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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-3章「孤児院騒動」

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第70話「善意と条件」

#第70話「善意と条件」


 ギルベルト、セレナ、オルド、そして宮廷魔道具師エレンの四人が城内の部屋へ戻ると、そこにいたのは土下座をしているレオンだった。

 びっくりして話を聞くと、レオンは孤児院の子供たち二十人ほどを領で引き取りたいという。


 二十人程度ならば辺境伯家で何とかなる。別にたいした話でもない。

 だが――問題はそこではない。レオンのようにその場の感情だけで動くのは危うい。

 そこでギルベルトは静かに息を吐き、口を開いた。


「いいだろう。だがいくつかの条件がある」


 そこでレオンが顔を上げた。そして期待感を込めて父を見上げた。


「まず一つ。今後、レオンに小遣いは安易に与えない。それでもいいか?」


 これは別に本気でそうしようとは思っていない。ギルベルトからの試しの問いだ。本気で孤児院の子供たちを何とかしてあげたいと思っているのか?その本気度を見るための問いになる。


 レオンは即答した。


「はい、いいです。小遣いはもう、ずっとなくしても構いません。それでも、お願いします」


 セレナが目を見開いた。

 あれほど楽しみにしていた小遣いと買い食いを、迷いなく手放すとは。その気持ちは間違いないだろう。


(……本気だな)


「二つ目。安易に善意を施すな。施したいと思った時は、必ず大人に相談してからにしなさい。串焼き一本でも同じだ。どんな小さなことでもだ」


「分かりました。必ず相談してからにします」


 その言葉を言いながらレオンは少し反省した。以前にも同じようなことを言われたことを思い出したからだ。

 今回は周りには大人はいなかった。でも相談しようと思えば何とかなったかもしれない。まずは踏みとどまる癖を付けた方がいいだろうと感じた。


「三つ目。仮に引き取ることになれば、子供たちの生活は一変する。相談相手としてきちんと向き合う覚悟はあるか?」


「あります。子供たちの相談相手にもなります。一人一人にできるだけ向き合います」


 迷いのない声でレオンは返事した。それぐらいは当たり前だと感じたからだ。王都と辺境の領では生活は大きく異なるだろう。

 場所が変わるだけではない。周りの人間も変わる。おそらくは心細くもなるだろう。帰りたいと言い出す子もいるかもしれない。自分ができることは何でもするつもりだった。


「最後に」


 ギルベルトの声が少し低くなった。


「人としての善意は素晴らしい。だが、その場で感情のまま動く善意はとにかく危険だ。世の中には、それを利用して騙す者がたくさんいる。簡単に動くな。常に慎重さを持て。念には念を入れよ」


 その言葉に、レオンははっとした。

 前世の記憶がよぎる。

 マルチ商法、怪しい投資話、副業の案内、高額な絵画や宝石の販売など――何度も善意や焦りにつけ込まれた。

 善意だと思っていた行動を後から笑われたこともある。それはマルチ商法を勧誘してきた知人だった。助けて欲しいという言葉などに騙された。

 人の善意に付け込んでお金を取った相手に、更には笑いものにされた屈辱が思い起こされた。

 相手は馬鹿にするつもりはない軽口のつもりだったのだろうが絶対に許せなかった。それから連絡を取るのはやめた。そうして次第に人を信じられなくなった。


(俺はまた同じことをしようとしていたのかもしれない。今回の件も確認は……ほとんどしていないよな。それなのに安易に約束をしてしまったのは明らかに失態だ。一応は父さんに聞いてから答えるという話はしたものの、やはりそれでも安易すぎるだろう)


 今回の話も、もしかすると芝居などの可能性がゼロではない。見極める力がなければ、その善意は簡単に利用される。

 確認しようと思ったらその場でできたことはいくつでもあるだろう。何も確認せずに”可哀想”という気持ちだけで動いてしまった。それでは駄目だ。


「……反省します。もっと慎重に動きたいと思います」


 俯き、小さく呟いたレオンにギルベルトは頷いた。

 そしてさすがにちょっと可哀想になってきたこともあり、この辺で終わりにしようと考え言葉を続けた。


「その孤児院の名前と場所を教えなさい」


「はい!」


 レオンが説明すると、ギルベルトはすぐに使いを走らせた。


「明日、実際にその孤児院を見に行く。そして私の目で状況を確認する。最終判断はそれからだ。もちろん、場合によっては断る可能性もあるからそのつもりでいなさい」


「分かりました! お願いします」


 土下座を解き、レオンは父を見上げた。

 こうして――辺境伯家は、王都の一つの孤児院を巡る問題に足を踏み入れることになったのだった。


 しかし、その時にレオンはキョトンとした。父の近くには全く知らない若い女性がいたからだ。


 もしかして、さっきの土下座からして全て見られていた?

 急に恥ずかしくなった。そして父に質問をした。


「父さん、その人は誰ですか?」


 そうだった。

 レオンの土下座騒ぎで少し忘れていたが、ようやく本題に戻れるなとギルベルトは思い、宮廷魔道士のエレンをレオンに紹介することにした。

 もちろん、オルドの後輩という設定でだ。

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