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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-3章「孤児院騒動」

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第69話「土下座の理由とは?」

#第69話「土下座の理由とは?」


 ギルベルト、セレナ、オルド、そして宮廷魔道具師エレンの四人は城内の私室へと戻ってきた。

 事前の打ち合わせも済んでいる。エレンはオルドの魔道具生産現場で働いていた頃の後輩、そして今は魔道具関連の研究をしている――その設定で通すことになっている。


 しかしレオンがいると思って部屋の扉を開けた瞬間、四人は固まった。

 床に額を擦りつけるようにして、レオンが土下座をしていたのだ。


「父さん、お願いがあります。少々、お金が欲しいのですが」


 エレンは完全に理解不能という顔で固まった。

 一方でギルベルト、セレナ、オルドの三人は――驚きはしたが、どこかで「またか」という思いもあった。レオンはたまにおかしな行動をするのだ。

 ギルベルトは軽くため息を付いて土下座をしているレオンに対して声をかけた。


「落ち着けレオン。何があったんだ?」


 ギルベルトが声をかけると、レオンは顔を上げた。


「近くの孤児院に、二十人以上の子供がいます」


「ああ……それで?」


「その孤児院の経営が成り立たないようで、それで来月から子供たちはスラムに行かなくてはならないそうなんです」


 ギルベルトは眉を動かした。


「……それは仕方がない。経営が成り立たないならばしょうがないだろうな」


「そこでその子供たちを、何とか、うちの領で引き取ってもらえないでしょうか?」


「はぁ?」


 セレナ、オルドは苦笑した。レオンのおかしな行動がまた始まったなと。

 一方でエレンは、ぽかんとしたままだ。確かこの子は魔道具の天才ではなかったのか?なんで子供たちを引き取る話をしているのか?理解が追い付かなかった。

 レオンはその周りの状況も知らずに言葉を続けた。


「スラムでは生存競争が激しく、とてもではないけど小さな子供は生きていけないと聞きました。ならば、うちの領で引き取って育ててあげられないかと。うちなら土地はあるし、食事代も王都より安いです。何とかならないかと……」


 なるほど、そういうことか。

 ギルベルトは腕を組んだ。

 レオンの言いたいことは分かる。二十人程度ならば、辺境伯家で面倒を見ること自体は不可能ではない。というか、それほどたいした話でもない。

 しかも先ほど、王から研究費として百白金貨(10億円相当)という多額の資金も下賜されている。金銭的余裕もある。

 もちろん身寄りのない子供たちの養育は研究費ではないがレオンのやる気に繋がるのであれば必要経費と割り切ってもいいだろう。


 しかし、レオンの言うようなことをいちいち行動に移していたらきりがないのも事実だ。王都には多数の孤児院がある。安易に前例を作ってしまうのは問題だ。

 軽率に頷くわけにもいかない。そこでギルベルトは、どうしてその状況になったのか確認を始めた。


「そもそも、なぜ経営の苦しい孤児院に行きついた? そこからしてよく分からない」


「えっと、最初は公園で父さんからもらったお小遣いで串焼きを買ったのです。そしたら、もの欲しそうな子供が二人いて……その串焼きを一本あげました」


 セレナが小さく息をついた。まただ。ライゼンの時と同じ行動だ。安易に手助けをしてはいけないと言い聞かせたつもりだったが甘かったようだ。

 世の中にはたくさんの恵まれない人、そして子供がいる。そんなことをしていたらきりがない。


「ですがその子たちは食べませんでした。自分達だけで食べるのはずるい、孤児院の仲間に分けたいと。人数を聞いたら二十人以上もいると知って、足りないと思い、持っていたお金を全部使って追加で買って届けました」


 エレンの目がわずかに輝いた。だが今は黙っていた。今は親子の話し中だ。部外者が口出しするのはまずいとの判断だ。


「そうしたら、”久しぶりのお肉”と言ってみんな喜んで食べてくれました。でも……しばらく後に家賃の取り立てに二人組の男が来て、今月中に出て行けと」


「なるほどな……」とギルベルト。


「運営しているお姉さんも、子供たちも……いい人ばかりなのに、かわいそうなんです。スラムに行くなんてとんでもない。父さん、お願いします。何とかしてあげたいんです」


 レオンは再び深々と頭を下げた。

 そうして、ギルベルト、セレナ、オルド、エレンは完全に状況を理解した。

 ギルベルトは少し考えた。


(またレオンのおかしな善意だ。だが……)


 二十人程度を引き取るならば何とでもなる。レオンのやる気に繋がるならば、それもいいだろう。

 しかしこのままではレオンはあまりにも危うい。その場の感情だけで動く癖を放置すれば、いずれ大きな問題を抱え込むのは目に見えている。

 ギルベルトは静かに口を開いた。


「いいだろう」


「本当ですか! ありがとうございます!!」


 レオンが顔を上げた。しかしそこでギルベルトは続けた。


「ただし――いくつかの条件がある」


「分かりました。何でも聞きます。お願いします」


 再びレオンはお願いを続けた。

 その後は部屋の空気が一段と引き締まった。そしてギルベルトはレオンにそのいくつかの条件を突き付けていった。

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