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私たちは無事に不死山に到着出来て、アールヴさんの目的の一つ、装備を強化する為の素材を隠したと言う場所を目指す事になりました。
正直に言うと、こんな高レベルマップに足を踏み入れるのは怖い……
でも、アールヴさんの困った顔や苦しんでいる態度を見ると、私で出来る事は何でもやってあげたい。
って言うと何だか偉そうだから、出来る事だけ、しっかり頑張ろうと思うの。
それに、クリシナのお兄さんもいるし…
ちょっと変わった人だけど、凄い優しくて良い人なんだって事は分かったから、きっと何かあっても2人が何とかしてくれるよ…ね?
山に入って少しすると、
「アリシア、そろそろお願いしていいかな?」
と、アールヴさんから言われたので、一度深呼吸をして気を引き締めて、いつもは使わない杖を強く握った。
俺が、お願いするとアリシアは杖を使って魔法を唱え始めた。
どうも、他の物より魔力効率等が良いみたいで、少しでも成功率を上げる為に考えてくれたそうだ。
【ホーリー・オブ・エネミーリーブ!】
杖が発光し、3人を光の膜が覆っている。
よし、これでモンスターに気配を感じさせずに移動が可能になった。
それを確認して、また歩き始める。
歩いていると、目印にしていた菱形の様な大きな岩がむき出しになっている山肌に横たわっていた。
「ここから少し行くと、大きな樹が見えてくるんですけど…」
そもそも、それが無ければ、素材も何処にあるか分かったもんじゃない。
祈るか気持ちで歩いて行くと、
……あった。
ここだ。
この樹の奥に小さな洞穴があって、そこに万が一を考えて隠しておいた、ボックスがあるはずだ。
逸る気持ちを抑えて、木の葉や枝で隠れている洞穴に入り中を調べた。
「……掘り返されてる。」
アリシアさんが後ろで呟く。
俺は無残に開け放たれたダミーボックスを退けると、魔法を唱えた。
【ウィンドカッター】
ただの地面に見えたその場所は、風の刃で切り刻まれて、その下にある鍵付きの宝箱が顔を覗かせた。
ーー後ろで安堵の声がする
宝箱を取り出し、鍵の部分に俺の魔力を流し込むと、カチリと音がして鍵が開いた。
中には、当時の俺が作ったオリハルコンブックの予備素材が詰まっている。
よし、これで後は錬成版まで行けば、装備の強化が出来る。
オリハルコンブックまで行けば、召喚対象は制限されないし、召喚された物のスペックも段違いだ。
昔を思い出して、わくわくした気持ちが込み上げてきたけど、なんとか自制した。
まだ、目的を達した訳では無いし、俺のやるべき事は心が躍るような事ではないからな。
ーーーー
…最初は箱が開けられていてガッカリしたけど、アールヴさんは見つけられる事を前提にした対策を取っていて、本当に凄い人だなぁと感心してしまった。
でも、先に言ってくれないのは意地悪よね!
マルクさんと私に文句を言われて、焦った顔で謝るアールヴさんも面白かったけど、パーティーなんだから、共有は必要だと思う。
彼の事だから、きっと分かってるとは思うんだけどね。
ーーーー
……隠し箱の件で、2人を怒らせてしまった。
そりゃ、偽薬の立場ならガッカリもするし、怒りもするよなぁ…
この反省は次回に活かそう!
そう思ったけど、まずは平謝りしておいた…
今日はここで一晩明かして、明日中腹まで向かう。
この辺りからはモンスターも強い奴が多く出るし、連携を取ってくるのもいるから、極力戦闘は避けないとな。
そんな事を考えながら、交代で睡眠を取って明日に備えた。
ーー…スルスル ザッ……ササー
普段は山頂付近を活動範囲とする巨大な蛇のようなモンスター【ティタノボア】は餌を求めて彷徨っていた。
その全長は15m程もあり口を開けば、人間の大人でさえ一飲みに出来る怪物は、久し振りに感じる人間の気配……匂いのような物を直感的に感じ、鎌首を持ち上げる。
口の隙間から下を出し、これから味わえるであろう、それらを思い出す。
いつ位前の事かは忘れてしまったが、早い寒波で餌が思った様に取れず、冬籠りの為の狩に明け暮れていた時だ。
その日も朝から【コクブチョウ】と言う、鳥と一戦交えて、なんとか引き分けた。
多少ぐったりしながら、エサになるものを探していると、妙な集団を見つけた。
猿の様な形をした生き物で、奇妙な格好をしており、色々な牙を携えていた。
腹が減っていたので、味の事は諦め食らいつくと、武器や魔法と呼ばれるもので抵抗して来た。
弱くは無かったが、鳥の奴に比べれば大した事は無いと4匹とも胃袋に収めて冬を越えた。
その時のアレの味は中々の微妙だった。
アレをまた食えるかと思うと……
見つけるために努力は惜しまないと、辺りを探し回るのだった。
ゆっくり……とはいかなかったが、それぞれ休みを取った俺達は朝から動き出した。
【ホーリー・オブ・エネミーリーブ】!
