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Myth World  作者: マック
第一章 『四重奏曲』
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第二十一話 町中デート

今俺は宿の自分の部屋からユリに引っ張り出されてから、20分ほど歩いて広場まで来た。

「じゃあ広場を中心として町を案内するね」

「んー、よろしく」

くそ、最悪部屋なら掲示板見て情報収集とか、新スキル覚えたかったのに・・・

二人っきりじゃあ目を盗んで逃げることも出来ないし。

・・・二人っきり?

・・・二人っきりでお出かけ?

・・・二人っきりで街にお出かけ?







デートじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!?






まじか俺!!まじか!!

金髪美少女とデートとか!!

これまでのゲームでも二人で会うことは良くあったけど、だいたい一緒に狩りだったり、武器を見に行ったりで帰りにお茶して帰るぐらいだったしな!

まぁでもなぜかお茶の方が長かったり、お茶の後に遊びに行ったりしたんだがそれはデートじゃないだろう。

だが今回はどうだ!?

これはもうデートとしかいいようがないだろ!

もし、これが現実だったらクラスの男子に殺されてたな、うん。

しかしここはゲームだ!

そう思ったらテンション上がってきたな!


「・・・ウ、ちょっとユウ!聞いてる? 」

「あ、ああ、ゴメンゴメン。何? 」

「何じゃないよ、もう!私が話しててもずっとニヤニヤして聞いてないんだもん」

ヤベェ、俺顔に出てたのか・・・

「なんでもない、なんでもない。で、最初はどこに行くんだ? 」

「最初は北の大通りから行こうと思うんだけど、いい? 」

「ん、ああ任せるよ」

うわぁ、任せるよじゃねぇよ!

デートなのに女子にエスコート任せるってダメだろ俺・・・

「じゃあ行こう! 」

「お〜〜」

まぁ、ユリはデートだなんて思ってないだろうけどな。




************


北の大通りを歩きながら互いの近況を報告し合う。

同じ宿には泊まってるけどお互い忙しいのであまり話をする機会がなかった。

話を聞くと、ユリはしっかりとパーティメンバーを見つけて順調にレベル上げを行えているらしい。

パーティメンバーは以前やっていたゲームのフレンドで、たまたまパーティ募集を掲示板で見つけたので入れてもらったそうだ。

今はお金を貯めてギルドを目指しているらしい。



ギルドと言うのはプレイヤー同士が組む事の出来るグループのようなものだ。

ギルドはパーティと違って人数制限が無く、パーティとは別で組まれる。

ギルドを組むとギルドのメンバー専用のチャットで情報交換が出来たり、共用のアイテムを使いまわしたりなどの利点が多い。

このゲームでもすでに幾つかのギルドが出来始めているらしいので時間が経てば、大小様々なギルドが出来て、ギルドの影響力が大きくなって行くだろうが、今はまだその段階ではないだろう。


「ユリは今日は大丈夫なのか?今ギルド設立の資金を集めてるなら俺に構ってる時間は無いだろ? 」

「あぁ、大丈夫大丈夫。ちゃんと許可はとってあるし、むしろ応援されてるぐらい」

「何に対して応援されてるんだよ」

「え!?いや、なんでもないよ!気にしないで!ほ、ほら闘技場が見えてきたよ! 」

何を慌ててるんだ?

まぁいいけど。

それにしてもやっぱりデカイな〜。


北のフィールドに出る時に通ったことがあるので初めて見たわけではないが、いつも長蛇の列が並んでいたので、中に入って見たことはなかった。

「ここってなんでいつも混んでるんだ? 」

「ここを通してPvPをすると、PvPの決闘範囲が闘技場の大きさになるんだよ」

「へぇー、でもそれだけでこんなに? 」

「もちろんこれだけじゃないよ。ここはお金を払えばこれまで戦ったことのある魔物と闘うことが出来るんだよ。しかもその戦いでHPが0になってもPvPと同じ扱いだから死なないしね」

へぇー・・・

え!?

