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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-4章「合同魔力測定」

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第90話「帰還前夜の約束」

#第90話「帰還前夜の約束」


 とうとう王都から帰る日の前日になった。長かったような、短かったような日々だった。


 前半はとにかく忙しかった。王女様の件、孤児院の問題、魔力測定、公爵家の子息との顔合わせ……。

 後半は買い食いに観光。楽ではあったけれど、“魔道具の墓場”なんて言葉も聞いてしまい、考えることはむしろ増えた気がする。


 でもこれでもう終わりだ。明日は帰るだけ。ちょっと寂しいが仕方がないよね。

 そう思っていたら、父さんと母さんが声をかけてきた。


「最後に一つだけ、頼みごとがある」


 ……嫌な予感しかしない。

 もうイベントはないと言っていたよな?父さんは嘘つきだったのか?


 身構えて話を聞くと――


「帰る前に、王女殿下へ挨拶をして欲しい」


 ……それだけ?

 とんでもない面倒な話を想像していた俺は思わず拍子抜けした。

 それくらいなら問題ない。というか当たり前だろう。なんでそんな頼み事みたいに言うのだろう。不思議だ。


 そうして俺は父さんと母さんと一緒に待ち合わせの部屋へ向かった。そこには国王エドワード様、王妃カタリーナ様、そして王女ソフィア様がいた。


 まあ、帰りの挨拶ぐらいはしておくべきだろう。そう思っていたら――

 エドワード様がとんでもないことを言い出した。


「では、大人はこの辺で」


 次の瞬間、四人はすっと部屋を出ていった。

 ……また、やられた。


 二人きりとか無理ーー!

 前にもこんな展開があった気がする。挨拶って子供だけでする必要ある?何かおかしくない?

 それともこちらではこういうのが当たり前なのかな?ともかく、挨拶はしないと……でも何も言うことがないのだけど。


 そして、ソフィア様を見ると、どこか少し寂しそうな表情をしているようにも見える。

 俺と別れるのが寂しい……ということかな?


 いや、それはおそらく考えすぎだ。前世から数えて俺は彼女を作ったことがない。だからそれは勘違いに違いない。

 ここで変なことを言ったら、「ぷーくすくす、自意識過剰の馬鹿なの?」と笑われてしまうだろう。そして俺の、一生の心の傷になる。

 だから無難なところからいかないと……そうだ、まずはお礼だ。


「魔力測定の時は、かばってくれてありがとうございました」


 そう言うと、ソフィア様はふわっと笑った。


「当然です。レオンを馬鹿にするなんて、許されることではありませんから」


 その言い方が妙に頼もしい。王女様が良い子でほんと良かったよ。


「でも、レオンは明日には帰ってしまうのでしょう?」


「そうなりますね。残念ですが、仕方ありません」


「……また、会えますよね?」


 うん?

 この雰囲気、ちょっとおかしくないか?

 まるで恋人の別れみたいな空気だ。

 いやいや、落ち着け俺。また勘違いするところだったよ。危ない、危ない。


「まだいつになるか分かりませんが……また会えると思いますよ」


「はい。期待しています」


 ソフィア様はにっこり笑ってくれた。良かった。今のやり取りで間違ってなかったらしい。

 そして、少しだけ真剣な目になった。


「レオンは、ずっと私を支えてくれると言ってくれましたよね」


 ああ、魔力測定の時の話だ。それはもちろんだよね。王国民として王族を支えるのは当然のことであろう。


「もちろん、王国民として王女様を支えるのは当然です」


 そう答えると――

 ソフィア様が、ぷくっと頬を膨らませた。

 え?なに?今度は間違えた?何がどうなっているの?


「私は、個人的にも支えて欲しいのですが」


 ……え?

 まずい。これはどう返すのが正解なんだ?王国民的回答は失敗だったらしい。難しすぎる。


「もちろん……個人的にも、できるだけ頑張ります」


 なんとか絞り出した答え。

 すると、ソフィア様は満足そうに微笑んでくれた。今度はセーフなのかな?何だこりゃ?何かの攻略ゲームか何かなのか?俺には難しすぎるのだけど。

 そう思っていたらソフィア様が続けた。


「次に王都へ来るのは、いつになりますか?」


「分かりません。でも……できるだけ早く、何か用事を見つけてでも来たいと思います」


 自分で言って、ちょっと驚く。用事を見つけてでも、って何だ俺。何もないだろうに。


「私も頑張ります。レオンも頑張ってくださいね」


 そう言って、両手で俺の手をぎゅっと握ってきた。

 距離が近い。

 柔らかい手だ。

 ……どうしていいか分からない。


 でもこれ、個人的にこんなことして大丈夫なのか?婚約者レースから俺は外れているはずだよな?


 でも、この世界では友達でもこれくらい普通なのかもしれない。いや、本当に普通なのか?

 分からん。女の子との距離感が分からん。困ったぞ。とりあえず返事はしよう。


「はい。俺も頑張ります」


 そう答えるのが精一杯だった。しばらく、見つめ合っていたような気がする。

 そして最後にソフィア様が軽くハグしてきた。


「では、また、会えることを楽しみにしてますね」


 ハグ?いいのか?これ、本当に大丈夫か?こちらでは常識的な感じ?


「はい。俺も楽しみにしています」


 なんとか言葉を絞り出したけど、俺の頭の中はショートしっぱなしだ。女の子にハグされたのなんて初めてで何が正解なのかさっぱり分からない。距離感も掴めない。

 最後にとんでもない爆弾を抱えたような気がするよ。これ、本当に大丈夫なんだろうね?


***

 もちろん、大丈夫なはずはない。ソフィアの方はいたって冷静に見えるが「キャー、どさぐさまぎれにハグしちゃった!」と心の中で騒いでいたのだった。


 レオンは婚約者レースで圏外のはずだが、その運命はすでに絞られつつあるのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
レオンはまだ姉がいるので大丈夫ですが ソフィアは一人娘だとすると 色々と後継問題的にマズイのでは? まして今までは余命いくばくもない 状態だった訳ですし
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