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Myth World  作者: マック
第一章 『四重奏曲』
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第十九話 全力

素材回収をしてドクターの店に寄った日の三日後、いつも通り朝のPvPを始めようと、広場に来て見ると村長とアヤが来ていた。

「おはよ〜」

「あ!アヤだ、おはよ〜」

「アヤちゃんおはよ〜」

「村長も来たんですか。珍しいですね。」

「いやぁ、対人戦もやって置かないと鈍ってしまうからね。今日はよろしく頼むよ」

「俺も久しぶりに戦って見たいです! 」

「もちろんユウとも戦うつもりさ」


よし、久しぶりに村長と戦える!

「あー、私とは戦いたがらないのに、なんでお父さんとは戦いたがるのよ! 」

「だってお前容赦ないじゃん。それに村長とはあんまりやってないし」

「えーー」

アヤは何回もやってるしなぁ。

それに村長と戦った方がためになるし。

「じゃあアヤは俺とやろうか」

「うー、絶対後でやるからね!ユウ! 」

と言い残してケン兄と戦えるスペースがある所まで歩いていった。

「いつも悪いね。」

と村長が苦笑しながら謝ってくる。

「いえ、別に友達ですから良いんですけど。」

と言うと村長は苦笑を深めて

「友達ね・・・」

と言った。

「ん?なんですか? 」

「いや、なんでもないよ。それよりこっちも始めようか」

なんて言ったんだ?まぁいいか。

「はい! 」




村長と俺は戦える位の広さがある所まで移動した。

他のみんなも各々PvPを始めているようだ。

リオ姉とマリの方は二人とも遠距離型なので、矢と火魔法が飛び交いう遠距離になっている。

リオ姉はマリから飛んでくる矢を杖で撃ち落とし、マリはリオ姉の魔法を俊敏な身のこなしで躱す。


あー、ヤバイなー。

マリのやつだんだんリオ姉に距離詰められてる。

リオ姉は近距離もめちゃくちゃ強いので、というか近距離の方が強いので近づかれたらマリじゃあどうしようもない。

近距離の方が強いのになんでリオ姉が魔法使いなのかと言うとただの趣味だ。

リオ姉ぇ、もう前衛で戦えよ・・・


もう一つのアヤとケン兄の戦いは・・・

うん、もうなんか言葉では表せんことになってる・・・

アヤが攻めで、ケン兄が防御しながら反撃してるぐらいしかわからん。



他の戦いを見ていると不意に目の前にウィンドウが開いた。


【村長さんから決闘申請が届いています。決闘を受けますか?】


【Yes/No】


顔を見上げると村長が苦笑しながらこちらを見ていた。

「そろそろ始めないかい? 」

「あっ!すいません! 」


ヤベェ、自分から頼んどいて待たせちまった。

慌てながらすぐに【Yes】を押す。


するとすぐに村長と俺の周りの不可視の壁が広がる。

目の前の村長はごく自然な動作で腰の剣を抜き放つ。

「・・・刀じゃないんですね? 」

「リアルで刀を使っているのにここでまで使うのは面白くないだろう? 」

全く、この人もやっぱりリオ姉と同じく趣味に生きる人だったか。

この人はホントにデスゲームだって分かってるんだろうか?


・・・人のこと言えないけど。

ちなみにアヤはちゃんと刀を使っている。


そんなことを考えていると視界のカウントダウンの数字が3を刻んだ。

3・・・2・・・1・・・開始!

俺と村長のPvPが始まった。



しかし始まっても村長は全く動く気配を見せない。

ただ悠然と剣を構えているだけだ。

「先手は譲るよ」

一見俺のことを舐めたような発言だが、実際に俺の実力を侮っているからではない。

村長はいつもこういう手合わせの時は先手を譲り、わざと俺に攻めさせて俺の弱点を的確に攻めてくる。


それは昔、村長に剣を習っていた頃と同じように、俺が成長するためにしてくれていることだ。

そういうことだから舐められているとも思わないし、実際実力が離れすぎているのでこれぐらいのハンデがなきゃやってられん。


俺はお言葉に甘えて、魔法の詠唱を始めた。

これは別に剣の修行じゃないんだ、魔法も含めた力がこの世界では強さになる。


視界に表示される詠唱時間を示すゲージが半分をきった瞬間、一気に駆け出す。

自分の出せる最高速の速さを剣に乗せて、村長の右側を叩きつけるように剣を振るう。


この攻撃にこれといった技術はないが、俺のレベルになればこの一撃だけでほとんどのプレイヤーが沈むだろう。

しかし、その攻撃を村長は容易に受け止めた。

俺の斬撃に合わせて、剣を斜めに滑らせ衝撃を減らしたのだろう。

だが、俺も止められるのは百も承知だ。

「《ウィンドスラッシュ》!」

ちょうど詠唱時間が終わった魔法を発動させる。


いけるか?

