↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-4章「合同魔力測定」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
83/137

第82話「親として」

#第82話「親として」


 ――話は、レオンの魔力測定の瞬間に遡る。

 ギルベルトは腕を組みながらも、内心では祈るような気持ちでいた。それは隣に立つセレナも同じだった。

 子供の魔力測定は、期待と不安が入り混じるものだ。


 高すぎても困る。そして逆に低すぎても心配だ。二人ともに、普通の貴族のD級ぐらいがいいと思っていた。


 魔力量としては目立ちすぎず、かといって侮られもしない。そのくらいがちょうどいいのだ。


 だが――その期待は裏切られた。


「測定結果はE級です!」


 その言葉を聞いた瞬間、会場が一瞬静まった。

 E級、それは貴族としては下位の魔力量、そしてほぼ平民クラスである。

 だが、ギルベルトは特に落胆していなかった。


(別にいい、何ら問題ない)


 レオンには魔力など関係ない才能がある。そして本人も低い方がいいと言っていたぐらいだ。暖かく見守ればいいだろうそう考えていた。

 レオンには良いところがたくさんある。特に魔道具に関連する柔軟な発想や行動力、常識に囚われない思考。そして人を惹きつける何か。

 常人にはない良いところがたくさんあるのだ。魔力が低いことなど、取るに足らないことだ。


 そう受け入れているつもりだった。

 だが……周囲の視線がそれを許さなかった。

 魔力がE級ということで、さげすむような目や憐れむような目。レオンのことを何も知らない人間たちが異様な目で見ている。


 思わず怒鳴りつけたくなった。だが、ここは公の場だ。感情で簡単に動くわけにはいかない。

 ギルベルトは拳を握りしめ歯を食いしばって耐えた。


 しかしレオンはそんな状況で大粒の涙をこぼし始めた。これはさすがにまずい、そう思った、その時だった。


「静まりなさい」


 王女ソフィアの声が響いた。そしてソフィアはレオンの手を取って周りの声を静めたのだ。

 まさか三歳の少女に助けられるとは……。

 明らかに場の空気を変えたのは、王女の機転だった。


(さすが王家の血か……)


 ギルベルトは内心で舌を巻いた。

 だが同時に思った。本来は自分が打開すべきだったのではないか、と。父として、息子を守るべき立場だった。

 王女に先を越された自分が情けない、そう思っていた。


 ――いや、それよりも。

 問題はレオンだ。まだ泣き続けている。

 そして娘のイリスも何故か泣きだした。


「ごめんね……レオン……」


 どうやらイリスは、自分の魔力が高いせいで弟の魔力が低くなったとでも思っているらしい。もしかしたら、そういった声が周りから聞こえてきたのかもしれない。

 そんなことはあるはずがないとは思う。だが魔力の仕組みは完全には解明されていない、現実のところは分からない。


 とにかく、このままでは収拾がつかない。

 ギルベルトは小声でセレナに相談した。


「……退出しよう」


 セレナも静かに頷いた。もちろん他の貴族の子息の測定も気になる。だがそれよりも、子供たちの心の方がはるかに大事だ。

 他の子息の結果など後から聞けばいい。そう判断し退出することにした。


 しかし自室に戻っても、状況は落ち着かなかった。

 イリスはぐすぐすと泣きながらレオンの頭を撫でながら「ごめんね、ごめんね」と謝り続ける。

 当のレオンは反応が薄い、何を考えているのかも分かりづらい状況、どこか虚ろだ。


「レオン? 大丈夫か?」


 何度か話しかける。 だが、ぼんやりとした返事しか返ってこない。


「うん、何?」


 食事の時間になっても、あまり手が進まない。

 いつもなら大好きな料理に目を輝かせるはずなのに。


(……どうしたものか)


 親として失格としか言えない。これと言って励ましの言葉が思い付かない。

 魔力は関係ない、と言えば余計に意識させてしまう気がする。何が正解なのかよく分からない。


「ギル、大丈夫よ。時間が解決するわ」


 セレナは静かに言った。そんなものだろうか?


「レオンは強い子よ。問題ないからそんなに心配しないで」


 だが、ギルベルトは心配で眠れなかった。夜の間も何度も様子を見に行く。

 レオンは眠っている。今は平穏だが明日は大丈夫なのだろうか?心配は尽きなかった。


 そして迎えた翌朝。

 起き上がってきたレオンは――

 昨日とはまるで別人のようだった。顔色はすっきりしている。そうして、ギルベルトが戸惑っているうちに、隣のセレナがレオンに質問した。


「大丈夫、レオン?」


「大丈夫だよ。何かあった?」とレオンはきょとんとしている。


 心配していたのが馬鹿みたいにレオンは元気だ。いつものレオンに見える。そこでギルベルトも質問した。


「本当に大丈夫か?」


「うん。一晩寝たら、すっきりしたよ」とレオン。


 やはり、いつもの声だ。何も問題なさそうだ。会話も普通だ、ギルベルトは完全に拍子抜けした。

 そして、セレナが小さく笑って言ってきた。


「ほらね」


「大丈夫って言ったでしょう?」


「ああ……そうだな」


 胸の奥の重石が、ようやく外れた気がした。さらにレオンだけでなく、イリスも元気を取り戻している。


「今後は、レオンは私が守るから! 剣も魔法も頑張る!」


 やたらと張り切っている、その姿に思わず苦笑してしまった。

 ともかく……二人ともやさしい良い子だ。そして、レオンもイリスも、日に日にたくましく成長している。昨日の涙も無駄ではなかったようだ。


 そしてギルベルトは少し反省した。自分は心配しすぎなのかもしれない。過保護すぎるのかもしれない。

 だが――


(本当に、いい子供たちだな)


 心からそう、思っていた。

 魔力がどうであれ関係ない。自分は、かけがえのない素晴らしい宝を授かったのだ。本当に恵まれている。

 ギルベルトは静かに、そう幸せを噛み締めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。