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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-2章「王女との出会いとやらかし」

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第55話「三つ目の秘密」

#第55話「三つ目の秘密」


 ソフィアの体調がレオンのもたらした二つの魔道具で劇的に回復した。そして専属医はソフィアの体調が回復した理由として二つの仮説を打ち立てた。

 しかしその二つの魔道具を同時に使ったソフィアが専属医とは違う意見を言い出した。二つの仮説も有力だが、三つ目の理由があるとしたのだ。

 

 それはとても大事な話だ。もしかしたら二つの魔道具を装着した本人にしか分からない秘密があったのかもしれない。

 組み合わせることによって威力を発揮したのか?腕輪型の1つの魔道具では意味がないのかも? それとも指輪型魔道具の方が強い効果をもたらすのか?


 エドワードは思わずソフィアにその理由を確認した。するとソフィアは一呼吸してその語りを続けた。


 その一瞬は答えを待つ三人にとってはあまりにも長すぎた。

 そして、固唾を飲んで答えを待つ三人に対しソフィアは指輪型魔道具を見せつけながら、胸を張って言った。


「三つ目の体調回復の理由、それは……」


「それは何だ?」


「愛、愛の力です! それで間違いありません!」


「「「……」」」」


 ソフィアは自信満々だった。

 だが、そのソフィアの答えに部屋が一瞬で凍りついた。暖かい季節なのにもうそこは氷点下だ。エドワードは頭を抱え、カタリーナはこめかみを押さえた。

 確かに“強い思い”が奇跡を呼ぶとは言うが、ここまで来るとただの恋愛幻想。娘とは言えさすがにちょっとやばい。そう考えてよくよくソフィアを見ると目が少し濁っているようにも見える。

 これは……ちょっとまずいかもしれない。どこかで軌道修正が必要だ。


 しばしの沈黙が流れたのち、カタリーナが咳払いをして話を始めた。

「……ソフィア、少し現実的な話をしましょう。あなたには三人の婚約候補がいるのは知っていますよね?」


「ええ。もちろん知っています。でも、もう婚約者はレオンで決まりでしょう? 私を救ってくれたのですから。そしてここに指輪まであります! これでもう間違いないでしょう」とソフィアは満面の笑顔で答えた。


 しかし、そのソフィアの考えを切り裂くようにカタリーナはやや冷たい雰囲気で語り掛けた。

「いえ、全くそんなことはありません。現実的には逆です。レオンはあなたの婚約者から最も遠い」


「そっ、そんな……」


 そこでカタリーナの声が更に少し強くなった。娘を幻想の世界から引き戻さなければいけない。ここまでくると多少の強引さが必要だ。

「現実には、公爵家の二人が圧倒的にリードしています。財力も家柄も地位、名声全てにおいてレオンのいる辺境伯は負けています。よって、あなたがどれだけ主張しても、それはすぐには覆せません。国中の貴族が認めないでしょう。王家だけが独断で決めるわけにはいかないのです。権力のバランスとはそういうものなのです」


「じゃあ、私はどうすればいいのですか? 私たちの愛は権力によって引き裂かれてしまうのですか?」ソフィアはやや涙目になり訴えた。こうなると完全に悲劇のヒロイン状態である。


 カタリーナはその娘の芝居がかった様子にやや不安になりながらも答えた。

「大丈夫です。あなたたちが結ばれる方法は確実に存在します。それはあなたが……成長することです。それが唯一の方法です」


 カタリーナは静かに続けた。

「あなたが立派に成長し、誰もが認める存在になれば、その時はきっと皆があなたの意志を尊重してくれるでしょう」


「婚約相手の正式決定は、五歳から十歳に延期されました。だから十歳までに、しっかり勉強して誰からも認められるような立派な王女に成長するのです。そうすればあなたの恋はきっと実ります」


 そのカタリーナの話を聞いてソフィアは再び笑顔を取り戻した。

「……分かりましたわ、お母様。私は誰よりも努力して、そして――必ずレオンと結ばれてみせます!」


 なんとも単純。それは悲劇のヒロインからチョロインにクラスチェンジした瞬間であった。単純ではあるがそれも仕方がないだろう。頭がいいとは言ってもまだ本人は三歳である。

 その宣言を聞いたエドワードは、椅子にもたれて深いため息をついた。そしてソフィアに聞こえないように小声でカタリーナに語った。

(……まったく、どこでこんなに思い込みの強い娘に育ったのやら。カタリーナに似ているな)


(ふふっ。何を言っているのよエドワード、私よりもあなたにそっくりよ。でもレオン君の意思も確認しないとね)とカタリーナも微笑む。


 最終的にソフィアの問題は解決に向かっているように見えた。しかし本当に解決したのか?

 エドワードとカタリーナは、この思い込みが今後どんな騒動を生むのか――

 全く予想もできず内心では少しだけ頭を抱えていた。


 そしてカタリーナは誰にも聞かれないような小さな声で呟いていた。

「レオン君には悪いけど少し利用させてもらうわよ」


 カタリーナの頭の中では様々な状況がシミュレートされていた。もちろん現時点でレオンがどのように利用されるのかは誰にも分からない。



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補足)三つ目の理由について皆さんの予想は当たりましたか?ふざけんな!と思った人はごめんなさい。作者の作風はもともとコメディ寄り。後方腕組みして俯瞰するような気持ちで、広い気持ちでお許しいただければ幸いです。

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