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ーーー FDMMORPG フルダイブ型オンラインゲーム †アルヴス アトリエ オンライン† ーーー
あの日、いつもの様にコミューンと呼ばれるゲーム機に入り、ゲームをプレイしていると、建物が倒壊する程の地震に巻き込まれた。
なんとか、一命は取り留めた物の、大怪我を負いゲーム機からも出られない状況に陥ってしまう。
しかし、そんな時、機械の電気がついてゲームの世界に飛ばされてる事になった!
現実世界に特に未練が無かった俺は喜んだ訳だが、装備は初期化されているわ、戦争に巻き込まれるわで、かなり大変な目にあってしまう。
だけど、これからどんな冒険が待っているのかと思うとワクワクせずにはいられないね!
ーーーアーシェ平原 街道ーーー
「……ぁあ〜平和だなぁ…ふぁっ〜」
間抜けな声と大きな欠伸をしながら、馬の手綱を握る手を離し大きく伸びをする。
和国を旅立ってから2日目も特に問題は起こらず、平和そのものだ。
初日はモンスターの出現も考えていたのだけど、街道沿いに掛けられた【聖堂の加護】と言うか力のお陰で、よっぽどの事がないとモンスターは街道まで寄ってこないってのは本当らしい。
一番最初に会った農夫の人も一人で馬車を引いていたのは、このお陰と言う事だったのかと納得する。
ただ…盗賊やイレギュラーなモンスターとの遭遇は回避できないみたいだけど、この調子ならシャーリアまでは問題の起きない、単調な道程になりそうだと思っていたんだ。
街道の小さな段差で背中の荷物が揺れる。
旅人が少ない荷物で居ると、怪しまれる事があると言われたので、わざとテント道具等を後ろに積んで居るからだ。
マジックバックは高級品なので、あまり目立たせるのは良く無いとも言われたしね。
ただ、俺が乗っている召喚騎獣(馬♂シンボリ)が、荷物の多さに駄々をこねずに走ってくれていれば、もっと早く目的地に着けるとは思うがけどなぁ……
せっかく手綱も買ったのに、愛馬はのんびりパカパカと歩くばかりだ……
…………まぁ、急ぐ旅では無いし、良しとするけどさ。
……………しばらく歩いていると、右奥の方から砂塵が上がっているのかま見えた。
誰かが街道に向かって走って来ているようだ。
このままのルートだと俺の前を通過して行くと思うけど、絡まれたりしないよな?
ゲーム時代のPKと呼ばれる存在を思い出し、少しだけ嫌な気持ちが湧いて来る。
あの時は持ち物のランダムドローだけで復活出来たけど、今は生身だし、手荒な事は勘弁してほしいんだけど…
……などと考えていると、一団の後方にさらに追走する一団が見える。
「ん?……えらく大所帯だ……いや、あれはモンスタートレインか!!?」
冒険中に遭遇した敵から逃げようとする中で、他のモンスターまで呼び寄せてしまい、終いには列車のように追い掛けられる事態になる「あれ」がまさに目の前で起こっている‼︎
「いや、ちょっと待って、このままだとすれ違い様に俺がエンカウント扱いになって、下手したら全部のターゲットが来る事になるんじゃ……」
俺は、このままでは危険だと判断して、距離を取る為に来た道を戻ろうと手綱を返す
…………しかし、シンボリが動かない!
いや、待て、どんだけ主人の命令を聞かんのだ、お前は!
