第二十話 OFF
広場の地面に横たわりながら、ゲームの中とは思えないほど綺麗な青空を見上げる。
「あー、負けちまったー」
さっきの村長との戦いで、実力を全て・・・、いや実力以上のものを出せたと思う。
それでも届かなかった。
一発もダメージを与えられなかった。
うわー、悔しいなぁ。
自分のことを強いと思ってるし、実際強い方なのかもしれないけど、やっぱり上には上がいる。
いつになったら追いつけるんだろうか・・・
「でも、凄かったよユウ! 」
ぼーっと空を見上げていると視界がふさがり、アヤの整った顔が見えた。
「いつの間にあんな強くなったんだ?ユウ? 」
「ねー、本当に強くなってたよ!私も負けちゃうかもしれない」
「私ももっと強くなる! 」
他のみんなの声も聞こえてくる。
みんな俺と村長のPvPを見ていたようだ。
集中してて、全然気づかんかった・・・
「本当に成長していたよユウ」
そしてさっきまで戦っていた村長の声も聞こえてくる。
このまま寝転がりっぱなしで話をするのは失礼だな。
「よいしょっ!!! 」
・・・立ち上がれない。
体が動かない。
視界もぼやぁ、っとして焦点が定まらない。
生身の体が無いのになんだこれは?
原因を考えようとしても、集中できない。
「あ、れ?」
もしかしてバグ?
このまま死ぬのか?
冷や汗が流れる。
それは嫌だ!
必死に体を動かそうとするが、ピクリとも動かない。
周りも俺の異変に気付いたのか慌ててる様子が伝わってくる。
すると誰かに引っ張り起こされ、そのまま背中に背負われた。
大きい背中だ。
そのまま俺の意識は落ちた。
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目を覚ますと知らない天井・・・
ではなくいつもの宿の天井だった。
首を傾けて横を見ると村長が隣のベッドに座っていた。
「ユウ、起きたかい? 」
「すいません、村長。あの後どうなったんですか? 」
「ただ単に、戦闘に集中し過ぎて脳が疲れてしまっただけだよ。この世界では体は疲れることは無いけど、脳は疲れるからね。脳からアバターを動かすための信号が許容量をオーバーしたから体が動かなくなってしまったんだよ」
「なるほど・・・」
もしフィールドでこんな状態なったら・・・死ぬな。
まぁあそこまでしなきゃ勝てない相手は当分出ないと思うけど。
「ユウ」
村長の声に顔を上げると、村長が真面目な表情をしていた。
「君はまだまだ強くなれるよ。ケンやアヤよりも、そして私よりも強くなれる可能性を秘めている。焦らずに君の強みを伸ばしていくんだ」
言い終わるとと表情を柔らかくして、ベッドから立ち上がった。
「あぁ、あとケンからの伝言で、ユウの代わりにアヤを連れていくから今日はしっかり休んでいくようにって言っていたよ」
それだけ言うと部屋から出て行ってしまった。
おい!嘘だろ!俺を置いていくなよ!
ヤベェ、俺もすぐにレベル上げに行かなきゃ差が広がっちまう。
すぐにベッドから立ち上がって体の調子を確かめる。
まだ頭の回転が鈍い感じはするが、体を動かすには支障が無いようだ。
よし!じゃあ行くか!
ふとドアに手をかけようとして頭に村長とのさっきの会話が蘇る。
俺が村長を超える・・・か
いつになるか全く見当もつかないわ。
その前にケン兄やアヤにさえまだまだ勝てない。
村長を超える道のりは長そうだ。
そんな先のことを考えても仕方ない。
今はとりあえずこのデスゲームをクリアするために出来るだけレベルを上げるだけだ!
勢いよく扉を開けるとそこには驚いた顔で固まっているユリが立っていた。
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「それにしても最初にリオさんから聞いた時はびっくりしたよ。ユウがいきなり倒れたって聞いたから」
「いやぁ、悪い悪い」
リオ姉、ほとんど説明してねぇじゃねぇか・・・
今、俺はユリが持って来てくれた昼飯を部屋でユリと一緒に食べてるところだ。
もう13時をまわっていたので、ナイスタイミングだった。
腹が減っては何とやらってね。
さっきまでのやる気はどこへ行ったのか。
「あと、今日ユウは狩りに出るのは禁止だからね」
「へ? 」
「リオさんからさっきメールが来て、どうせユウはすぐにレベル上げのために狩りに出ようとするから監視して置いてって来たんだよ」
クッソぉ〜、重要なことは伝えないくせに、こういうことはしっかり伝えるのかよ!
「あぁ、分かったよ。今日はもうゆっくりしとくわ。ありがとなユリ、もう俺は大丈夫だ。心配せずに自由にしてくれ。俺なんかに構っててもしょうがないだろ? 」
俺の出来る限りのイケメンスマイルをしてユリに出ていくことを勧める。
ユリが出て行ったらすぐに狩りじゃあー!
するとユリはジト目でこちらを見てくる。
あれ?俺のイケメンスマイルが通じないだと!?
いや、ちょっと赤くなって・・・
気のせいか
「リオさんが言ってた通りだ。私が行った後に狩りにいくつもりでしょ!もう今日は絶対目を離さないからね! 」
くそ姉ぇ、余計なことしくさってからに。
「いや、本当に大丈夫だって!もう全然動けるし」
シャドウボクシングで元気なのをアピールする。
「ダメです!今日は一日見張ってます! 」
仁王立ちしてこちらを睨みつけてくるユリ。
正直・・・可愛いです。
はぁ、しょうがない。
今日はOFFにして、大人しくしてるか・・・。
「で、暇になったんなら町に行こうよ!どうせ狩りばっかでまともに町なんて歩いてないでしょ。案内して上げるから」
あっれ〜?さっき大人しくしてろって言ってなかったか?
「いや、でも大人しくって・・・」
「部屋に居てもやること無いでしょ!ほら行こう! 」
「ちょっ、引っ張るなって!まだ昼飯残ってるから! 」
理不尽すぎる・・・。
まぁどうせ部屋に居てもやること無いしな。
俺はユリに急かされながら宿の部屋を出て行った。




