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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-3章「孤児院騒動」

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第72話「濃すぎる一日の終わり」

#第72話「濃すぎる一日の終わり」


 ギルベルト、セレナ、オルドにとって、長い一日がようやく終わろうとしていた。

 本当に濃い一日だった。


 思えば、いきなり朝から大変だった。国王に呼び出されたかと思えば、昨夜レオンが王女の部屋に忍び込んだという話を聞かされたのだ。

 さすがのギルベルトもセレナも心臓が飛び出るかと思った。夜に王女の部屋に侵入なんてあり得ない話だ。一歩間違えば切り捨てられていてもおかしくない。


 だが現実は違う結果となった。

 レオンの突拍子もない行動はSランクの魔力過多によって体調を崩している王女ソフィアを気遣ってのものだった。

 しかも魔道具を使って体調を奇跡的に回復させたというのだから、とにかく常識外れだ。専属医もあり得ない、医療革命というほどの奇跡をレオンは起こしたのだ。

 その結果として、レオンの魔道具に関する才能の秘密の共有はさらに広がった。


 ヴァルドリック側ではギルベルト、セレナ、オルド、ライゼン。

 王都側では国王エドワード、王妃カタリーナ、王女ソフィア、専属医、そして宮廷魔道具師エレン。

 それ以上の秘密の漏洩は許されない。公爵家でさえ例外ではない。


 もし漏れればどうなるか。

 公爵家、そこに連なる貴族、下手をすれば国外勢力にまで狙われる可能性がある。レオンを守るためにも、秘密は最小限でなければならない。

 万一疑われた場合はライゼンの名を出す。剣聖という存在が盾になる。二重の防壁だ。


 その話を聞いてからの緊張、そして設定の確認などだけでも三人は疲労困憊だった。今後どうするべきか様々なことで頭を悩ませた。そしてようやく一定の結論を出した。

 しかし話はそこで終わらなかった。そこへ追い打ちのように、今度はレオンの土下座騒動が起こったのだ。


 王都に来てからというもの、事件が立て続けに起きている。ギルベルトもセレナも、そしてオルドもさすがに疲れ果てていた。

 まあ全てその根本原因は一人だ。レオンが全て悪いのではあるが……。


 その夜。

 二人きりになった寝室で、ギルベルトは静かに口を開いた。今日、レオンから聞いた孤児院の子供たちの件だ。


「基本的には、孤児院の二十人ほどの子供を引き取る方向で考えている。セレナはどう思う?」


「私はいいと思うわ。資金もいただいたし、ちょうどいい機会よね」


 セレナは迷いなく頷いた。現実問題として領内ではまだイリスとレオンの友達がいない。同世代の子供と言えば平民だけだったからだ。接触させるべきかどうか悩んでいたところだった。

 教育を考えても同世代の子供は近くにいた方がいいが難しいところ。そこに孤児の話は渡りに船とも言えた。


「なんなら、他の孤児院も確認して経営が苦しいところがあれば追加で引き取ってもいいくらいだと思うわよ。さすがにそこまでするのは不自然だから難しいけどね」


「そうだな。子供は宝だ。余裕があるなら数十人程度を育てるのも悪くない。将来は魔物を倒すための戦力になってもらってもいいし、レオンやイリスの付き人にしてもいい。学問を積んで他の道に進んでもらうのもありだ。孤児なら場合によってはうちに属する貴族、騎士らの養子にするという道もある」


「これまでは財政に余裕がなくて本格的な育成はできなかったものね。いい機会かもしれないわ」


「……そういう意味では、あのおかしな土下座騒動も結果的にはプラスかもしれんな。もちろん、しっかりと孤児院について確認しないと分からないが……」


 セレナはふと微笑んだ。


「本当に不思議な子よね。前に拾ってきたというライゼンも剣聖なのでしょう? 本来はとんでもない人物なのでしょう?」


「ああ……もう騒動が多すぎてすっかり忘れていたが、剣聖を拾ってくる三歳児など聞いたことがない。本来、来てもらうならば莫大な金を積んで頼み込む存在だ。それが今や、たいした資金も出していないのにレオンに心酔しているというのだから本当に理解できん。意味が分からないよ」


「いいじゃない。レオンにはそれだけの才能と、そして人を引きつける力があるのよ」


 まあ剣聖ライゼンについては偶然だ。偶然ではあるが、あまりにもできすぎではある。しかし起こったことは仕方がない。


「そう……なのかな。しかも今度は国でもトップの魔道具師、エレン殿まで領に来るという話だ。今後のうちの領はどうなっていくのか、本当に分からんよ」


「そうね。でも、ギル、そういう将来の話もいいけどね。肝心なことを忘れちゃ駄目よ。明日は孤児院視察、その翌日は大切な合同魔力測定もあるのよ」


「……そうだったな。本来の目的はレオンの魔力測定だったな。本当はそのために王都に来たんだったよな」


 本来はレオンの合同魔力測定のために王都へ来たはずだった。

 しかし昨日今日で起きた出来事が濃すぎて完全に意識から飛んでいた。頭を元に戻す必要がある。


(どうしてこうなった……)


 原因はほぼレオンだが、それを口にするほど野暮ではない。まあ口にしたところでどうなるものでもないという意味合いもあるが。


 こうして――

 二人にとっても、激動の一日はようやく幕を下ろした。

 この時は、さすがにもう厄介ごとはごめんだ、勘弁して欲しいと思っていたのだが……。

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