進行方向に機嫌良くパカパカ歩く愛馬に、一度召喚を解くか考えているとうちに、もうすぐそこまで一団は迫っていた。……声が聞こえて来る。
「リーダー!やばい人だ!」
「なにっ⁉︎このままじゃターゲットを移してしまう…くそっ!」
「…仕方ないわ、戦いましょう!」
「…………やむを得ないですな」
「ひっ…ひぇぇーん…」
先頭を走っていた少女が後方の青年に叫んだ。
どうやら五人組のパーティーみたいで、モンスターを捨てて行く気は無いみたいだ。……良かった。
世の中には、見ず知らずの人間よりも、仲間の安全を第一に考える奴は山程いると思うけど、自分達が起こした原因に向き合おうとする、彼等は最悪の相手では無いようだった。
俺の前に来るよりも早く戦闘態勢に入り、陣形を作りモンスターの集団を待つ彼等。
「飛鳥、エルク!皆にエンチャントを!」
「はっはい〜!」「おう!」
「メルは俺の後ろを抜けた奴を優先して狙ってくれ!アージェは詠唱開始だ!」
リーダーであろう青年の指示に、流れる様に行動を始める彼等には、青年への信頼と幾重にも重ねた連携が感じられた。
モンスターの集団は、ゴブリンライダーを先頭にウルフドヴァー、ゴブリン、ホブゴブリン…最後に遅れてオーガが二体か。
結構、数が多くて厄介だな。
昨日確かめた、自分の現状で使える魔法やスキルを考えれば、召喚士だと明かさなくてもなんとかなりそうだな……と、そう思いながらシンボリから降り、手助けする事を決めた。
街道を外れてパーティーの右斜め横に回り込み、魔法を放つ「フレイムバースト!」
三体のゴブリンライダーを消し炭に変える。
直後、「ポンドオブマッド!」詠唱を終えた、アージェと呼ばれていた黒いローブをまとった少女が魔法を唱えていた。
すると、パーティと敵の集団の中間に、縦1m、横10m位の泥沼が出来上がった。
泥沼の前に立つ、青年リーダーの横を抜けて来ようとするゴブリンや、二つ首の狼ウルフドヴァーが足を取られてメルと呼ばれていたエルフの少女に弓で射られて行く。
エンチャント魔法をかけ終わったエルクと呼ばれたガタイの良い青年が沼を抜けたモンスターを引きつけ……メイスでぶん殴っている。
飛鳥と呼ばれた黒髪の女の子は、オロオロしながら敵にデバフ魔法を飛ばしていた。
……ダメージは受けているけど、何とか対処出来ているようで、遅れて来たオーガを俺が「ライジングスピア」の魔法で倒すと、形勢不利と見たのか、残りのモンスターは逃げて行った。
その様子を見守った後にリーダーが話しかけて来た。
「…いやー、助かったよ!マジで危ない所だったから、旅の魔法士にばったり出会えるなんて奇跡だわ、奇跡!」
日頃の行いが良いからかなぁーと言いながら、呑気にこちらに向かって来る青年に、一応は軽く頭を下げた。
そして顔を上げると……
「うわっ…凄い美形…」
「うん、ちょーイケメンね」
「うむ、美しい」
「……」
……等と聞こえて来る、恥ずかしい言葉を聞いていないふりしながら、青年に話し掛けた。
「こちらも一人であの数を相手にするのは厳しかったので、置いていかれずに助かりましたよ。」あ、ちょっと嫌味っぽくなったかな……
「あちゃー痛い所つくっすねぇ!モンスタートレイン作っといて、人になすり付けるとかは、あり得ないけど…迷惑かけた事に関しては、本当に申し訳ない!」
言い訳の最後には、真面目な顔で頭を下げる「リーダー」が居た。
後ろの面々も申し訳なさそうにしている。
その様子を見て、俺も優しく聞こえるように返事をした。
「……いえいえ、私なら大丈夫ですよ?被害もありませんし、皆さんの気持ちも分かりましたので、気にしないで下さい。」
まぁ、初モンスター討伐も出来た訳だし、基礎職の力でも充分戦えるって事が分かったので、実際は寧ろ感謝してるくらいだったんだから。
…………その後は軽く自己紹介などをして、再度お詫びのやり取りを交わした。
そして、シンボリに乗ろうとすると…
「…でかっ!」
「大きい…」
「なかなかである」
「……」
