第43話「王女様の婚約者候補?」
#第43話「王女様の婚約者候補?」
王都に到着したあと、俺たちは城の中の一室へ案内された。そこは見たこともないほど豪華な部屋でまさに貴族の中の貴族といった感じだ。
少し緊張していると、父さんがいつになく真面目な顔で口を開いた。
「レオン、今回の魔力測定には特別な顔合わせの意味もある」
「うん? どういうこと?」俺は首を傾げた。
魔力測定以外に特別な顔合わせの意味?確かに同世代の子供たちと顔合わせはあるだろうけど何が特別なのだろう?ちょっと不思議に思った。
「今回の魔力測定は王女様、そして公爵家の子息2人も参加する」
「うん、それは俺も知っているよ。ミーナが読んでくれた本の内容に書いてあったからね」
王女様、そして公爵家の子息2人も一緒に魔力測定を受けることはすでに聞いている。だからその3人との顔合わせということかな?
他にも一緒に魔力測定する貴族はいるはず。同世代の子供と会うのは初めてだからちょっと楽しみかもしれない。
「そうか。よく覚えていたな。さすがレオンはかしこいな。それでな、お前は公爵家の子息2人と共に、一応は王女様の婚約者候補ってことになっているんだ」
「えっ? それってどういうこと?」思わず素っ頓狂な声が出た。
父さんの話によると、驚くべきことに、俺も王女様の婚約者候補の一人に入っているというのだ。
王女様の婚約者候補は全部で三人いるとのこと。それが二つの公爵家のそれぞれの子息と俺ということらしい。
すなわちヴェルムンド公爵家の長男カール、ザクセン公爵家の長男ハインリヒ、そして俺――ヴァルドリック辺境伯家の長男の俺・レオンが王女様の婚約者候補。
いやいや、待ってほしい。俺、まだ三歳だよ?
しかも王女様と婚約なんて……絶対にスローライフから遠ざかる未来しか見えないよ。王女様の婚約者になったら絶対に忙しくなりそうだ。
できれば今すぐにでも辞退したいけど……そんなことを自分から言い出せるわけがないよな。下手をしたら不敬罪で首が飛ぶかもしれない。さすがにそこまではないかもしれないけど目を付けられることは間違いないだろう。
ならば――王女様の前で大失態を演じて自動的に候補から外されるという作戦もあるか?
……いや、それはそれで後が怖い。王様や王妃様に怒られるかもしれない。権力者には絶対に歯向かってはいけない。怒られるようなことをしてはまずいだろう。これはどうしたものか……。本当に困ったぞ。
そんなことを考えていたら、父さんが続けた。
「とはいえ、現状では公爵家のどちらかの子息が選ばれる可能性が高い。うちのような辺境伯は、実質的に最初から脱落していると思っていい。公爵家から選ばれるのはほぼ確定的だ」
「そうなんだ」と俺は心から安堵した。
「すまんな。うちは力が無くて。公爵家の二家は魔道具生産で儲かっている。そのために味方貴族も多く権力もある。現状ではうちと比べようもないんだ」
「いやいや、全く問題ないよ。王女様の婚約者って大変そうだからね」
「えっ、本当にいいのか?」
ああ、良かった。最初から「負け確定」で本当に良かった。
父さんが「すまんな」とか言ってくれたけど、とんでもない。俺としてはむしろ感謝したいくらいだ。
公爵家に生まれなくて本当に良かった。辺境伯万歳である。適度に権力もあるし目立たない。俺のスローライフにはぴったりな位置づけと言えよう。
俺は心の中で再び決意した。俺は平穏なスローライフを貫くんだ!王都では絶対に目立つ行動は控えよう、権力者に下手に見つかったら大変だ。公爵家の2人とも下手に仲よくならない方がいいのかな?俺の味方に付けとか言われても困るしな。
俺は目立たず辺境でおいしいものを食べながら、のんびり大好きな魔道具をいじって一生を過ごす――それでいいだろう。
あとはそんな自堕落な俺を許してくれる優しいお嫁さんを見つけるだけだ。うん、三歳にしては完璧な人生設計。
これでいこう、完璧だ、これで何の問題もないはず……だよね?
そうだ、その魔道具で思いだした。とりあえず落ち着いたことだし、持ってきた魔道具の点検をすることにしよう。
オルドが言うには魔道具は移動の際に壊れることが多いとか言っていたからね。本当にそんな簡単に壊れるものなのかチェックしておきたい。
そこで俺はこっそりとオルドに持ってきてもらった魔力充填魔道具、魔力視認魔道具を軽く確認した。うん、どれも問題なし。普通に稼働している。
魔力視認魔道具を使ってイリス姉さんを見ると、相変わらずのまぶしさ。倍率を下げて確認すると綺麗に見えた。さすが姉さん、このメンバーの中ではぴか一の魔力量だね。確か天才レベルのBランクだっけか?
1年に1人いるかどうかの天才レベルの魔力量は伊達ではない。凄いや。
そんな感じで夢中になって魔道具を調整していた。だから次の言葉を聞き逃していた。
「国王陛下、王妃陛下、そして王女殿下がお越しです」
何か言っているなぐらいの感じだった。そして俺は人の気配を感じてそちらを見た。
すると、そこにはとんでもない魔力を持つ人がいた。確実に姉さん以上の魔力を持つ人がいる。凄い大きな綺麗な魔力、これは誰なんだ。
そして俺は魔力視認魔道具を外し、その場にいる王女様に向かってとんでもないことを言ってしまった。
場の空気が一瞬で凍った。
――はい、やらかしました。俺は本当に馬鹿だ……。




