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冒険者と呼ばれるもの達が多く集う街シャーリア。
夜の帳が下りようとする中にあって、その街は輝きを増すように永久の光が、あちこちに灯し出される。
仄かに漂って来るアルコールと香ばしい何かが焼ける匂い。
楽しげな騒めきと、時折聞こえる怒声や叫び声もBGMとなって、楽しげにすら聞こえて来る。
そんなシャーリアにも、光に照らされない深い闇がある。
その闇と、夜の暗がりを見分けるのは、この街に来たばかりの、駆け出し冒険者には厳しいのかも知れない。
ーーーーーーー
教えてもらった、赤い盾の
ホームを探しながら歩く。
せっかく招待してもらったのだから、手ぶらで行くのも失礼だろうと思い、俺は、路上に並ぶ露天を冷やかしながら進んでいた。
すると、少し前に道でぶつかった少女を街路の先に見つけた。
どうやら、誰かと待ち合わせをしているようだけど、周りをキョロキョロ見ていて、側から見るとかなり怪しい。
街路樹の陰に隠れてはいるようだけど、俺が転がした、さっきの連中が探しに来たら一発でバレそうだ、と思い、お節介だとは思うけど、声を掛けてみた。
………… あのぉ〜。
「ひっ!……」
あからさまにビックリされ、めちゃくちゃ警戒された……
「あの、少し前に道でぶつかった者なんですけど、その後に怖いお兄さん達が、君の事を追い掛け来ていたみたいだったので……少し気になって声を掛けさせてもらいました。」
「…あぁ、そうだったのですか、その時はすみませんでした。では、私はこれで……」
軽く頭を下げられ、彼女はその場を離れようとする。
やっぱりナンパ的なものだと思われているのか、拒否感が凄いな……
俺は、本人が問題無いと言うなら、まぁいいかと思い直し、移動しようとする彼女を引き止める。
「いえ、大丈夫なら私が行きますね。誰かを待っている姿が、悪目立ちしていそうだったので……でも、お節介でしたね。ごめんなさい。では。」
そう言って立ち去ろうとすると、ふいに肩を掴まれた。
「ようやく見つけたぞ、アリシアー」
俺の肩越しに、ドスの効いた声で話しかけて来る存在に、分かりやすく怯えた表情をするアリシアと呼ばれた少女は、申し訳なさげに俺の事を見上げていた。
「お前が例の男か!一緒に来てもらうぞ」
アリシアの横にも男が立っていて、俺は余計なお節介から、彼女な事情に巻き込まれて行く。
ーーー赤い盾 ホームーーー
「いやー、まさかアージェが男を誘うなんて、槍でも降るんじゃないのかね?」
金髪に若干軽そうではあるが、爽やか系の達也が話を振る。
あからさまに嫌そうな顔をしながら睨んで来るアージェ。
「でも確かに。ウチの男性陣位としか話をしないアージェが珍しいよね?」
達也の話に乗っかる形で、薄い青色の髪を両サイドに結った、ツインテールのエルフの少女が続けた。
「…むっ。メルまで……」
「まぁまぁ、ウチの男性陣と同じ扱いなら、逆に男として見てないっ、て事なんじゃないかな?」
「げっ!そうなのかっアージェ⁈そいつは凶悪な一撃だなぁ……」
「達也…回復が必要であるか?」
アージェをフォローしながらも男性陣をからかう様に黒眼、黒髪ショートの少女、飛鳥が言った。
そんな、たわいの無い会話をしながらも、今日の主役を招き入れる準備の手は止めない彼等。
いつ頃来るのか、何が好きなのか、等と話は弾むが、肝心の主役であるハーフエルフの少年は、まだ現れる気配が無かった……
ーーーーシャーリア 貧民区ーーーー
……
…………
「…あのー、何処までいくつもりですか?」
「うるさい!黙って歩け!」
黙々と歩かされ、赤の盾のホームからはだいぶ遠ざかってしまったみたいだけど、彼等にはまだ止まる気配が無い。
正直、迷路みたいな道を進んで行くので、帰り道が心配だな、と考えていると……
「……私のせいですみません。隙を作るので逃げて下さい。」
小声ながらも、意を決した表情で伝えて来るアリシアは、少し震えている様だった。
…………俺は巻き込まれたとは言え、幼気な女の子を、一人で放ったらかして逃げるような人物に見えているのだろうか?