また、色々と聞こえて来るな……
微妙な表情をしたリーダーが、尋ねて来る。
「なぁ、アールヴさん」
「アールヴでかまいませんよ、達也さん」
「なら俺も達也で頼むな!それより、アールヴはシャーリアに向かうんだろ? 俺たちも一旦戻るつもりだから、良ければ一緒に行かないか? 街に着いたら詫びがてらホームで歓迎するからさっ!」
本当に気にしていないし、そう伝えたんだけど、「ダメか?」と傷を回復されながら、しつこく聞いてくる彼に押し切られ形で、街まで同行する事になった。
シャーリアへ向かう道中、お互いの話を色々とした。
まぁ、他のメンバー達が、主に達也の酒癖や女癖に対するクレームを言ってる事が多かったけど…
彼等は【赤の盾】と言う名前のチームで、元々は達也と飛鳥のペアにエルクが加わり、噂を聞いたメルとアージェが加入して今の形になったそうだ。
………………なんだか、彼等を見ていると、昔このゲームを始めた頃にお世話になっていたパーティーを思い出した。
リーダーは【俺がロココだ!】さん、と言う外国の漫画に出てきそうなマッチョなパラディンで、お調子者だけど面倒見の良い素敵な人だった。
全員で10名程度しか居なかったけど、ロココさんを中心に色んな所に遊びに行ったし、よく助けてもらったな……
リアルの都合で、リーダーが引退してからは、次第に集まりが悪くなって来て、最後は皆バラバラになってしまったけど……
俺は、それからはソロプレイが基本になってしまい、パーティーに入るのは、クエストや単発パーティーの募集に応募する程度になってしまったんだ。
暖かかった居場所が無くなるのが怖かったのかなぁ…と、今思えば、そう思える位には整理できている。
そう言えば、【ハデス】さんは、元気にしているのだろうか?
召喚士としての師匠で、色々と私的にも面倒見てもらったなぁ……
……
そんな風に、ボーッと昔の事を思い出してしていると、ポンと背中を叩かれた。
「幸せそうな考え事をしている所悪いんだけど、そろそろ野営の準備に入らないか?」
と、達也に呼ばれて、現状に引き戻され頷く。
……そんなにニヤけていたのだろうか……
その後は、全員で野営の準備と食事の支度を整えて、6人で晩飯を頂いた。
質素ではあったけど、わいわいと食べる食事は、とても美味しく感じたんだ。
夜、テントが一つで、順番に夜警をする人以外は皆一緒に寝る。と言うのはビックリしたな……女の子もいるのに、間違いが起こったりしないのだろうか?と、疑問には思ったが、口には出さないでおいた。
次の日も早朝から出発し、夕方前には無事、目的地である【シャーリア】に到着する事が出来た。
「お前さんの愛馬が、もう少し急いでくれれば、到着も早かったんだけどなぁ……」
ウチの我儘息子に愚痴を溢すリーダーをスルーして、皆にお礼を言う。
すると、エルクが、詫びの件があるから、「宿を押さえたらホームに来るように」と言って来た。
俺は、本当に気にしないから大丈夫と伝えたんだけど、またも却下されてしまう。
しかも、ここまで、ほんど喋って無かった、魔法士のアーゼに「…必ず来て……」と言われると、さすがに断りづらいよなぁ…
その後、一旦、皆と別れてから、勧められた宿屋【ネムの樹亭】を探して歩いていると、一人の少女にぶつかった。
年齢的には16.7才位だろうか?青い髪に緑がかった瞳で、かなりの美少女だ。
「ごめんなさい」と何度も告げて、後ろを気にしながら走りさる少女の後ろ姿を見ていると……
これまた、いかにもなゴロツキ風の男が3人追い掛けて来たので、バインド魔法でリーダーっぽい男を転がしておいた。
そんな事をしながら、ようやく目的の宿に着いたので、部屋を予約してもらい、赤の盾のホームに向かう準備を始めた。
宿は結構しっかりとした鍵付きの個室で、風呂は無いけどトイレが付いていた。
「…さすが、一泊5万gするだけはあるのか?」
そう呟きながら、明日からはもう少し安い宿を紹介してもらう事を決め、宿を後にして彼等のホームに向かった。