「それ凄くね!? 」

「まぁだから長蛇の列が出来てるんだけど、ユウにはあんまり意味無いと思うよ? 」

「なんで? 」

「ユウはこれまであった魔物の中で一体一で苦戦する相手っている? 」

んー、今までの中だとアイアンゴーレムが一番強かったけど、今更やってもなぁ。

「んー、苦戦ってほどでは無いかな。でもこれで強い奴と何回も戦ったら経験値効率が良くなるんじゃ無いか? 」

「一日一回しか同じ相手と戦え無いみたいよ?それにここで倒した魔物の素材はもらえないから、魔物を倒せるなら外で狩った方がいいと思うよ」

んー、確かにそれなら外で狩った方が効率いいな。

でも夕食の後に来る分には良いかもな。

するとユリがジト目で、

「今日はダメだよ」

「わかってますよ・・・」



雑談を続けながら歩いていると闘技場の前に着いた。

「やっぱりいっぱい人並んでるね〜」

「そうだな〜。・・・おっ? 」

闘技場の前に並んでいる列の中に知っている人の後ろ姿があった。

「重さん? 」

名前を呼びかけるとその人はこっちを振り返る。

「おっ?ユウ坊じゃねぇか!お前も闘技場か? 」

「いやいや、違いますよ。逆になんで重さんが闘技場に? 」

今俺と会話してるのは重松こと重さんで、昔からの知り合いの一人だ。


この人も俺達と同じようにトップのプレイヤーで、次のボス攻略にも俺達と一緒に来るもう一つのパーティに入っている。

姿は身長150位で、筋肉隆々、黒髪の立派な髭を蓄えたリアルドワーフみたいなおっさんだ。

使う武器も斧を好んで使っていて、このゲームでも斧を使っている。

実力者であるはずの重さんが闘技場に並ぶ必要性は無いはずなんだが・・・


「いやいや、俺はそっちじゃねぇよ。こいつと一丁腕試しをしようって話になってな」

そう言って重さんに引っ張られて列から出てきたのは俺も知っている人物だった。

「お前かよ・・・フーリン」

「おぉ!ユウじゃないか!会議以来だね」


この俺にイケメンスマイルを向けている空色の髪をした優男はフーリンという名前のプレイヤーだ。

こいつも俺達と一緒に来て、ボスの扉の前で待機するパーティの一人で重さんと同じ班になる。

こいつも歳は上なのだが(おそらく20代)、どっかのバカ鍛治士と同じで俺が絶対尊敬出来ないタイプの人間だ。

なせなら・・・

「そうだ!ユウ!せっかく会ったのも何かの縁、一勝負しようじゃないか! 」


こいつは強い奴と見たら誰かれ構わずに勝負を挑む戦闘狂なのだ。

しかも残念ながら俺も強者リストに入っているらしく、会えば必ず勝負を挑まれる。

どおせこの二人が闘うことになったのも、前回の会議の時に来たメンバーに片っ端から勝負仕掛けて、重さんがその勝負を受けたんだろう。

重さんも結構好戦的だからなぁ・・・

「悪いけど今日は戦うのは止められててな」

そう言うと、二人は俺の隣で所在なさげに立っているユリのことを見て

「いや、これは悪いな!まさかデート中だったとはな!」

「ユウもやるなぁ〜。デスゲームだって言うのに女の子とデートだなんて」

俺とユリがデートをしていると思ったのかガハハハと豪快に笑う重さんと、勝負の誘いを断られて不機嫌なのか、言葉にトゲがあるフーリン。


おいぃぃぃぃぃ!


どうすんだよ、これ!ユリが赤くなってアワアワしてるじゃねぇか!!


ユリからしたらデートだなんて思ってなかったんだろうから、そんな事言ったら微妙な空気になるだろうがぁぁぁぁぁぁぁ!


クソ、やばいぞ!とにかくこの場から離脱しなければ!


「これはデートなんかじゃないからな!それじゃ! 」


ユリの手を引っ張って早足で闘技場の列から離れて大通りを進んでいく。

「しっかりやれよぉ〜〜! 」

後ろから重さんのエールが聞こえてくるが今は逆効果だ。



クソぉ〜〜!俺だけがデートだと思っていれば幸せに終われたものを!