と少し、不安になりながらも、彼女が早まった行動を取らないように「大丈夫ですよ」と笑い掛ける。
通りからもだいぶ外れたし、相手は全部で5人なのでなんとかなるだろうし…そろそろやるか、と思って声を掛けようとしたタイミングで男達が立ち止まった。
どうやら彼女も、ここがチャンスと思ったみたいで、お互いに頷く。
「…あぁ?何してやがんだ!さっさどぼぉー」
言い切る前に放った俺の右ストレートで一人完了。
取り抑えようと、覆い被さってくる後ろの奴に後ろ蹴りを入れて二人目。
三人目と四人目は、最小範囲に絞った【ライトニングスタン】を放ち無力化する。
五人目を……と思ったら、最後のリーダー格の男が泡を吹いて倒れていた。
どうやら、彼女は見た目に反して、かなり強いみたいだ。
「凄く強いんですね?か弱いお嬢さんかと思ってました。」
「いえ、私は聖職者ですので、護身術程度です。……それより、巻き込んでしまって…さらに助けて頂いて。本当にありがとうございました」
力のこもった俺を言われ、俺は大丈夫と返しながらも、お礼に表通りまで連れて行ってもらえるようにお願いしてみる。
くすっと笑いながら、もちろんです!と返して先導してくれる。
道中、振り返りながら「自己紹介がまだでしたね」と言って、「アリシア・キース・フオルン、巫女をしています」と、丁寧に挨拶してくれる。
……その姿に一瞬見惚れてしまう。
それから、挨拶を思い出して驚いた。
巫女……基本職をLV100まで上げると、ジョブチェンジできるようになるけど、通常ルート以外のレアジョブが出現する事があるんだけど、彼女は、そのレアジョブ持ちって事か!
……ぜ……是非とも……「欲しい」
「えっ⁈……」
「へ⁉︎」
や、やばい…頭の中だけで思っていたつもりが、声に出てたみたいだ。
……冷や汗が流れる
「やっ…さっ、流石にそれは…………」
俺の漏れ出た独り言をバッチリ聞かれてしまい、顔を真っ赤にして俯くアリシアさん……
「でっ……ですよねー!変な事言ってごめんなさい!ほんと何言ってるんだか、まったくねぇー」
焦りまくって声が上ずるけど、言い間違いでしたとか、さらに失礼だし……実際可愛いし……いやいやいやいや、アカン、オレノアタマドナイナッテ…考えれば考える程パニクるのは、経験の少なさ故か……
そう、現実逃避していると
「……なら。」
?
「お友達…なら」
……
「お友達からなら大丈夫ですりゅ!」
…盛大に噛んだのは、この際無視して……
「よろしくお願い申し上げます」
深々とお辞儀をした。
…………その後は、大通りまで終始無言で歩き、お礼を言って別れた。
あ、もちろん別れる前に名前と、ネムの樹亭に泊まっている事は伝えました。
しばらくはフワフワした気持ちで、歩き、ようやく赤い盾のホームに到着した。
ーードンーーバタンッーーー
「おせーよアールヴ!」
俺の到着を見ていたのか、達也が走って来る。
どんだけ遠回りしてきたんだ!とか散々言われたけど、色々あってで勘弁してもらった。
……今度、奢る羽目になったけど。
赤い盾のメンバーは、とても歓迎してくれて、優しくしてくれた。
色々と落ち着いて話をする中で、俺は貴族の末っ子だったが、魔法の才能があったので、魔法の勉強はさせてもらったけど、実家は戦争で取り壊しになったと言っておいた。
皆は信じてくれたみたいで、重い表情になってしまい、後ろめたく感じる事になってしまう。
……召喚士だと明かしても良かったかもな。
今回、アージェと良く喋った。なぜ急にお呼びが掛かったのかと思ったら、俺の魔法について聞きたかったそうだ。
確かに…基礎職では使えない魔法を使ってたから、上位職だと思うよね。
でも俺は、魔法士→魔工技師→召喚士→召喚士二週目って感じで、ジョブチェンジしている。
だから、純粋な魔法士二週目も、その先の上級職も知識しか無いんだけど……
ただ、いつも無口なアージェが必死に喋る姿は可愛くて、分かる範囲で色々アドバイスはしたけど。
メルには酒で絡まれ、エルクにはお祈りされて、飛鳥とは、のほほんとした。
最後に達也が、チームに入らないか?と聞いて来た。
良いチームだし、正直入りたい気持ちにもなったけど、丁重にお断りした。
やっぱりLV差が大きいと、潜る場所や危険度が、格段に変わってしまうと言う思いからだ。
まぁ、気が変わったら教えてくれ!と言われたので、そんなに傷つけた訳じゃないようで良かった。
深夜になるまで宴会は続いて、結局、その日は泊まる事になってしまった。
翌朝、皆にお礼を言い、ホームを後にした。
「…………やっぱダメだったかぁー」
「そりゃそうよね、おそらくだけど、LVがだいぶ違うわね」
「残念である」
「……もっと魔法の事聞きたかった。」
「もぅ、これが最後って訳じゃ無いんだから、落ち込み過ぎるの禁止ね!」
「まぁ、そだな!そのうちチャンスがあるかもだしな!」
見た目の幼さに反して、この中で一番年上の飛鳥に励まされ、一同はまたの機会を狙うのであった。




