第46話「レオンの異常性」
#第46話「レオンの異常性」
王都の一室――王城の奥まった応接間にて国王エドワード、王妃カタリーナ、そしてヴァルドリック辺境伯ギルベルトとその妻セレナ、更には宮廷魔道具師のエレンの五人が集まってレオンの異常性について話をしていた。
とは言えとても信じられない話でありどこかに誇張が混じっているとエドワード、そしてエレンは考えていた。
ただしエレンとしては面白い少年だと思っている。少なくとも魔道具に興味がありそれなりに知識があるというだけで好感が持てる。会って意気投合するならば弟子として育ててもいいのではないかと思考を巡らせていた。
その思考を王の言葉が遮った。
「そう言えば、もう一つ不思議なことがあったな」エドワードは話題を切り替えた。
「レオンは、ソフィアの魔力量が多いと見抜いていた。あれはどういうことだ?」
「はい。私も最初は不思議に思いましたが……それはおそらくレオンが改造した魔力視認魔道具を使ってソフィア様の魔力を見ていたからだと思います」
「魔力視認魔道具だと、何だそれは? エレン、その意味は分かるか?」とエドワードが眉を上げ、エレンの方を見た。
エレンはエドワードに促されたと感じて答えた。
「一応、話の意味は分かります。魔力視認魔道具はその名の通り、魔力を見る魔道具ですね。ただ、魔力視認魔道具は現行の魔力測定装置に取って変わられ、廃れて久しいので現存し稼働しているのはほとんどないかと。それにかなり重たいものだと思います。そのレオンという少年はそんな大きなものを持ってきたのでしょうか?」
「いえ、レオンは改造し小型化して持ち歩いております」とギルバート。
「魔道具の小型化だと? そんなことできるのか?」とエドワードは再度、エレンの方を見た。
エレナは唇に手を当て、目を細めた。
「いや、本当に冗談ではないのですか? それにしてもその少年は興味深いですね。少なくとも魔道具の知識はあるようです。そして、そのようなことが本当にできるのなら……ぜひ一度拝見したいものです」
エレンは特級魔道具師として魔道具の知識は王国のトップだ。様々な研究をしている。
しかしながらそれは過去の文献をかたっぱしから集めそれを研究し模倣したものが中心。革新的な技術もあるにはあるが魔道具の構造変更や小型化となると想像もできない。
その少年のことが俄然気になりだした。
ギルベルトは少し困ったように付け加えた。
「ただ、レオンは私たちにそれが知られるとまずいと思っているようでして。魔道具の修理や開発は“ライゼン”という男がやったことにしているのです。そして私たちもレオンがやっているということを知らない振りを続けています。現実にはバレバレなんですけどね」
「ライゼン? なんだそれは?」とエドワード王は再び質問した。レオン関連では困惑する話ばかりだ。
「はい。レオンが拾ってきた流れ者です。魔道具には素人ですが――おそらく剣聖と思われます」
「……はあ? 剣聖が、辺境にいるだと? 一体どういうことだ? レオン関連は
いろいろと訳が分からんな」
エドワードも王妃のカタリーナも思わず顔を見合わせた。
「ええ。近くの売店の者によれば、数日間倒れ込んでいた男がいたらしく、そこでレオンが不憫に思ってか食事を与え助けたのです……それがライゼンなのですが、どうやら本物の剣聖のようです。帝国で行方不明になっていた“剣聖ライゼン”と同じ名を名乗っています。そして私から見ても相当な使い手、剣聖と言われても不思議ではありません」
「なるほど。帝国の剣聖が行方不明という話を聞いたことがあるが、辺境に流れ着き倒れていたのか……何から何まで不思議な話だ」
エドワードはため息をついた。
「だが、レオンは頭が回るな、よくそんな設定を思いつくな。まだ三歳だろう」
「はい。ですが、私どもとしても公爵家たちに知られるのは避けたいと思っています。ですので、レオンが魔道具師であることは私たち、すなわち“親も知らない”という設定のままにしていただければ」
「確かに本当に魔道具の修理や開発ができるならば秘密にした方がいいでしょうね」とエレンは続けた。
それはそうだ。にわかには信じられない話ではあるが、本当にそんなことが可能であれば公爵家に知られるのはまずい。修理ができるとなれば今の魔道具生産は確実に過剰になる。
公爵家としては生産をストップする必要が出てくるだろう。今までの利益が消え、逆に大損になる可能性さえある。
そんなことになるぐらいならば……その前に修理できる人間を消す方の動きに出てもおかしくはない。
エドワードはしばし考え込み、やがてうなずいた。
「……分かった。さすがに信じがたい話ではあるが確認もせずに否定をするのもな。エレン、時間を見つけてレオンに確認だけ取ってくれ」
「はい、分かりました。できるだけ早く会いたいと思います。私としても興味深い」
ギルベルトは深く頭を下げた。
「ありがとうございます、陛下」
王妃カタリーナが穏やかに微笑む。
「ふふ、ソフィアもあの子を気に入っていたようだし……今後が楽しみね」
エドワードとしては後輩の辺境伯を守りたいので信じているふりをしていた。何か事情あっての嘘だろうと考えていたのだ。
そしてレオンに話をすればその嘘は全て露呈する。その時にはギルバートは正直に話をしてくれると思っていた。
エドワードはギルベルトが何かを隠そうとしていると考えていたわけだ。それが何かは分からないが、このような嘘を付いてまで隠そうとする意味も分からない、
とにかく時間が解決してくれるだろうと考えていた。
しかしながら、後にギルベルトの話が全て本当だと知って驚愕することになる。それが王国にとって吉と出るのか?それとも混乱をもたらす凶となるのか?現時点では誰も分からない。




