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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-5章「王都からの帰還」

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第95話「帰路の中で見えた新しい力」

#第95話「帰路の中で見えた新しい力」


 王都を出発した。そして途中で“魔道具の墓場”に立ち寄り、俺たちはヴァルドリック領へ向けて進んでいた。

 王都への行きはまあ気楽だった。不安も多少はあったけど、王都への期待感、楽しみの方が圧倒的に勝っていた。


 でも帰りは、少し違う。胸の奥に重たい何かを抱えている。様々な問題に直面したからだ。

 辺境伯家の息子としての立場。そして魔道具の墓場で見た大量の残骸。考えるべき未来などに頭がパンクしそうになった。


 それでも――

 父さんの一人で思い悩む必要はないという言葉はありがたかった。

 俺には父さんも、母さんがいる。姉さんも、オルドも、更にはエレンさんもエリシアさんも助けてくれると言ってくれた。俺は一人じゃない。そう思うだけで、少しだけ楽になった。


 そして道中は、来る時と同じように各地で休憩を挟んだ。各地での食事は珍しいものがたくさん出てきて、おいしかった。

 名物の菓子なども興味深かった。可能であればお取り寄せしたいものもたくさんあったね。

 一緒に来た子供たちも楽しそうだ。引き取って良かったと本当に思う。


 重い話のあとだからこそ、こういう時間がありがたい。

 だけどその道中は、楽しいことばかりではなかった。それぞれの領境になると……王都に向かった時と同じように魔物の出現が増えたのだ。

 そして、その時に思わぬ光景を目にした。


「ギルベルト様、私も出ていいですか?」


 それはエリシアさんだった。孤児院のお姉さんであるエリシアさんが魔物討伐?俺にはちょっと意味が分からない。武器も持たず、どうやって戦うんだ?

 でも父さんは察するものがあったらしい、一瞬だけその様子を見て頷いた。エリシアさんの強い意志を感じたのだろう。でもどういうこと?


「許可する。ただし無理はするな」


「承知しました」


 エリシアさんは本当に大丈夫なのか?俺はかなり心配した。孤児院の子供達も心配だろう。

 そう思った次の瞬間。とんでもない光景を見た。

 それは凄い魔法だった。エリシアさんが何かを唱え、魔物の方を指差したと思ったら、風のようなものが舞い上がった。そしてその次の瞬間には魔物が次々と倒れていく。あっという間の完封劇。


 何が起きたのかさっぱり理解できなかった。

 でも魔物が次々と倒れたことは間違いのない事実だ。凄い、本当に鮮やかでびっくりした。

 一応、この世界では魔法が武器になるとは聞いていたが初めて見た光景。


 まさか、しかし、ここまで正確に、そしてここまで効率的に魔物を倒すとは。

 とんでもない腕前だ。それがこの世界では普通のことなのだろうか?いろいろな疑問が出てきた。

 俺は思わずつぶやいた。


「凄い……」


「エリシアだったらこのぐらいは当たり前だよ。学園で成績優秀って言っただろ」とエレンさん。


 いや、優秀とは聞いていたけど魔法で魔物を討伐するほどとは……全く思いも付かなかったよ。

 貴族邸で水を出したりしていたとは聞いていたけど、魔物の討伐も軽くこなすとは。本当にびっくりだ。

 そこで俺は帰ってきたエリシアさんに尋ねた。


「エリシアさん、凄いですね! それだけの実力があれば、王都でも十分仕事があったんじゃないですか?」


 エリシアさんは少し苦笑した。


「はい。たまに魔物の遠征討伐には参加していました。討伐はそれなりに収入になりますからね」


「でも、遠征に出れば孤児院を空けることになります」


「その両立が難しかったのです。一応、人を雇ったりして対応はしていましたけどね。そして、雇うにしても泊まり込みとまでになると人選が難しいので」


 なるほど。せっかく実力があっても、それを活かせる環境がなければ意味がない。適材適所という言葉通りだね。

 人を雇うのも難しい。

 言葉にするのは簡単だけど、中には悪い人もいるだろうし、良い人が見つかったとしても時期によっては住み込みもお願いするとなれば、かなり絞られてしまうだろう。


 でも――

 もしかしたら、ヴァルドリック領ならばエリシアさんは魔法使いの戦力として活躍できるかもしれないね。

 うちの領は魔物が多い。そして討伐は日常だ。領自体が魔物討伐による報酬で生活しているようなものでもある。

 そして、人はたくさんいるから子供たちの養育は問題ないだろう。エリシアさんは思う存分、魔法の実力を発揮することができる。


 これは……かなり心強いな。

 そして何より。

 姉さんが、尊敬の目でエリシアさんを見ていた。姉さんは魔力量B級、そして、聞けばエリシアさんもB級らしい。共に魔法の秀才クラスだ。魔法関連で気が合うかもしれないね。


 ということは――

 ヴァルドリック領には強力な魔法使いが二人。一気に戦力が充実していきそうだ。辺境伯家としては、これ以上ない朗報。姉さんもエリシアさんに魔法を教えてもらうことができるかもしれない。

 孤児院の子供達を引き取ったのは将来に向けての戦力になりそうだけど、エリシアさんは強力な即戦力になるかもしれない。

 これは期待しかないな。


 その後も数度の魔物討伐を経て、とうとうヴァルドリック領の門が見えた。ようやく帰ってきた。

 長いようで短かった王都滞在。いろいろなものを見て考えた。

 楽しいことはたくさんあった。でもそれ以上に重たい現実も見えてきた。本当に考えることは増えたよな。


 これからも考えないといけないのだろう。

 でも今は――少し休みたい。

 何も考えずに、魔道具に触りたい。できれば好きなことに没頭したい。そんな気持ちで、俺は領地の空気を大きく吸い込んだ。

 ……やっぱり、ここが落ち着く。できるだけ、この地でスローライフを楽しもう。

 王都での重たい話は、しばらく脇においてもいいよね?

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