洞穴を出た直後から魔法を唱えてもらい、先を急ぐ。
「本当にモンスターと会わないもんなんだな!たいしたもんだ。」
単純に感心していると分かる感じの反応で、アリシアが少し嬉しそうにしていたのは内緒にしておこう。
第一線で活躍する上級職持ちの冒険者に褒められるのは、やっぱり嬉しいものだと俺も思うしね。
その後も、大きなトラブル無く、順調に進んで行けたので、昼過ぎには不死山の中腹まで来る事が出来た。
「この辺りに滝が流れてて、その流れる水の裏側から入れるんですけど…」
開けた場所なので、湧き水の流れ出ている音は良く聞こえるけど、肝心の滝は何処に行ったんだろう…
滝の裏は間違いないが、滝に向かう道への記憶がイマイチ思い出せない。
そもそも緑と土と水で、変わり映えしないから目印になるもんが無い!
魔法の効果範囲があるので、バラバラに探す訳にも行かず、最初に合った余裕が無くなって行く。
アリシアさんも、少しキツそうな表情になって来てるな…
後は、どの辺りを探していないか見回すと、草垣の向こう側が揺れている。
何か出て来るのか?とは思ったが、戦う事にはならないだろう、と油断してしまった。
草垣が割れると、巨大な蛇のモンスター【ティタノボア】が顔を出した!
しまった!ピット器官か‼︎
気配や視覚情報、音等を消してくれるホーリー・オブ・エネミーリーブでも、人の体が発する体温は隠せないから簡単に見つかってしまったんだ……
しかも、目の前にいるのは適切LV80〜100と言われているモンスターだ。
…この3人では逃げるのも難しいかもしれない。
そう思って、俺が囮になると言おうとした時に見つけた。蛇の向こうに滝を!
2人にも見えたらしく、こちらを伺って来る。
俺が頷くと、「ふぅ」と溜息をついて、マルクが言い出した。
「仕方ない、我が相手をしてやるから、お前達は錬成とやらを済ませて戻って来ると良い。」
そんな事!と、言おうとすると、魔法を解除したアリシアが俺の腕を掴む。
確かに、現状の3人では勝てなくても、俺が錬成出来れば倒せる自身はある。
2人に絶対無理はしないようにお願いして、蛇の横をすり抜けた。
まずは2人を食うつもりなのか、俺には手出しして来なかった…
「アリシア、君は吾輩の後ろに回って支援を頼む。奴に捕まらないように気をつけたまえよ!」
大蛇とエルク・アリシアの戦いが始まった。
俺は滝の中に飛び込むと、一直線に錬成版へ向かう。
まずは、魔力を通して起動させる。
「リブロ!ペンネッロ!」
本と筆を台にセットする。
メイン素材のオリハルコンを元に、元素系の勾玉や専用の溶液、特定のモンスターの部位をセットする。
同時に筆にも、加工素材をセットして行く。
フェニックスの尾や神樹の枝等を入れ終わり、錬成版に強く魔力を込める。
…辺りを光が包む。
先程までの貧相な本と筆は、表紙に白金の輝きを持つ本と、神聖な力を纏う筆に変貌を遂げた。
「よし!錬成完了だ。すぐに絵を描こう。」
まずは、上位天使のエクスシアを描く。
細かくは書けないけど、仕方ない。
「ゲイン!2人を助けに行け!」
次は、バジリスクを描いた。
「ゲイン!お前も2人を助けろ…」
「…くそっ、さすがに魔力の消費が大き過ぎるか」
取り敢えず、外の様子を伺う為に洞穴を出ると……
エルクは倒れ、アリシアもギリギリの状態で、大蛇は召喚獣達が抑えているが、二体だと微妙だ。
先ずは2人を回復するのが先なので、横を抜け駆け寄り、マジックバックからポーション等を振りかける。
「…ぐっ、ご、ごほっごほ……」
「もうダメかと思いましたよ…」
流石に2人とも厳しそうで、次の手を考え込んでしまう。
……
「このままだと厳しそうですけど、まだ手はありますか?」
アリシアが痛い所を突いて来る。
「後一体召喚できれば勝てると思う。でも俺の魔力が持たないと、召喚した召喚獣まで消えてしまうから……」
「分かりました。私の残りの魔力を全て託すので、後はお任せしますね?」
笑顔で言うと、両手に魔力を込めるアリシア。
俺が口を挟む前に、アリシアから暖かい力が流れ来る。
と、彼女はそのまま倒れそうになり、慌てて受け止めた。
魔力欠乏で気絶してしまっている。
「ごめん」
俺は呟くと、すぐに召喚獣を描く。
筆の素材にもある、空の覇者フェニックスだ!
「ゲイン!奴を仕留めろ、フェニックス!」
「ピェー!」
本から飛び出し、他の召喚獣と共にティタノボアを圧倒して行く。
最後はエクスシアの剣で頭を貫かれ倒れた。
……か、勝った…
本当に危なかった、皆を死なせてしまうところだった、と後から恐怖が押し寄せて来た。
「…良くやったな、アールヴ」
エルクが目を覚まして言ってくれた。
エクスシアを守りに付けて洞穴へ戻り、しばらく休息を取ってもらう。
俺は2人が目を覚ますまで何とか意識を持たせて、エルクが起きた後にぶっ倒れた……
結果としては、一日足留めをくらったけど、3人で無事に下山する事ができた。
まぁ、最後はズルして、ドラゴンを召喚して、全員で乗り込み馬車まで行ったんだけど、
御者と馬達が怯えて大変だったな……
このまま、すぐにガザン洞窟には行けそうにないので、俺は一旦、赤い盾のホームによって報告し、それから向かおうと決意し直した。
なかなか思った様に文章って、書けないんですね。




