第76話「合同魔力測定スタート」
#第76話「合同魔力測定スタート」
様々な思惑が渦巻いたパーティーの翌日、ついに合同魔力測定の日となった。
測定を控えたレオンと言えば……なんとも暢気に構えていた。
「測定ではさすがに緊張する場面はないだろう。測定して、結果を聞いてそれで終わりだよね。あとは早く部屋に戻っておいしいものを食べたいな」その程度の軽い気持ちだった。
だが……三歳児の合同魔力測定の現実はそう単純ではない。大人たちは子供の魔力量を見て、どうしても一定の評価をしてしまう。
もちろん国王が念押ししたように「魔力量だけで人を判断するのは間違いだ」という考えもある。一応はそれが前面に打ち出されている。
だが実際には、魔力量を基準に子供を判断する者が多いのが事実だった。
無自覚な大人というのは、どこの世界にもいるものだ。それはレオンのいた前世の日本でも同じ。
「〇〇君は運動神経が良くてすごいね」
悪意なく子供に対してそう言う。だが、現実にはそれで傷付く子供もいる。
本来なら他人の子供と比較する必要などない。自分の子供の良いところを探して褒めるべきだろう。しかし大人は無自覚に他の子供の良いところばかりを見て比較する。
逆に、自分の子供ばかりを特別視する親もいる。それも度が過ぎれば、子供にとっては重圧になる。できて当たり前と思われるのもつらいものだ。
そして、この世界において魔力量はランクで分けられる非常に判断のしやすい能力のバロメーターだった。
高ければ羨望のまなざしをうける。逆に低ければ憐みの目で見られることも多い。ひどい人間になると、魔力量が低いとして嘲笑するものさえいる。子供の魔力量を見て失望する親もいる。
レオンはそこまで深く考えておらず暢気に構えていたが、現実には会場に漂う緊張感がそれを物語っていた。
以前は三歳児の子息がいる親のみの参加のはずだったが、今は他の貴族も会場にいる。
やはり他の貴族の子息の魔力量は気になるのだ。
まずは自分の子供と他の子息の比較に始まる。そして、その後は自分の派閥の子息と、他派閥の子息の魔力量を比較したりする。
この辺りが王の危惧するところであった。魔力量の判定結果は分かりやすいだけに、どうしても比較の対象にされがちだ。
子供に対する差別にもなり得るのだが無頓着な大人は多い。
そんな雰囲気の中、合同魔力測定が開始された。
最初の測定は四歳以上の再測定からだ。メインの三歳児の測定はその後になる。
四歳以上は再測定とは言っても、基本的に三歳で測定した値と変わることはない。よって念のための確認、あるいは――自慢の場である。
実際、再測定を希望するのはD級、C級の子息が多い。
この世界の魔力階級は以下の通りだ。
S級:魔力超級(十年に一人の超天才。ただし九割は若くして亡くなる)
A級:魔力特級(数年に一人の天才。ただし半数近くは若くして亡くなる)
B級:魔力極大(一年に一人級の逸材。幼少期は病弱が多い)
C級:魔力大(秀才クラス)
D級:魔力中(貴族上位~標準)
E級:魔力小(貴族下位~平民標準)
F級:魔力極小(平民下位、ぎりぎり魔法使える)
レオンの姉イリスも再測定を行う。二年前、彼女は唯一のB級だった。
さすが辺境伯家の娘と大きな話題になったものだ。
そして、昨年は再測定はしていない。とは言え魔力量は変わらないと言われているので今でもおそらくはB級、すなわち国の中でのトップクラスであることは疑いようがない。
ギルベルトとしては息子のレオンが測定するからそのついでにと思ってイリスも再測定させることにしたのだが、貴族の中にはやっかむものもいた。
”B級であることを再び自慢しようというのか?”といった声も聞かれたのだ。
ヴァルドリック辺境伯家が以前のように力があれば、そのような声は自然とかき消されていっただろうが現状ではそういった声が様々なところで出てしまっている。
そうして四歳以上の何人もの子供が魔力量を測定していった。魔力量が多い場合は魔力測定装置から見える光が多い。
そのため集まっている貴族からも、ある程度はその光の量で推測できた。光が強い場合は大きな歓声が上がる。その娯楽性も問題の1つではあるのだが……。
魔力測定官は前回の測定結果を読み上げた。そして次に子供に魔力測定装置に手を置いてもらい測定、装置から出てくる光の量を確認し今回の判定結果を再び読み上げていった。
「前回はC級でした」
「では測定を行います。測定の結果……今回もC級です」
「前回はD級でした」
「では測定を行います。測定の結果……今回もD級です」
そんな繰り返しのような発表が続く。
四歳児以上の測定については、見ている貴族からそこまで大きな反応はない。
まあそれも当然だ。基本的に魔力量は変わらない。四歳以上になっても三歳児の時の測定と変わることはほとんどない。
やはり本命は三歳児。前情報がない分、予想や噂そして憶測などが飛び交うのだ。
ただしその中にも例外はある。イリスの測定を迎えたからだ。ざわめきが広がった。
イリスは二年前の測定ではB級とされていた。昨年、一昨年の測定で唯一のB級だ。再測定とは言え注目の的だ。
会場の空気が急に引き締まった。そして魔力検査官が読み上げる。
「前回はB級でした」
そしてイリスが手を置き、魔力測定官が測定すると魔力測定装置からまばゆい光が漏れた。
それは会場に集まっている人からも明らかに異常な光に見えた。そして魔力検査官から結果が発表された。
「では測定を行います。測定の結果……」
測定結果を聞いた貴族はびっくりした。そこで前例のない問題が起きたのだ。




