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その部屋に居たのは、アリシアさんと、前にお世話になった、マルク・シャーローン・ノードさんだった。
「!!?」
クリシナさん以外の三人が驚いていると、クリシナさんは、それぞれに説明してくれた。
マルクさんとは義理の兄弟で、こんなのだけど、信頼出来る人間だと言うこと。
アリシアさん達には、重大な話があって、ここに連れて来た事を話し、俺とアリシアさんを二人きりにしてくれた。
食事を用意してくれるそうで、それまでに終わらせるようにと言われた……
「あっ、あのアールヴさん。なんだかお久し振りですね?先日は大変な時にお手伝い出来なくて、すみませんでした。」
申し訳無さそうに、アリシアさんは頭を下げた。
そんな彼女に、俺は申し訳無くなって、土下座して話をした。
身勝手な話だけど、他に方法が無くて、助けて欲しいと……
かなり迷惑なやり方だと…自分でも思う。
嫌われても仕方がないことだとも。
だけど、彼女は笑顔で言ってくれた。
「…なぁんだ。そんな事ですか?重大なんて言うからびっくりしました……」
「そんな事で良いなら、いくらでとお手伝いしますよ?」と、
……涙が出そうだった。
ひとしきり謝って、「この件が片付いたら、アリシアさんの事は、俺がずっと守ります。絶対に危険な目には合わせません!」
必死に、感謝とお礼を伝えた……
なのに、何故か耳まで真っ赤にして俯かれた。
……言い方を間違ったか?
怒らせてたら、どうしよう…
その時、階下から声が掛かった。
どうやら、食事が出来たようだ。
アリシアさんに声を掛けて、二人でリビングに向かった。
「…あら?アリシア顔が真っ赤よ…耳まで……プロポーズでもされたのかしら?」
「おぉ⁉︎そうなのか、それはめでたい!二人は結ばれるのか、素晴らしいな!うんうん。」
いや、ちょっと二人共黙って…
怒ってるかもしれない人に、追い討ちかけたら…
そっと横目で見ると……怒ってらっしゃる!
アリシアさんは二人に怒りながら、不死山に行く事を了承しただけだと伝える。
よっ、良かった……俺への怒りから矛先が変わってくれたみたいだ…
ほっ、と安堵していると、その話を聞いていたマルクが「俺も行こう!」と、言い出した。
いや、貴方にこれ以上借りを作るのも怖いんですけど……
…
……でも、
だけど、もしマルクが同行してくれれば、アリシアさんの生存率はグッと上がる。
…それは間違いないし、敵に囲まれても、俺が囮になれば、かなりの時間が稼げる。
……悩む問題でも無いか。
俺はマルクさんにも頭を下げる。
…報酬はいつか必ずと添えて。
「気にするな!友達だろう?」
そう、男前に返事をしてくれる、マルクさんは友達が欲しいのかな?やたら友達を連呼してくる。
…まぁ、別に友達で良いんだけどね。
そうして、四人で食事を採り、俺は自分の宿に戻った。
マルクさんの家を出る時に、クリシナさんに何故、口を出さなかったのか聞いたら、結果は分かっていたし、あれは脅し程度だったんですよ、と言われてしまった。
クリシナさんには敵わないな……
ーーーーーバサッ!
「…よし、行くか。」
その日の早朝、俺は気合を入れてから支度を始めた。
今日はマルクさんと、アリシアさんを連れて、俺の我儘に付き合ってもらう日だ。
……もちろん、この恩は、いつか何かの形で返すつもりだ。
アリシアさんの件は、人身売買の隠蔽で【グリムズ】って組織に狙われているそうだから、これを潰して解決すれば良いけど。
マルクさんの方は正直思い付かないなぁ…
…まぁ、仕方ないかっ!
