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僕らは女神を失った  作者: 昆布
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03.苦手な人









………どうしてこうなった。








後悔しても遅いけど、あの時僕がマリアベル様のことを何も言っていなければこんな事にはならなかったはずだ…いや、別に悪く言ったつもりなんてなかったけど、やっぱり人のことを悪くなんていう言うもんじゃないな…。


絶対自分に降りかかってくる。



いや、そもそもパレードになんていかなければ…



こんなーーーーー






「どう?ここのハーブティーは美味しいでしょ?」


「はい!美味しいです!オレまで奢って貰ってしまってすみません!」





…マリアベル様と一緒にお茶なんてすることなかったのに。














話を少し巻き戻す。




マリアベル様に加護持ちではないかと言われた僕は




「まさか、見てくださいよこの黒髪。こんな黒髪の僕が加護なんて持ってるわけないじゃないですか…」


「それをいうならわたくしの隊長だって黒髪ですわ。加護があるか、加護がないかに髪色は関係ありません。」





ぐうの音も出ないとはこの事か…!



僕が髪色を指摘したのにはわけがある、以前から伝えられてきた事で、髪の毛の色の色素が薄ければ薄い程、加護が強いと言われている。

つまりこの人、マリアベル・エリニス様のような綺麗な銀髪をしている人は最も精霊に愛されていて。

僕みたいな黒髪は加護持ちがほとんどいない。あったとしても役に立たないような加護のものがほとんどと言われている。


その点も含めて特務部隊の隊長であるジル・ヴィレイスト様は特別な人なのだ。

黒髪であり、かつ平民でありながらも国のトップクラスの地位にいるのだから。この僕ですら憧れるほどの存在だ。






「先程から見ていましたがあなたの動き…まるで相手の動きがわかっているような避け方をしていましたね…」


「まさか、そんなわけないじゃないですか…」


「そ、そうですよ!マリアベル様!こ、こいつに加護なんてあるわけないじゃないですか!」





内心汗がダラダラになりながら、僕とロニは否定をする。


なぜなら僕には本当に精霊の加護があるからだ。


だが隠すのには訳がある、なぜなら…





「加護がありながら、その加護を隠すことは重罪にあたります。知っていますね?」





そう、加護の悪用を防ぐ為。精霊の加護を持つ者たちは国へ加護の詳細を明らかにしなくてはいけない。

それを行わなかったもの、拒んだものは大罪人として、罪を継ぐなわなくてはいけないのだ。



だからこそ、ここでバレてはいけない。

僕だけではなく、ロニまで罪人にされてしまうかもしれないからだ。





「もう一度言います、もし嘘をついたのであればこの場で貴方と、貴方の友人を凍らせます。これは脅しではありません、命令です。正直に答えなさい、貴方は加護持ちですね?」




