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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-4章「合同魔力測定」

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第87話「再びの買い食いと気になる言葉」

#第87話「再びの買い食いと気になる言葉」


 王都にやってきてそれなりに忙しかった。王女様の寝室への侵入、孤児院への訪問、夜のパーティー、メインの魔力測定、そして公爵家の子息との顔合わせ。ほんの数日でいろいろなことがあった。


 ともかく全てのイベントが終わったはずだ。そして、もう無茶ぶりはごめんだ。本当に終わったのかと、何度も父さんと母さんに確認した。


「もうない。これで全部だ。あとは自由にしていい」


 父さんは断言してくれた。これでほっと一安心。でも本当だよな? 本当にもう何もないな?とくに、こうやって安心した後が怖い。急に何か言ってきたりするからな。


 となると、あと数日後にはヴァルドリック領へ帰ることになるだけだ。そうだ、あともう一つ大きなイベントがあった。

 孤児院のお姉さんと子供達と一緒に帰るんだった。それはそれで楽しみだよね。

 今後は友達も増えそうな予感がする。嬉しいね。


 ともかく後は帰るだけ。あっという間だったような妙に濃かったような。ちょっと複雑な心境だ。

 まだ楽しみたい気持ちもある。せっかくの王都だ、このまま帰るのはもったいない。残りの数日を最大限に生かしたいよな。


 ということで俺は再び買い食いをしたいと父さんと母さんに直訴した。すると途端に嫌な顔をする二人。

 どうやら俺が何かをやらかすと思っているのだろう。さすがにそんなことはもうない。心配しすぎだ。


「分かった。ならばオルド、付いていってくれ」


 やはり信頼されていないような気がするよ、とほほ。でもいいや、オルドがいれば俺も安心。


「オルド、一緒に行こうよ!いろいろ食べよう」


「分かりましたよ。レオン坊ちゃん、一緒に行きましょう」


 父さんと母さんを見るとほっとしているようだ。どうやら問題ないらしい。良かったよ。この前は結局、あまり食べられなかったからね。


 そうして再び城近くの公園へ行くことに。今度は姉さんも一緒でオルドも含めて三人。ようやく買い食いが始まるぞ!


 ただし条件が付いた。オルドがおもむろに二本の指を付き出して言ってきた。


「食べ物は二つまで。あまり食べると、夕食が食べれなくなりますからね」


 なんと、厳しい。でも仕方がないか。オルドが言うことはもっともだ。とにかく買い食いを楽しもう。

 まず目に入ったのは、ソーセージのような肉料理。

 炭火で焼かれ、じゅうじゅう音を立てている。おいしそう。姉さんも興味深く見ている。


「これにする!」


 みんなで注文。俺と姉さんは1つを二人で分けることに。オルドが、そのソーセージを丁寧に折ってくれた。プチッという音と共に肉汁が飛び散る。かなりおいしそうだ。


 今日はこの前みたいに周囲にじっと見てくる子供もいない。ゆっくり食べられそうだ。

 近くのベンチでゆっくりと座って三人で一緒に食べた。


 一口、がぶり……なにこれ、めちゃくちゃうまいじゃないですか!

 肉汁が溢れ、香辛料の香りが鼻に抜ける。


「おいしい!」


 姉さんも目を輝かせて「おいしい!」と言っている。

 オルドはというと、おいしいとは言いながらも、その味を分析しているようだ。


「塩だけではないですね……この旨味は何でしょう」


 さすが料理人。ただ食べるだけでは終わらないようだ。オルドの味の探求心は素晴らしい。


「領でも作ってくれたら嬉しいな」


「もちろん、なんとか研究しますわ」


 即答してくれた。

 うん、これだ。オルドと一緒に来ると食の再現の可能性が生まれるからいいね。

 そして俺は次にスープに目を付けた。


「これにしよう! これは食べ物に入らないよね?」


 と聞くと、オルドが驚いた顔をした。


「……仕方ありませんね」


 よし、勝った。

 肉団子入りだが、これはスープだ。今だけは食べ物ではないのだ。そして、このスープも濃厚で美味しい。姉さんも満足そうに飲んでいる。

 一方でオルドはやはり首をひねっている。


「出汁か、調味料か……何か工夫がありますね。これまた興味深い」


 うんうん、オルドはこうやって研究してくれるといい。そして俺はオルドの作ったものをおいしく食べる。これで完璧だ。


 それにしても王都の屋台はやはり凄い。いろいろな食べ物がある。そして最後に串焼き屋へ。

 この前お世話になった店だ。おまけもくれた、やさしいおっちゃんを発見。見た目とは違うのだ。


「おじさん、この前はおまけをありがとう!」


「おお、この前の坊主か!」


 そう俺が言って近づくと、オルドが小さく呟いた。


「先輩……ですか?」


 え、もしかして知り合いなの?

 店主のおじさんがにやりと笑った。


「おう、オルドじゃないか。久しぶりだな」


 どうやら二人は昔の仕事仲間らしい。一緒に魔道具生産の現場で働いていたという。


「今は串焼き屋を?」


「まあな。魔道具の仕事は完全に辞めた。いろいろな仕事をして今はこれをやっている。俺に向いているみたいでな」


 おじさんは肩をすくめた。


「やっぱり俺も“魔道具の墓場”には勝てなかったよ」


 ……魔道具の墓場?

 なんだそれ。横を見ると、オルドがばつの悪そうな顔をしている。

 明らかに触れてはいけないワードの空気だ。どういう意味なのだろう、難しい話なのかな?

 でも俺は勇気をもってオルドに尋ねた。


「オルド、“魔道具の墓場“って何?」


「うーん。坊ちゃんにはまだ難しい話だと思います」


「それでも聞きたい!」


 オルドは困ったような顔をした。そして簡単に説明してくれた。


「王都は魔道具生産で急激に発展したのは坊ちゃんも知っていますよね。その陰でいろいろな問題が起きているんですわ。それも1つではありません」


 なるほど。発展の裏に様々な問題があると。

 でも、それは当然かもしれない。前世でも産業が発展することで様々な問題が起きた。発展のためには多少の犠牲も必要だけど、犠牲になる側はたまったものではないんだよね。


 王都の華やかさの裏に、何かあるのだろうか。串焼きの香ばしい匂いの中、俺はいろいろと考えていた。

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