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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-3章「孤児院騒動」

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第68話「口裏合わせ」

#第68話「口裏合わせ」


 レオンが王都でいろいろとやらかしているその頃。

 王城では、レオンの今後の対応についての会議がようやく終わりを迎えていた。


 話が終わったということで国王エドワードと王妃カタリーナは退席。

 応接間に残ったのは、ギルベルト、セレナ、オルド、そして宮廷魔道具師エレンの四人だ。


 ギルベルトが静かに言った。

「では、軽く打ち合わせをしておくか」


 目的はひとつ。

 エレンが“オルドの後輩”という設定で自然に振る舞えるよう、口裏を合わせることだ。


 そこでオルドが話を始めた。

「宮廷魔道具師のエレン様には申し訳ありませんが……私の魔道具生産現場で働いていた後輩という設定でお願いいたします」


「先ほどの話の続きですね。分かりました。”私はオルドさんの後輩”ということで問題ありません」


 即答だった。

 オルドは少し言いにくそうに続ける。

「レオン坊ちゃんの前では、エレン様ではなく“エレン”と呼び捨てにすることになると思います。失礼に当たるとは思いますがお許しください」


 エレンは笑った。

「それは当然でしょう」


「それにレオンと話ができるのなら、それくらいどうってことありません。呼び捨てでもニックネームでもため口でも何でも、どんとこいです!」


(やはり、話に違わぬ魔道具オタクだな)


 ギルベルトは内心で苦笑した。

 エレンは普段は物静かな女性なのだが魔道具が絡むと人が変わる。今回もレオンに会えるという目的のためならば、肩書きなどどうでもいいらしい。


 その後は細かな設定の確認が続いた。

・どこの工房で働いていたのか

・何を製造していたのか

・なぜ宮廷にいたのか

 など細かい擦り合わせをしていった。そうしないと話が合わなくなる可能性があるからだ。


 オルドは続けた。

「以前は魔道具生産現場で働いていて私の後輩だった、そして、今は魔道具の研究を任されている、ということにしておきましょう。そうすれば何かバレた時でもごまかせるかと」


「でもヴァルドリック領へ行く名目はどうしましょう。何らかの目的がなければ不自然です」


 そこでエレンは答えた。

「なるほど、私の仕事は研究者ということになるのですね。それならば今の仕事そのものなので自然にふるまえそうでありがたいです」


「またヴァルドリック領へ行くのは魔石研究のため、という名目にしましょう。実際に研究したい、機会があれば行ってみたいと思っていたので丁度良いです。ヴァルドリック領は魔石で有名ですから」


 それは決して嘘ではなかった。

 ヴァルドリック領は魔物が多く、魔物から取れる魔石の産出も多い。研究目的としては十分、話が通る。


 そこで、ギルベルトは表情を引き締めた。

「エレン殿」


「はい?」


「レオンと話をしたいお気持ちは分かりますが、当面の間はできるだけ最小限にお願いします。何でもかんでも聞くのは不自然になります」


「……はい」


「もちろん、レオンから話を振られた場合は問題ありません。ただしそれも最小限で」


 かなり難しい注文だ。

 エレンは一応頷いたが、その目は既に泳いでいる。


 ギルベルトは更に念を押した。

「それから」


「当然のことですが買収も禁止です。情報の対価とかでお金を渡すようなことは絶対にしないでください。節度ある対応をお願いします」


「……分かっています」


 その言葉とは裏腹に視線を逸らすエレン。分かってはいるが本当に情報が欲しい場合もあるだろう。その時にどうすべきかと頭を悩ませていた。


(エレン殿は本当に分かっているのだろうか……)


 ギルベルトは内心で不安を抱えてはいたが、今はもうなるようになるしかない。


 その後は更に細かい打ち合わせを進めた。ヴァルドリック領に到着した後は、屋敷に泊まってもらうことに決まった。

 さすがに宮廷魔道具師を安宿に泊めるわけにはいかないからだ。

 更にギルベルト、セレナからもエレンと呼び捨てにすることになった。

 それはそうだろう。オルドでさえも呼び捨てにするのだ。ギルベルト、セレナも呼び捨てにしないと不自然になる。


 そうして、おおよその打ち合わせが終わり四人は城内の部屋へ戻ることにした。そして、そこにエレンも同行することにした。


 今日は初顔合わせ。すなわち顔を合わせる程度。

 本格的な話は後日だ。


 ギルベルトは心のどこかで思っていた。


(エレン殿を抑えきれる自信はないな……今回は顔合わせだけで済ませることができるのだろうか?)


 だが、それを今さら言ってもどうしようもない。

 そして。


 部屋の前まで来たとき、人影が見えた。


「……レオン?」


「はい」


 返事が聞こえた。どうやら戻ってきているらしい。


「えっ、もう帰ってきているですか?」


 エレンの顔がぱっと明るくなった。早くレオンと話がしたいのだ。


 だが、扉を開けた瞬間に四人の動きが止まった。

 そこにいたのは――

 土下座しているレオンだった。


「……」


 一瞬、空気が凍った。顔を見合わせる四人。

 そしてレオンは、深々と頭を下げたまま言った。


「父さん、お願いがあります。少々、お金が欲しいのですが」


 どう見ても、普段の軽いお願いではない。

 空気がかなり重い。どうやら真剣な話のようだ。

 そこで、ギルベルトは思わず声をかけた。


「落ち着け、レオン。何があった? 何か問題でもあったのか?」


 話しかけても土下座したままの息子。

 一体、公園で何があったというのか。まずは話を聞かないといけない。エレンの紹介の前にやることが一つ増えてしまったようだ。

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