これは本気らしい…。

こんなところで僕は大罪人として捕まるのか……


さよなら、僕のつまらない一生





「……そうです。」




しぶしぶ肯定する。こんなところでロニを巻き込んで殺してしまうわけにはいかない。




「どんな?」




僕の加護は…あまり人から褒められたものではない。そして派手なものでもない。


加護のせいで昔からずっと嫌な思いをしてきた。

こんなもの別にいらなかった。




物心がついた時から加護のせいで変わり者だと言われてきた。当時は仲の良かった兄に本当の事を話したら絶対に人に言うなと言われてからずっと隠してきた。

まぁ言うなと言われた理由は後で知る事になるんだが…。



僕の加護を知っているのは兄とロニだけ…ロニは僕の加護を打ち明けた後も変わらずずっと友人でいてくれる。


きっと気持ち悪いだろうに。




そんなロニも自分の加護のせいで巻き込んでしまった…。




嫌になる。


大嫌いな、精霊の加護。



僕の加護はーーーーー





「人の心が読めます。」





人の心が読める。




「なるほど、だからあいつらの攻撃を避けれたってわけね……」


「そうです…その…ロニは関係ないんです!だからロニは…!」


「別に連れてなんていかないわよ。あたしは今休憩中なの、休憩中に仕事なんかしないわよ、めんどくさい。」




マリアベル様は至極めんどくさそうな口調で先程の凛とした人とはまるで別人かのように言い放った。


なんだったんだ僕の心配は、っていうかその口調…





「え、ええええぇ!?マリアベル様!そ、その口調!まさか本当に!?」


「だってこの子心を読めるんでしょ?だったら猫かぶったって仕方ないじゃない、どうせあなたも彼から聞いてるんでしょ?」


「えええぇぇぇ…。」





目を見開いて信じられないものを見たという顔をするロニ。まぁロニがこうなるのも頷ける。


これが僕がマリアベル様を苦手な理由。




マリアベル様は二重人格を疑う程の猫かぶりなのてある。



先程のパレードの時もそうだが、その人はニコニコしながらもずっと心の中で悪態をついているような人なのだ。

だから僕はこの人が苦手なのである。



ちなみに言うとさっきのチンピラに対しても心の中で凄い悪態をついていた。





「まぁこんなところで立ち話もなんだし、近くにあたしの行きつけがあるの、お茶でもしましょ?奢るわ(拒否権はないわよ)」


マリアベルさまは見惚れるような笑みを浮かべてはいるが、拒否権は与えてくれないようだ…。








というわけで冒頭にいたる。

僕たちはマリアベル様の行きつけらしい、平民街の隅にある雑貨屋にきている。僕達は軽く自己紹介をさせられた後、そのまま何故かマリアベル様にハーブティーをご馳走して貰っているわけだ。





「ロニ、お前さっきまでビビってたくせに馴染みすぎだろ…」



ハーブティーをぐびぐび飲んでいるロニを見る。

ハーブティーはそんな風に飲む飲み物ではないぞ、ロニ。




「いや、確かにビックリしたけどよ。お前から聞いてはいたし。いつものも神秘的で綺麗だけど、こっちの方が話しやすくていいじゃねーか」


「あら、あなたよく分かってるわね。素直だし、とても好感がもてるわ。ケーキ好きなら頼んでもいいわよ」


「え、いいですか?やった!」




いやいやいや、いいんですか?じゃないだろ…少しは遠慮しろよ…っていうかお前…さっきこの人に氷にされそうになってたんだからな…。

こうやって誰とでもすぐに仲良くなれるのはロニの良いところではあるけど…




「というか、ここ…雑貨屋なのに食べ物もあるんですね…」


「そうよ、知る人ぞ知る名店ってやつ?ここのハーブティーが凄く美味しいのよ」


「なるほど、だからわざわざ平民街へ?」





これだけの有名人がなんであんな所にいるのかと思ったら、この人休憩中にわざわざここのハーブティーを飲みに来てたのか。おすすめだというハーブティーに口をつける。


美味しい…!これは確かに通いたくなる味だ…。




「それもそうだけど、違うわよ?ハーブティーはついで、私はここに息子のご飯を買いに来てるのよ。」



「へー、息子さんの……息子!?!?」





なんて事のないように言うマリアベル様だが今なんて言った…?息子!?


ええぇ…まさか、マリアベル様に!?そんな話は聞いたことない、まさか隠し子!?僕達は聞いてはいけないことを聞いてしまったんではないか…!?





「息子!?マリアベル様、えぇ!?」


「そうよ、世界一可愛い(黒くてモフモフの)息子」




黒くて、モフモフ……




「それって…犬じゃ…。」


「そうよ?」


「犬かーーーー!」





び、びっくりした…。

柄にもなく心臓が出るかと思った…


ロニなんてホッとし過ぎて思いっきり叫んでしまっている。ニヤニヤと人の悪そうな笑みを浮かべながら俺たちをみるマリアベル様。これは完全に遊ばれているな、僕たち…。





「ねぇ、ジュード?あなたまだ学生なのよね?」


「はい、一応…来年卒業ですが。」




カップを置きながら彼女はそう聞いてきた。カップを置く姿すら優雅とは神様は不平等だ。



平等といえば、ここアインデルンでは平等な教育を受けるため、貴族平民関係なく10歳から18歳までが王立の学校に通うことになっている。学費は国が払うもので、通いたいと思えば誰でも通える環境だ。


といっても貴族たちや才能のあるものは家庭教師などを雇っているため全てが平等とはいかないが…





「学校は楽しい?」


「…そうでもないです。」




平等、といっても身分の差別は無くなったわけではない。家庭教師を雇えない平民や下級の貴族の僕のようなものは学校では学無しと馬鹿にされるのだ。

特に僕は加護のせいで、表面上は普通に振舞っている上流貴族、先生達ですら心の中では相手を見下しているという状況を知っているから…楽しくはない。まぁもう慣れたが。


正直早く卒業したいと思っている。





「そう、なら問題ないわね。あなた、学校やめて私の所に来なさい。」






…………え?


どうゆうことですか?








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