第74話「合同魔力測定前夜パーティー」
#第74話「合同魔力測定前夜パーティー」
孤児院の子供たちをヴァルドリック領で引き取ることが決まった。レオンとしては一安心の状況だ。
しかしながら、レオンは安心だけしているわけにはいかない。夜にはパーティーがあるのですぐに帰って準備する必要がある。
何故パーティーがあるのか?
翌日は合同魔力測定なので、それを前にした貴族子息たちの顔合わせの目的の集まりという意味合いだ。
いきなり明日の測定本番で顔を合わせるより、前日に軽く会っておいたほうが気が楽だろうという大人たちの配慮で、前日夜のパーティーが通例となっている。
また、このパーティーには実際に測定を受ける三歳児だけでなく、近い世代の子供たちも参加している。
純粋な同年齢帯の貴族子息の“顔繋ぎ”の意味合いも強い。
ちなみにレオンの姉、イリスもパーティーに参加する。また、彼女はすでに五歳だが、合同魔力測定にも参加する。
合同魔力測定は基本的に三歳が対象だが、それ以上の年代の人が再測定するのも特に問題はない。
もちろん三歳児が優先で、その前後のどちらか邪魔にならない時間帯での測定にはなる。たいていは三歳児測定の前になる。今回もそうなる予定だ。
ちなみに三歳で測定した魔力ランクが変わることはまずない。基本的に生涯において変わらないとされている。だから念のための再測定という意味合いになる。
よってあまり注目もされない。メインの前の前菜のようなものだ。
そしてレオンは……。
パーティーへの参加ということでやや緊張していた。いや、かなり緊張していると言っていいだろう。彼はこちらで生まれてからパーティーなんて初めてなのだ。
いや、今世だけではない。前世を含めても、彼にはパーティーに参加した記憶はほとんどない。
しかも、こちらで生まれてから同年代の貴族子息と正式に会うのはこれが初めて。王女ソフィアに昨日会ったぐらいで他の子息は全く知らない。
そのためレオンはとにかく緊張した。
初対面の同年齢の子息たちとうまくコミュニケーションを取れるだろうか?前世でボッチだった彼には、かなりつらい状況であった。
レオンは緊張しつつ父と母と共にパーティーに出席。
まずは会場に入り、きらびやかな雰囲気に早くも圧倒されることになった。
そして周りにはたくさんの人がいる。本来は楽しいはずのパーティーだが怖さの方が勝っていた。レオンにとってはまさに貴族の洗礼といった形だ。
もちろん子供だから別に緊張する必要もない。父と母に任せるだけでいいのだが、緊張で死にそうな状況だった。
そうしてレオンはおどおどしていた。時に「やばい、もう吐きそうだ」などと言っていたのだ。
レオンとしては早くパーティーが始まって欲しい。そして挨拶は適当に終わらせて食べ物に向かいたい。そんな心境の彼には1秒1秒が長く感じられた。
しばらくするとようやく壇上で国王エドワードの挨拶が始まった。
「みんな、よく集まってくれた」
「明日は三歳児を中心とした合同魔力測定だ。楽しみにしている人も多いことだろう」
「だが、子供たちは覚えておいて欲しい。魔力の多寡は人それぞれだ。そして、魔力量でその人間の本質が決まるわけではない。魔力量だけで価値が決まると思う必要はない。魔力量などは、あくまでも人間の資質のうちの一つにすぎない」
「当然のことながら、魔力の少ない子を馬鹿にするようなことはしないように。そんなことをしていては貴族としての名折れだ。魔力量で人を判断するのは恥ずかしいことだと認識して欲しい」
子供に向けた、分かりやすい、そして優しい言葉だった。魔力量には不安を持っていた子供は特に安心した。
しかし、実はこのパーティーに参加している大人に向けての言葉でもあった。子供を魔力だけで見るなという警告にも近い意味合いである。
残念ながら、この世界では魔力が多ければ才能あり、少なければ期待薄という空気がある。今の大人がそういった雰囲気を作ってしまったのだ。
国王としてはそれはいけないと何とか軌道修正しようとしているようだが、うまくいっていないというのが現状。
おそらく明日は合同魔力測定で多くの感情が生まれる。歓喜、失望、嫉妬、羨望、哀れみなどなど。
そして魔力量が少ないと知るとがっくりするものも多い。子供の魔力ランクを聞いて親があからさまに落胆することもある。更には周りからも憐みの目をむけられる。
三歳でそれを突き付けられたら泣きたくもなるだろう。現実に過去の合同魔力測定でもそういったことが多々あり、それをきっかけにふさぎ込んでしまった子供もいる。
そのために合同魔力測定は取り止めにするべきという意見もあったほどだ。
とは言え貴族の子息たちの魔力を知る良い機会でもあり、更には顔合わせの意味合いもある。実利を優先して毎年開催しているというのが現状であった。
大人は綺麗ごとだけを言って行動に反映しない、そして子供には綺麗ごとを押し付けるという情けない状況はどこの世界でも似ている。
ちなみにレオンとしては気楽に考えていた。彼の姉イリスより魔力が圧倒的に少ないことは、自分が魔改造した魔力視認魔道具で確認して知っている。
レオンは低くても別に気にするつもりもなかった。最低ランクの才能無しという認定での方が目立たなくて気楽とぐらいに考えていたぐらいだ。
そうして、国王による子供たちに向けたやさしい挨拶、一方で大人に対しては警告のような挨拶が終わり、乾杯となった。
参加した人たちは軽く喉を潤したあと、挨拶回りに動き回ることになる。