俺が発動した魔法を見た村長は驚く様子も無く、左足を引き、半身をずらしてかわした。

チッ、やっぱりこんな浅知恵じゃダメか。

鍔迫り合いの状態でこの後どうするかを考える。


ゾクッ

いきなり背筋に寒気が走る。

その一瞬の間でさっきまであった押し切られそうなほどの村長の剣からの圧力が無くなり、俺の剣は拮抗する力を無くして空を切る。


「!?」

次の瞬間、スキルの『第六感』が発動した。

咄嗟に空を切って地面にぶつかり跳ね上がった剣を、自分の右側にスライドさせると

ガンッという衝撃とともに横に吹き飛ばさて、地面に転がった。


「今ので一撃入ったと思ったんだけど。成長したね、ユウ」

俺が起き上がると村長はまた悠然とした構えのまま立っていた。


クソッ、最近戦って無かったから忘れてた!

あれは村長の剣術の流派にある技で、たしか空漠と言う技だ。


これは一つの技と言うより技術を指す言葉で、力を最大に込めた状態から、瞬時に力をゼロに抜く、またその逆を指す。

基本的に相手の裏をかくことを基本としている村長の剣術を表す技術の一つと言っていい。


俺は言ったんだ距離を起き、気を引き締め直して、また村長を倒す算段を考え始めようとすると、

「ユウ、君の今するべきことはそれじゃない。君の持ち味はその集中力だ。そこを間違えちゃいけない」



集中力



それは昔から村長に言われてることだ。

だが自分ではその集中力が良く分からない。

そりゃあ集中して動きが良くなることはあるが、それは誰にでもあることだし、特に自分が優れているとも思わない。

昔は俺に優れている所がないから言っている慰めじゃないかと思ったこともあるが、村長は慰めのために嘘を言うような人ではない。

村長は俺が考えている間も動かずに待っていてくれている。


パンッ

自分の両頬を手で叩く。

せっかく村長が言ってくれているんだ、やってみりゃあいいじゃないか。

グダグダ考えてたって仕方ない。

どうせ俺じゃあ村長を倒すような凄い策なんて思いつかないんだから、全力でやって全力でぶつかれ!


自分に言い聞かせ、深く息を吐く。

目をつむって意識を自分の中に向ける。

村長に勝つ方法を考えるな。

勝つということだけに集中すればいい。

自分の今までのゲームで鍛えてきた力と、このゲームで手に入れた力。


それを全部使い切る。



目を開けるとさっきまでと同じように、静かに剣を構えている村長が見える。

俺が倒す相手だ。

俺は最高速のスピードで駆け出す。

走り出す瞬間に見た村長の顔は心なしか笑っているような気がした。





あれから剣を何度ぶつけ合ったのか分からない。

始めてから何分たったかも分からない。

俺が村長に突っ込む。

それをいなされ、反撃される。

その反撃を『第六感』をフルに使い、ギリギリで躱し、距離を取る。

ずっとこの繰り返しだった。

でも最初とは全然違う。

見える世界が違う。

自分の感覚が研ぎ澄まされるのが分かる。

村長の動きが全て見える。

自分の体の動きがイメージと重なる。

思うのは勝つことだけ。


村長の攻撃を紙一重で回避し、一旦後ろに下がる。

さっきから一発も攻撃を与えられていない。

逆にこっちは直撃はしてないが、何度も攻撃がかすり、HPは残り5割をきった。

掠っているだけでこのダメージとは、今はあのひょろひょろ男の腕が疎ましい。


頭から雑念を振るう。

集中力が切れてきた。

次がたぶん最後だ。

目の前にいる男は最初と全く変わらず、自然な動作で剣を構え直した。


あぁ、この人はでかいな。


超えるにはでかすぎる。


超えるにはまだ足りない。


俺の最後の切り札をきる。


さっき覚えたばかりの新技だ。


体を沈めて力を溜める。


さっきの自分より少しでも速く、少しでも強くなるために。


地面を蹴って一気に最高速にのる。


距離が一気に縮まり、村長の間合いに入った。


今の俺の最高の技を出そう。


「《ボア・スラスト》」


胸元まで引いた剣を一気に突き出す。


俺の突き出した刀身が赤く光り、村長に向かって真っ直ぐに進む。


自分が動いていると言うのに村長の動きがよく見える。


村長は剣先を下げた。


俺の突きが届く瞬間、村長の剣が目で捉えられないスピードで走る。


村長の顔を見ると俺を褒めるように温かい笑みを浮かべていた。


俺の突きが村長に触れた瞬間俺の視界は闇に包まれる。


闇の中で浮かぶのは【You Lose】と言う負けを示す言葉だけだった。








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