第54話「王女の独演会」
#第54話「王女の独演会」
国王エドワードと王妃カタリーナの前で、ソフィアは上機嫌に微笑んでいた。彼女を救った可能性のある魔道具――それは腕輪型と指輪型の二つだった。
しかし今、彼女の視線はひたすら左手の指輪に注がれている。
カタリーナはその様子を見逃さなかった。
「まあ、ソフィア。その指輪型魔道具、とても大事そうにしているのね?」
その一言で、ソフィアの顔が赤くなった。そして急に饒舌になって語り始めた。
「さすがお母様、分かりました? そうですの! この指輪型魔道具はレイゼン――いえ、レオンからいただいたのです。どうです? とても綺麗でしょう。まるで私のためだけに作られたような、世界で一つだけの指輪ですわ!」
その場にいた誰もが急に饒舌になったソフィアにびっくりした。
そして誇らしげに左手を掲げるソフィア。見てすぐに分かる。誰かから指輪のことを聞かれるのを待っていたのだろう。
先ほどまで「絶対に言いたくない、秘密にしてほしい」と神妙な表情で言っていたのは、いったいどこへ行ったのか。エドワードとカタリーナは顔を見合わせ、思わず無言になった。
まあそれも無理はないだろう。あまりにもソフィアの言動の変化が急すぎた。二人はその流れについていくのでやっと。とりあえずは話を聞くしかない状況であった。
その戸惑う二人とは対照的にソフィアの語りは続いた。
「最初、レオンは私に腕輪型の魔道具を装着してくれたのです。そのあとは、私の体調を考えてくれたのでしょう。私のことを心配そうに無言でじっと見つめてくれました……あの優しい眼差し、忘れられません。あの瞬間、言葉などいりませんでした。私たちは――通じ合っていたのです!」
「ちょっと待て……ソフィア、さすがにそれは思い込みではないのか? レオンが心配したのは確かだろうが通じ合ってたは、さすがにないだろう。まだ会ったばかりだから勘違いしているのでは?」
エドワードが恐る恐る口を挟むと、ソフィアはきっと睨みつけた。まるで”うるさいお前は黙れ!”と言わんばかりの鋭い視線。
その冷たく鋭い視線に、国王がたじろいだ。
「し、失礼。続きをどうぞ……」
国王の言葉を目線だけで制し、勢いを取り戻したソフィアはもう止まらない。まるで恋愛劇の主人公のようにゆっくりと思い出すように語り始めた。
「私が『ありがとう、体がすごく楽になりました』と伝えると、レオンは本当に嬉しそうにやさしく笑ってくれたのです。それは満面の笑みでした。本当に私のことを真剣に考えてくれていたのですね。彼の気持ちを知り私も本当に嬉しかった」
「そして……レオンは二つ目の魔道具、この指輪を差し出してくれました。どの指にしますか? と聞いてきたので私は迷わず左手の人差し指を選びました。するとレオンは優しく頷き、この指輪を私の指にはめてくれたのです」
そこまで話すと、ソフィアは胸の前で両手をぎゅっと握りしめた。
「レオンは私を助け、そして私のために婚約指輪まで用意してくれていたのです……これはもう、運命としか思えません!」
専属医が小声で「えっと、指輪も魔道具ですよね。それも医療用、体調回復のためでは? さすがに婚約指輪ではないでしょう。それは勘違いでは?」
そう言う専属医に対してもソフィアはきっと睨みつけた。氷のような冷たい視線。そうなると専属医は小さくなってそれ以上なにも言えない。専属医さえも目線で制したソフィアの独演会が再び始まった。
ソフィアは満面の笑みで続けたのだ。
「先ほど、お医者様は『体調回復の理由は二つ考えられる』とおっしゃっていましたよね?」
「はい、確かに。おそらくですが、その二つの理由でソフィア様の体調が改善したと推測します。あくまでも現時点での仮説ではありますが」
「はい、その二つの仮説も有力だと思います。でも私に言わせればそれは違います。――二つではなく三つです! ここに、もう一つの真実があります」と指輪を見せつけた。
エドワードとカタリーナ、専属医の三人が同時に顔を見合わせた。指輪型の魔道具を装着した本人にしか分からない何かがあったのかもしれない。もしかして腕輪型と指輪型の二つを同時に使うことに大きな意味があるのかもしれない?
実は単体では効果が無かった可能性さえもある?それとも本質は指輪型の魔道具にある?
これは聞き逃すわけにはいかない。エドワードは真剣にソフィアに聞いた。
「三つ目? それは一体なんだ? 魔道具を組み合わせることに意味があるのか? それとも他に理由があるのか?」
エドワードが聞くと、ソフィアは一呼吸おいて三つ目の理由を語った。
その三つ目の理由。その場にいる三人にとっては思いも寄らない、そして想像さえもできなかったソフィアの考察に驚愕することになった。
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補足)シリアスモードから一気にコメディモードに突入で申し訳ないっす。作者はもともとこっち寄り。設定の緩さも含めて広い心でお許しいただければ幸いです。
そして三つ目の理由とは何なのか?もちろん次回の定期更新で明らかになります。




