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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-4章「合同魔力測定」

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第77話「一つ目の改ざん」

#第77話「一つ目の改ざん」


 合同魔力測定は三歳児が行うのが基本となっている。だが四歳以上の再測定希望者も一部おり、それらは先に行われる。

 もっとも、再測定は基本的に前回と同じ結果しか出ない。

 ゆえに盛り上がりには欠ける。

 やはり本命は三歳児――どのような結果なのかさっぱり分からない新規測定の方だ。


 とはいえ、例外があった。

 五歳になるレオンの姉イリス、彼女はB級ランク。年に一人出るかどうかの逸材だ。再測定とは言え注目が集まった。会場の雰囲気はがらりと変わった。


 そして――

 イリスが測定台に手を置いた瞬間、魔力測定装置が異様な光を放った。


 測定会場に何度か足を運んでいる人にはすぐに分かった。これは凄い、B級より上の光なのでは?

 そして会場が静まり返った。魔力検査官がその光を確認し、喉を鳴らし結果を発表した。


「測定の結果――今回はA級です!」


 どよめきが爆発した。


 A級だと!?それは数年に一人の天才とされる。その測定結果を見ることもかなり珍しい。そのために大騒ぎとなった。

 だが同時に疑問も渦巻いた。


「おかしい、前回の結果はB級だったはずでは……?」


 元がE級の再測定でD級になる程度の誤差は過去にも何度かあった。魔力が少ないだけに結果の誤差も発生しやすいのだ。しかし元がD級からC級となると、結果が覆ることはほとんどない。

 そして今回のB級からA級への結果の変化――それはもう前例がない。


 本当にA級なのか?

 そしてもう一つの問題もある。A級ともなれば体調不良の懸念がある。十歳までに半数が亡くなると言われているからだ。


 しかし当のイリスはきょとんとしている。そして元気そうにも見える。体調を崩しているようにはとても見えない。

 周りがざわついていても本人にはあまり関係がなかった。


「あれ? 今回はA級なの? 前はB級だったよね?」


 その程度の反応だった。

 自分が会場を揺らしているなど、まるで理解していない。そこまで自分の魔力量について意識していなかったということもあるが、他人の目をあまり気にしないのがイリスの特徴でもある。

 しかし、その時に、ざわめきを切り裂くように大きな声が上がった。


「どういうことだ? 絶対におかしいだろう!」


 それはザクセン公爵家の当主フリッツだった。


「B級がA級になるなどあり得んだろう。装置の不具合ではないのか?」


 確かにその可能性があるのでは?周囲の貴族たちが息をのんだ。魔道具生産でもトップを争う公爵家の言及だっただけにその言葉の信憑性も高かった。


 ただ現実にはフリッツは辺境伯家の娘がB級というだけでも面白くなかったという事情もある。

 しかも、それが今回はその上のA級。とてもではないが納得できなかったのだ。これでは自分の息子が多少良い魔力量の結果が出ても霞んでしまう。


 理屈半分、嫉妬半分という状態ではあるがやや冷静さを欠いたままにフリッツは魔力検査官と協議を続けた。

 魔力検査官は冷や汗を流しながら装置を再確認する。しかし全く問題はない。

 そのままフリッツと短い協議が行われた。


 周囲には聞こえない声で、しかし確実にフリッツからの苛立ちと圧力が増していく……。

 そして――

 再び壇上に戻った検査官が告げた。


「……失礼いたしました。再確認の結果、今回もB級でした。お騒がせして申し訳ございません」


 会場に安堵の空気が流れた。


「やはりな」


「装置の誤作動か」


「いや、魔力検査官の確認ミスだろう」


 誰もその結果を深くは追及しない。さすがにA級はあり得ないだろうと思っている貴族が多かったからだ。

 しかし本来の結果は間違いなくA級だった。だがそれは、その場でB級に書き換えられた。本来はあってはならぬ測定結果の改ざんである。


 公爵家の影響力。

 辺境伯家の立場。

 そして“均衡”を崩さないための大人の判断などが混ざり合った結果だ。

 ただし国王はその状況を冷ややかに見ていた。そして後から魔力検査官を問い詰めようと心に決めていた。


 国王以外にも矛盾を感じた者はわずかにはいた。しかしそれを指摘する人間はいない。

 その理由はいくつかある。やはり公爵家が交わっての協議に異を唱えるなどできないからだ。末端貴族が公爵家に意見でもしようものなら潰されかねない。

 そしてB級であろうとA級であろうと天才であることに変わりはないという事情もある。どちらにしろ雲の上の存在なのだ。

 それが変わったところで評価が変わることもないというのが周りの判断だった。


 こうしてざわつきを残したまま、四歳以上の測定は終了した。

 そして――

 いよいよ本命。

 三歳児の魔力測定が始まる。


 最初に名を呼ばれたのは王女だ。基本的には位が高い順に測定が進んでいくことになる。


「王女ソフィア殿下の測定です」


 会場の空気が、再び張り詰めた。王女様の魔力量はいかほどなのか?誰もが興味と関心を持ってその結果発表を心待ちにしていた。


 当然のことながらA級という魔力測定の結果を予測できる人間はこの場にはほとんどいない。

 それを知っているのは国王、公爵家、そして辺境伯だけである。国王としてはA級という結果発表に、ざわつきが大きくなるようであれば鎮めようと心構えをしていた。

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