04.僕の価値
人生とはいつ何が起こるかわからないものだ。
下級貴族の次男に生まれ、なんの特技も取り柄もないような僕が…みんなの憧れのマリアベル様に勧誘され、
特務部隊の隊服を着ることになるなんて…。
「どう?みんな憧れの特務部隊の制服を着れた気分は?」
「なんというか…複雑な気分です。」
あの時、マリアベル様に特務部隊に入れと言われた僕は、能力的にも性格的にも軍に入るなんて絶対に無理だと思った即答でお断りをした。
…が
「自分の立場、わかってる…?加護を隠蔽していた大罪人として捕まえることもできるのよ?」
というマリアベル様のお願い(おどし)に勝てず、気がついたらこんな事に……。
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雑貨屋でマリアベル様にハーブティーをご馳走してもらった後、マリアベル様を連れて家に戻った。
国の誉であるマリアベル様を連れて帰った僕に驚き固まっている両親。
そんな両親へマリアベル様が説明した内容は、後天的に加護がある事がわかった僕を保護する為に身元を預かりたいというもっともらしい言い訳だった。
突然の出来事に両親は聞いているのか聞いていないのか固まったまま。
僕の準備もあるだろうから一週間後にまた来ると、拒否権は無いと言った時と同じようなにこやか笑みを浮かべ嵐は去っていった。
僕に加護がある事を知らなかった父と母は驚きながら
「まさかお前に加護があるなんてなぁ!(これで我がエリオンド家ももうバカにされなくてすむぞ!)」
「そうね、貴方は自慢の息子だわ!(この子がいれば私もこんな貧乏暮らしとはおさらばできるわ!)」
今まで僕に無関心だったのが嘘のように僕を自慢の息子だと褒めちぎる。
わかりきってはいたが、その心の内は……打算と欲で溢れていた。
僕の家に向かう途中に歩きながらマリアベル様に聞いた話だと、軍人は皆軍の寮に入れられるらしい。
そこでの生活は全て税金で賄われ、その上給料もきちんと出る。
他の隊と、特務部隊の大きな違いは加護を使い戦うか、そうでないか…。そもそも加護持ちの人間事態この国にあまりいない。
割合としては1000人に一人、何かしらの加護を持つものが生まれるといったところだろう。
マリアベル様や特務部隊の人達のように凍らせたり、炎を出したり出来るほどの加護を受けている人は本当に一握りで、殆どの人の加護が少し風を起こせるとか少し火が出せる、とかあまり戦闘向きのものではないものが殆どだ。
それでいうと特務部隊は本当に少数ではあるが本当に精鋭の集まりで、難しい任務が多いと聞く。
軍にいる特務部隊以外の他の隊の人達も、加護がない人は殆どだと聞く。なので当然命がけの仕事は特務部隊が行うことが多い。その為お給料もかなりいいと聞いた事がある。
そんなところに僕なんかが入って大丈夫なんだろうか…。
だって僕の加護もあきらかに戦闘向きではない、出来ることなんてせいぜい攻撃を避けることくらいだ。
マリアベル様は…僕の何に目をつけて特務部隊に勧誘したんだろう…。
そんな僕の心配をよそに両親は浮き足立って僕を送り出す準備をしている。
それもそうだろう、特務部隊とは誰もが憧れるこの国の誇り…。そこには努力だけではどうにもならない、才能もなければ入ることが許されない部隊。
どういうわけかそんなところになんの才能もないと思っていた次男が入る事になったのだから。
「ジュード、お前はこの家の誇りだ!」
「お国のために精一杯励むのですよ。」
「はい…」
ねぇ、父上…母上…。息子の加護については何も聞かないのですか?
息子がこれから行くところは、最前線の部隊なのに。
自分の価値を思い知った気がした。
僕はあの特務部隊でやっていけるんだろうか…
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「ちょっと?何考え込んでるのよ?せっかくみんなの憧れの隊服が着れてるんだから、もっと浮かれてなさいよ」
「そうは言ってもですね…」
そういって僕の顔を覗き込むマリアベル様、眉間にシワが寄っていても綺麗な顔だ。
「はじめは緊張だってするさ!皆マリアみたいに図太いわけじゃないんだ!」
「ちょっと、ジル!」
そう笑いながら言うのはジル・ヴィレイスト様。特務部隊の隊長であり、これからの僕の上司。
あの後本当に一週間後に僕の家に迎えに来たマリアベル様に軍の施設を案内され、一番最初に紹介された人だ。
「キミがジュード君か!マリアから話は聞いている、会えるのを楽しみにしていたよ、これからよろしく頼む。」
と裏表なく爽やかに言い僕と握手してくれた隊長。その手のひらは豆だらけでとても硬く、この人の努力の凄さを物語っていた。
「緊張しなくていい、皆いい奴らだからな。」
「そうよ、何を悩んでるのか知らないけど堂々としてなさい。このあたしが直々にスカウトした男なんだから、もっと偉そうにしてればいいのよ。」
「マリアベル様…」
「あと、それ!やめてくれる?これからは同僚なわけだし、マリアでいいわ。歓迎するわ、ジュード。」
「あぁ、歓迎するぞ。ジュード!」
といって綺麗な笑みを浮かべた二人。
そんな二人には一切裏の言葉なんてない。
ここでなら僕は僕らしく頑張れるのかも知れない




