第84話「魔力ランク変化の原因」
#第84話「魔力ランク変化の原因」
国王エドワードは魔力検査官に対して改ざんを行ったのではないかと追及した。その結果、魔力検査官はあっさりと白状した。
ザクセン公爵家当主フリッツの追求による改ざんとのことだ。これについてはまあ予想通り。そして、権力のある人間からの要求に対応するのはある程度は仕方がない側面はある。
そこで王は「やむを得ず改ざんするならば必ず報告せよ。そうしないと罪に問う」と言及し魔力検査官を許した。本来は改ざんなどあってはならないが、現状では警告が限界であった。
その後は魔力検査官を退出させた。そしてエドワードは部屋に残ったソフィアの専属医と宮廷魔道具師のエレンの二人に確認した。
今回の結果についてどう考えるか、だ。常識的に見れば魔力が上がることはあり得ない。しかし現実にはその結果が出てしまっている。魔力検査装置の故障でもないと思われる。
王の問いに、専属医、宮廷魔道具師のエレンは少し考えを巡らせた。やがて専属医が答えた。
「まず大前提ですが、魔力量が変化するという話は聞いたことがありません。稀にE級の測定誤差でD級になることはありますが、それは魔力量が少ないからの話……元がD級以上で変動するのは考えにくいところです」
エレンも頷く。
「基本的に同意見です。高位の魔力量が変わるなど、聞いたことがありません」
「一応は噂話によると、隣の大陸にあるセレスティア王国という国にてそういった事例がいくつかあるという話も聞きましたが……そもそもが確証のある話ではありません。かなり遠くの国なので確認もできません」
沈黙が落ちた。おそらくは魔力量が年齢と共に変わるなんて話はあり得ない。
では何故ヴァルドリック家の息女イリスの魔力量がA級になったのか?
やがて専属医が思い出したように口を開いた。
「ただ……ひとつ可能性があるとすれば」
「なんだ、その可能性とは?」
「レオン殿の魔道具です」
エドワードの眉がわずかに動いた。体内の魔力を吸引する魔道具のことだ。ソフィアはその魔道具を使って体調が劇的に改善した。
そして、レオンの姉イリスもその魔道具を使っていたという話があったなと思い出した。料理人オルドの説明によるとやはり魔力の多いイリスで使って体調が良くなったからソフィアにも試したという話だった。
あの奇妙な発明品がここでも出てくるのか?
エドワードが考えを巡らせていると専属医が続けた。
「一つ目の仮説は、先日ソフィア様の体調が改善した時に話したように、その魔道具により体が魔力の流れを意識するようになった可能性です」
「本来はB級相当であった魔力量が、流れの改善によりA級相当に見えた……という解釈はできるかもしれません。すなわち魔力量自体は変わらずとも、その魔力放出効率が良くなったという仮説になります」
そして専属医は二つ目の仮説について説明を続けた。
「そして、もう一つの仮説ですが……一定割合で魔力を吸い続けることで、魔力を生み出す器官が鍛えられた可能性です。とは言え、その魔力を生み出す器官さえも現代医療では分かってないので断定的なことは言えません。こちらは魔力量そのものが増えたという仮説になります」
「例えばですが、人はゆっくりでも長距離を走れば持久力が増します。心臓や肺などの体内器官が成長します。走るための筋肉も負荷によって成長します。それによって走る速度が速くなり、距離も増えます」
「同様に魔力吸引装置で負荷を与え続けたことで、人間の体に何らかの成長を促した可能性があります。もちろん完全に同一視はできませんが、似た原理が働いたのかもしれません」
エレンも腕を組み、その点について言及した。
「その可能性はありそうですね。どちらの仮説も有力でしょう」
「もちろん現時点で断定はできません。しかし、もし再現可能であれば……」
「国内の魔法使い全体の底上げが可能かもしれません」
王国において魔法使いは、有力な戦力のうちの一つだ。しかし一人の魔力ランク変化ならそこまで大きな戦力の変化にはならない。もちろんS級やA級がいれば強いが、ある程度は対応ができる話。
しかしながら、全体が底上げされるなら話は全く別だ。
A級が何人も出てきたら、それこそ軍事バランスが一変する。
それは国力に直結する。
現時点では魔力が増えた事例は隣の大陸の噂話程度だ。
しかしながら、そういった手法が確立され、仮に近隣諸国が採用すれば自国はひとたまりもないだろう。
その確認は急務だった。
エドワードは椅子にもたれかかった。
「……それにしても、またレオンか」
思わず漏れた言葉。夜に忍び込むという無茶をして娘のソフィアを救った少年。その立役者となる魔道具を生み出した少年でもある。
そして今回の魔力量の変化や改ざん騒動の中心。
ありがたい存在ではある。だが同時に、処理すべき案件を次々と生む。しかも剣聖を引き寄せるという奇妙な話まである。
偶然にしては出来すぎているような気もする。
(目を離せぬな。まだまだ何かを引き起こす可能性がある)
王の中で、レオンへの注目度はさらに上がった。
***
一方その頃。当のレオンはというと。
前日に大泣きした反動からか、朝から妙にすっきりしていた。
「おかわり!」
もりもりと食事を食べている。両親も姉も安堵の表情になっていた。昨日の大泣きは何だったのかと思うほどである。
もちろん本人は知らない。
王城で自分の話題が飛び交い、国家規模の議題になっていることなど。
そして――
自分のスローライフが、じわじわと遠ざかりつつあることも。まだ、想像すらしていなかった
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補足)セレスティア王国?どこかで聞いたことがあるような……と思った人は通です、素晴らしい。ただし当面は運命を交差させる予定は全くありません。
もしかしたら成年編あたりで何か出てくるかも?
正解)正解はこちら。別途作っている小説のとある国です。作者の作品の通の方はおめでとうございます???
(転生貧乏貴族~魔力微力チート無しからの成り上がり!~)