ある程度離れてから歩くスピードを落とす。

ユリは俯きながらずっと後ろから着いて着ていた。


ヤベェ〜。

なんて声かけりゃあいいんだ。


俺が悩んでいる間、俺たちは無言で歩き続けていた。

するとユリが顔を上げてポツリと

「手が・・・」

うわっ!ずっと繋ぎっぱなしだった!

「ご、ゴメン」

すぐに手を離す。

これがリアルだったらおまわりさんに捕まるレベル。


手を離すとまた俯いて俺の後ろを歩く。



うわ〜この沈黙どうすりゃいいんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!



好きでもない男と恋人だと勘違いされて、さらにその男に手を繋がれた女子に対しての慰め方とか無いのかよぉぉぉぉ!


そんなバカな事を考えている間も、ユリは俯きながら俺に着いて来るだけで無言が続く。

なんかユリっていつもは元気な感じだけど、こういう場面だとしおらしくなるんだよなぁ。

デスゲームが始まってすぐの時にもあったし。

世の男からすればこのギャップは悩殺レベルだろ。


俺はすでに悩殺されてます。


って、そんなバカな事を考えてる場合じゃねぇ!

何か声をかけなければ!


「デートだなんて重さんも変な事言うよなぁ」

これならどうだ!さっきの事はなんとも思ってないアピール。

良く絞り出した俺!


するとユリは突然足を止めた。

「ユリ? 」

ユリが顔を上げると、顔にはさっきまでとは違った意味で赤くなった顔があった。


あれ?なんかミスった?




「ユウのバカァァァァァ! 」


大声でそう怒鳴るとズンズンと先に進んで行ってしまった。


あっれぇ?なんか地雷踏んだか?

まぁよく分からんが調子は戻ったのか?


いまいち納得出来ないが、置いてかれるのはマズイのでドンドン先に進んで行くユリの後を追いかけた。



************




そのあと、ユリの機嫌を戻すのに結構な時間とお金がかかったが、町の半分を二人で見て歩き、広場に戻った頃には上機嫌になっていたので良しとしよう。

じかんは既に17時を過ぎていて、そろそろ日が落ちる頃だ。

「ふぅ、これで北と西の通りはバッチリだね」

「そうだなぁ、けっこう裏道とかも見たしなぁ」

「それで、その・・・」

「ん? 」

ユリが上目遣いで躊躇うように言葉を切った。

ヤベェよ!美少女の上目遣いは童貞には毒だよ!


自分の顔が赤くなるのを感じて目をユリから背ける。


するとユリは意を決したのか言葉の続きを発した。


「今日は楽しかった?」



は?



美少女とのお出かけが楽しく無いわけないじゃないですかぁ!

もう楽し過ぎて死んでも良いかな?とか本気で思っちゃったよ!!


流石に心の声をそのまま出すわけにもいかないので


「あぁ!凄い楽しかった!今日はありがとな、ユリ」

俺の出来る最高のイケメンスマイルを披露した。

するとユリは顔を赤くして俯いてしまった。


まさかフラグが立ったか!?


いや、それはないな。

そもそもここゲームだし、何を思い上がっているんだ俺。


それから二人とも言葉を発さず無言の雰囲気が続きかけたところで、ユリが行きなり顔を上げ、視線を彷徨わせ始めた。


恐らくメールが来たんだろう。


少しすると、メールを読み終わったのか、一つため息をつくと申し訳なさそうに俺の方を向いて


「ゴメン。パーティのメンバーから集まって欲しいって連絡があって・・・」

「あぁ、それなら行ってきなよ。

今日は一日ありがとな」

「うん!それじゃあ! 」

そう言うとけっこう急ぎの用事なのか西の通りの方に手を振りながら走って行く。

俺もそれに手を振りかえしながら、ユリを見送る。

するとユリは途中で立ち止まってこちらを振り返り

「私も今日は楽しかったよー!」

と言い残して全速力で走り去っ ていった。


俺の目には夕陽に照らされて光る金色の髪がゲームとは思えないほど綺麗に映った。



「さて、俺も帰りますか」

明日は今日の分も取り返さなきゃだしな、今日を糧にしてまた頑張りますか!

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