俺は、将来の事で悩むのは止めて、取り敢えず「今」必要な事だけに考えを向ける。
部屋を出て、手配してもらった二頭立ての馬車に乗り込む。
二人を迎えに行って、不死山までの道程はおよそ半日程だから、今からだと夕方前には着けるだろう。
そこから…素材保管に使っていた場所まで行って、そこでキャンプを張って……
等と考えていると、二人が待つマルク邸に着いた。
……やっぱりデカいな。
普段はメイドを雇っているらしいが、実質ここに一人で住むマルクさんは変わってる。
ーーガチャ
ーーバタン。
二人が出てきた。
馬車の音を聞いて出て来てくれたのだろう、呼ぶ手間が省けたな。
「いやぁ!アールヴ、今日は絶好の冒険日和だな!」
「アールヴさん、おはようございます。」
「お二人共、おはようございます。今日は宜しくお願いします。」
俺が深々とお辞儀をすると、
「硬い!堅苦しいぞ、アールヴ!俺の事はエルクと呼び捨てでかまわん!」
「…ふふっ、私もアリシアでかまいませんよ?」
…年上を呼び捨てもどうかと思ったけど、ノリが悪いのも問題なので、
「では私も、アールヴと呼び捨てでお願いします。」
俺は、この時、二人とパーティーになった。
程なくして出発した馬車は順調に進み、昼頃には不死山まで、後半分の距離まで来ていた。
行きの馬車も、殆どがマルクのオンステージだったけど、また色々と教えてもらえたので良しとしよう……
休憩地点として、事前に確認していた湖に、順調に着けたので昼休憩を取る。
マジックバックから、簡易食料を取り出そうとすると、アリシアさんがバスケットをだしてくれた。
皆の為に作ってくれたそうだ。
気配りができて、料理も美味しいとか、本当に最強だな……
休憩していると、バイソンのような魔物【バグー】の一団が通ったけど、マルクが殺気を放つと避けるように通り過ぎて行った。
流石ですね!と言うと「弱いものイジメは趣味じゃない」だそうだ。
昼食を、終えた俺たちは、不死山に向けて走り出す。
……くぅー…くー
ガタガタと揺れる馬車で、俺はうたた寝をしていまったみたいだ。
頭の下に柔らかい感触がある……
もしかして、膝枕と言うやつだろうか、
……俺は頭に全神経を集中させた。
「アールヴ、そろそろ着くようだぞ」
……エルクの膝枕だった。
アリシアさんも向かいでウトウトしていた。
俺は、エルクに謝って、気を引き締め直す。
ここからは油断しない。
そして、誰も死なせず、奴らに後悔を教えてやる……
ーーーエルク視点ーーーー
アールヴが、我が家に来た。
我が妹と共に……兄は許さんぞ…ぐぐ
だが、顔を見せたアールヴの表情にら暗い焔が灯って見える。
何があった事やら、復讐や怨嗟に呑まれる者の…入り口と言った所だろうか。
ここから、落ちる所まで行くのか…は神のみぞ知るかな。
アリシア嬢に無理を強いている所を見ると、相当追い詰められているのだろう…
まったく、俺がフォローしてやるしか無いだろう!
さぁ、俺に願うのだ!
…
……なぜ誘わん!
くそっ、カッコ悪いが、保護者として同行を申し出てやった。
アリシア嬢は、アールヴに頼ってもらう事を喜んでいるようだったが、不安半分と言った所だろうか。
ん〜…こんなフワフワした二人では危険な旅になりそうだ。
我が妹が心配するのも当たり前かな。
我々を迎えに来た彼は、少し表情が明るくなっていたのは、アリシア嬢のおかげだろうか?
昼食の時には和んだ雰囲気で良かったのに、無粋なモンスターに殺気を飛ばしたら、アールヴが褒めて来た。
気が張っていたのだろうな……
二人共、馬車に揺られてながらウトウトしている。
やれやれ、仕方がないから膝を貸してやるか。
しばらくすると、御者がそろそろだと伝えて来たので、声を掛けて起こしてやると、何やら失敬な事を考えている表情をされたぞ?
ここからは、我も何とか適正レベルと言う場所だ……
やれやれ、年下の面倒を見るのは、先達の役目だからな。
気合を入れるか……
馬車は不死山の麓に到着した……。




