わないでいた。...嗚呼、英ちゃんだ...全体的に似ているんだよなあと考えながらゆっくり意識を戻していく。はっとして目の前を見るとくっついてしまうのではというくらい顔が近づいていた。
「うわぁ!?!?」
「やっと気が付いた?何ぼーっとしてるの?俺に会いたかったんじゃないの?...わざわざ会いに来てるのにさ...」
「え?ご、ごめん、なんて?」
「なんでもないよ。お話ししよう。」
吉良が声を上げた後離れた圷が一瞬同一人物とは思い難いような顔をしていたのには気づけなかった。なかったことにするように話を変えて床に座り込み手招く。吉良は同じように床へ腰を下ろす。
そこで交わされた会話でしったことは、一度の夢で長くても一時間程度しかいられないということ、吉良が望めばいつでも会いに来てやれるということ、あまりこの事を人に言わないでほしいということ、とくに聖職者には。「お前、俺のこと好きだろ?場合によってはどうなるかわかるよねー」なんて笑いながら言っていたのにドキッとしたのと同時に確かに言いふらしてはいけないと思えた。英ちゃんや久尾くんなんかは特にそういうことに厳しい人である、一色くんも怪しいし...相談するとしても一番の親友である要だけにしておこうと心に決めた。そうはいってももう一度話してしまっているからどうにか誤魔化さないといけないのだけど。
次の日、いつも通り教会へ行くと案の定「カミサマとは会えた?」と聞かれてしまった。吉良は生まれてはじめて嘘をついてしまった。「ダメだった、諦めるよ」なんて。あんなに言っていた割にあっさりとしていることに触れてくる奴もいたが、結構吉良にはそういう所もあるので呆れられながらも受け入れられた。
もちろん嘘をついてしまったことに後悔の念は残ったがこれこそが圷との約束であり、そうしてまで彼とつながっていたいと思う気持ちの方が強かったのだ。はやく会いたいな、そう思うと頭の中で圷が満足そうにしている様子が浮かんだ。




