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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-4章「合同魔力測定」

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第88話「魔道具の墓場」

#第88話「魔道具の墓場」


 串焼き屋のおっちゃんから聞いた「魔道具の墓場」と言う言葉。聞いたことのない言葉だったので俺はオルドにいろいろと質問をした。

 どうやら魔道具の発展の裏でいろいろな問題が起きているらしい。


 俺は魔道具が大好きだ。

 でも、その言葉に“墓場”なんて物騒な単語が付くとなるとさすがに穏やかではない。

 何とも残念だけど、その辺りも俺が今後、勉強していかなければいけない話なのだろう。そうやって、いろいろと考えた。

 その様子を見かねたのか、と串焼き屋のおっちゃんが話しかけてきた。


「オルド、すまんな。難しい話をしてしまったみたいだ」


「いえ、いつかは話さないといけないことです。ただ……坊ちゃんは魔道具が大好きなので」


「そうか。坊主は魔道具が好きなのか」


「うん、大好きだよ」


 それについては自信があるから即答だ。おっちゃんは少し笑った。


「なら頑張れ。”魔道具の墓場”の話は、オルドから少しずつ聞くといい」


 まあ、そうだな。産業の裏側なんてややこしそうだ。徐々に覚えればいいよね。俺にはまだ早いと思っておこう。


 そう思っていた時だった。公園の端に人だかりができている。プラカードのようなものを掲げて何かを訴えている。

 前世で言うところのデモ活動みたいなものだろう。

 前世でもたまに見かけた光景だけど、こちらで見るのは初めてなのでちょっと新鮮だ。

 プラカードには大きく書かれている。さっき覚えたばかりの言葉だ。


『魔道具の墓場問題を解決せよ!』


 オルドが小さくため息をついた。


「……ああいうことですわ」


 そして、オルドは少しずつ話してくれた。魔道具の発展によって、王国全体の産業構造は大きく変わったらしい。


 まず物価が高騰した。

 魔道具は凄い値段がする。でもそれを欲しい人はそれなりにいる。魔道具が徐々に浸透するに従って、連動して様々なものの値段が全般的に上がったらしい。

 それによって生活が苦しくなる人が多数出てきたのだ。


 他にも多くの産業が変わっていったらしい。もちろん、魔道具生産関連の仕事は爆発的に増えた。

 だが、それ以外の仕事は一気に厳しくなった。

 例えば魔石の需要が跳ね上がったことで他国からの輸入も始まった。それにより魔石の値段は下がり、国内で魔石を産出していたうちの領のようなところは一気に苦しくなったのだ。他にも多数の産業が苦しくなっている。

 一方で公爵家二家はその流れにうまく乗って発展し力を付けた。この辺りは何度か聞いた話だったけど”魔道具の墓場”という言葉を聞いた後だと、感じ方が少し違う。


「もちろん、俺のような串焼き屋も楽ではないわな」


 とおじさんが苦笑した。


「それでも食べ物はいつでも必需品だからな。なんとかやれる」


 確かに。食べ物がなければ人は生きられない。そこを削るのは困難だろう。だけど生活用品を作る店、手工業の職人などは苦しくなっていったらしい。

 どうしたって便利な魔道具が選ばれる。そうなると他は削られる。

 更には魔道具生産も生産過多になり、小さなところは淘汰された。そうやって数え上げたらきりがないぐらいの問題が起きた。


「他にも、生活魔法で生計を立てていた魔法使いは……かなり淘汰されたな」


 その言葉に、胸がちくりと痛んだ。孤児院のお姉さんもそんなことを言っていたような気がする。

 もともとは魔法使いとして働いていたと聞いた。貴族の元で働いていたけど、クビになったみたいな話だったと思う。

 魔道具全盛の時代になって、お姉さんも居場所を失ったのかもしれない。


 俺は魔道具が好きだ。でも、その魔道具によって誰かの居場所、仕事が奪われているとしたら?それはさすがに、ちょっと悲しいな。


 俺の知識をどう生かすかを考えるべきなのかもしれない。まあ、今のまま趣味のままで終わらせるのが一番、楽なのだろうけどね。


「それに……」


 と、おじさんが声を潜めた。


「あの連中も、純粋に抗議している人間ばかりじゃない」


 抗議活動を手伝えばお金が出ることもあるらしい。それで無関係な人間が混じることも多いとのことだ。


「なんでそんなことを?」


「王城近くであんなことをやられたら嫌だろう。ああいった活動をして、国や領主そして商会などに補助金を出させるのさ。”生活苦の住民を救え”みたいな騒ぎをして、それを大きくすれば金になることもある」


 うわっ。

 嫌な話だ。それは確かに前世でもあった。弱者を助けると言いながら、行政から金を引き出す人たち。

 確か、補助金ビジネスと言われることもあったな。お金をもらって弱いものを助けるのかと思いきや、その大部分を自分の懐に入れている人もいたと聞く。


 善意の活動だと思って手伝いをした人が、抗議活動代表の生活を聞いて呆れて辞めたと怒っていた。国から補助金もらって、その一部を懐に入れてタワマンに住み、ポルシェに乗っていたらしい。

 補助金が本当に困っている人にきちんと回らずに誰かの懐に入るおかしな構造。しかも貧しい人を救えとかの講演をして更に稼いでいたらしい。もう呆れるしかない。


 前世でもひどい話があったけど、こっちの世界でも似たようなことがあるのか。俺はやや複雑な気持ちで、抗議の人達を眺めた。

 魔道具は便利だ。でも、便利なだけでは済まない。

 発展は、誰かの犠牲の上に成り立つことが多い。そして、その犠牲者を利用して偽善で金を集めるような人間もいる。


 それをどうするか。

 辺境伯も貴族だ。俺は将来的には考えないといけないのかもしれない。もしかしたら公爵家の子息の二人は既にその辺りの問題も考えているのかも。

 そして領が違うと魔道具関連で彼らと対立することも出てくるのかもしれないな。仲良くなった後だけにちょっと複雑だ。

 俺は……どうやら魔道具が好きというだけでは済みそうにない。

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