第49話「王女の指輪と約束」
#第49話「王女の指輪と約束」
「AランクやSランクなど天才的魔力量の人はかなり高い確率で若いうちに亡くなる。ソフィア様もそうかもしれない」そう思ったら俺はいてもたってもいられなくなった。
何とかして彼女を救いたい。
そしてイリス姉さんの体調が良くなった魔力充填魔道具を試してみたいと思ったのだ。しかし、その魔道具の開発者が俺だとばれたらまずい。父さんや母さんにもライゼンが作ったとして秘密にしているぐらいの話だからね。
そこで俺は変装して渡すことを決意した。それで大丈夫なはず………。
その案を実行すべく俺はソフィア様の部屋を探した。魔力視認魔道具を使いさえすればソフィア様の魔力は大きいので部屋の外からでもすぐに分かる。
おれは部屋を発見、そしてソフィア様に会い、腕輪型の魔力充填魔道具を使ってもらうことができた。
途中、ばれそうになったけどライゼンの弟子、レイゼンという架空の人物を作り乗り切った。咄嗟の判断で何とかした自分自身を褒めてやりたいところだ。さすおれ案件である。
ともかく、これでようやく最大の目的を果たした。あとは体調が良くなればいいのだが……。
それからどれぐらいの時間が経っただろうか、やがて、ソフィア様は目を丸くし、そして微笑んでくれた。
「これ、すごい、いいかも……本当に体が楽になったような気がします。こんなに体調がいいのは初めてもかもしれない。今なら何でもできそうです」
良かった。姉さんだけでなくソフィア様にも効果があるようだ。体調が良くなってくれたなら何より。でも、もう1つの指輪型魔力充填魔道具も試した方がいいだろう。
俺はそこでさらに小さな箱を取り出した。
「こちらは指輪型の魔力充填魔道具です。腕輪と併用するとより安定すると思います。ねえさ……じゃなくて知り合いでも確認済みです」
「分かりました。そちらも試してみたいです。こちらの腕輪型がこれだけ効果があるので、そちらの指輪型も期待できそうです」
そして指輪型魔力充填魔道具をソフィア様に付けてもらおうとして俺は疑問に思った。どの指がいいんだ?分からなかったので俺はソフィア様に尋ねた。
「どの指がよろしいでしょうか?」
そう尋ねると、ソフィア様は少し頬を染めながら答えてくれた。
「……左手の、人差し指で」
(確か、左手の薬指が婚約指輪だったよな。さすがに左手の薬指はまずいだろうけど人差し指なら問題ないだろう。よし、ソフィア様の言う通りにしよう)
俺は慎重に指輪をはめてあげた。すると魔道具が作動し始めたように見える。ソフィア様の魔力をゆっくりと吸収しているようだ。
「どうですか?」
「いい感じです。さらに……体が軽くなった気がします。本当に不思議な感覚です。ありがとうございます」
「これらの魔道具にセットしてある魔石の色がこれと同じぐらい赤く変わったら、魔力が満ちた合図です。魔石を新しいものと交換してください」
そうなんだ。この魔道具には1つの問題がある。魔力が魔石に貯まったら自動的に止まっちゃうんだよね。逆流防止回路を入れてストップするように設計したんだ。安全だけど止まったらそこで終了。
だから魔力が貯まったら魔石を交換しないといけない。
「魔石はどれと交換すれば?」
「いくつか予備をおいておきますね。できれば王城内でも魔力のない空の魔石を用意してもらえればと……」そう俺が言おうとしたらすぐに遮られてしまった。
「ならば定期的に空の魔石を持ってきていただけますか?私はずっとこの部屋で夜に待っていますので」とソフィア様。
げげっ、これは困った。また来るように言われたよ。俺はいつもは辺境にいるんだ。そんな簡単に王都に来れるはずもない。
でも期待されたら応えないわけにもいかないよな。
「……分かりました。できるだけ、そうですね。可能であれば三ヶ月に一度ぐらいは来たいと思います。私……レイゼンがまた交換に来ます」
ソフィア様は小さく笑ってうなずいてくれた。
「お願いします。できれば、調子を確認して欲しいのでもっと頻繁に来てくれるとありがたいのですが……とりあえずは三か月に一度くらいですね。来ていただけると嬉しいです」
「かしこまりました」
そう言いながら俺は困ってしまった。三ヶ月に一回だと?簡単に約束なんかして、どうすればいいんだよ。
また未来の俺どうにかしてくれ案件が増えてしまったじゃないか。
「この腕輪と指輪の魔道具は常に身に付けておく必要はありません。普段は外していても問題はないでしょう。ただ寝るときは身に付けておいた方がいいかと。ねえさ…じゃなかった、私の知り合いもそうしていましたので」
「分かりました。ありがとうございます、レイゼン様。これほどまでに体が軽くなるなんて、本当に信じられない思いです。凄い効果です」
「いえ、役に立てて光栄です。それでは私は次の要件がありますのでこの辺で失礼させていただきますね」
そう言って俺は深くお辞儀をし、部屋を後にした。
***
(第三者視点です)
ドアが閉まった後、ソフィアはそっと左手を見つめた。
小さな指輪が、かすかに光を放っているようにも見える。そして、その指輪にそっと指を重ね頬を染めながら呟いた。
「レイゼン様、ね。なんで偽名を使ってあんなおかしな変装までしているのか分からないけど、それに付き合わないと、もう来てくれないかもしれないわよね」
「……レオン、本当にありがとう。もう駄目だと思っていたけど、あなたのおかげで私はまだ生きられるかもしれない」
そう、ソフィアは知っていたのだ。王や主治医の話をこっそり聞いて自分はこの先長くないと分かっていた。
しかし体調がよくなり、大きな希望が出てきた。もしかしたらまだまだ生きることができるかもしれないと。
そしてこの時、レオンはまだ知らなかった。
この世界では――
左手の人差し指の指輪は、“婚約の証”を意味するということを。
そしてその指輪を男性が女性に付けるのは「結婚の申し込みとその了承」とほぼ同じ意味を持つということを。
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注)最終回じゃないですからね。まだまだ続きますんで間違いのないように。今後とも末永く宜しくです。




