第39話「王都へ出発!」
#第39話「王都へ出発!」
とうとう王都へ出発する日が来た。朝から屋敷の前は慌ただしく、荷物を運ぶ使用人たちの声が響いている。
王都に行くのは、俺、父さん、母さん、イリス姉さん、そしてオルドの5人だ。
ミーナは屋敷でお留守番になる。正直ちょっと寂しいけど仕方がない。その分、帰ったらお土産話をたくさんしてあげようと思うけどね。
俺は魔力視認魔道具と腕輪、指輪をこっそりと持参。オルドにお願いしたんだよね。時間に余裕があれば王都の人達の魔力も見たいところだけど余裕あるかな?
護衛として騎士団の人が5人同行するらしい。騎士団の人達とは初顔合わせかもしれないな。彼らの名前も覚えないと。
そう言えば、ライゼンも連れて行った方が良かったかな?一応、剣の達人とか言ってたし……いや、あの自称剣聖の中二病テンションで王都に行ったら悪目立ちになるな。
やめておこう。まずはあの病気を治してからだね。
馬車の準備も整い、父さんの号令でいよいよ出発。車輪がゆっくりと動き出すと、胸の奥がワクワクと弾んだ。
しばらくはいつもと同じような街の風景だったけど、少しずつ家が粗末な造りになっていくのが分かる。少しずつ郊外に出ているという感じなのだろうか。
そして更に進んで行くと住宅街を抜け……徐々に田畑が増えていった。どうやら郊外に出たようだ。家が少なくなり田畑が増えていく。
それと同時に馬車の揺れがちょっと大きくなってきた気がする。道も悪くなってきたのかもしれない。
父さんが俺に話しかけてきた。
「レオン、外の景色を見てごらん。これがヴァルドリック領の全景だ」
「うん!」
馬車の窓から外をのぞくと、広大な田畑が続いていた。小さな集落が点在しているけれど、全体的にのどかで静かな感じだね。
「父さん、この辺りって家が少ないよね? 土地も余っているように見える。もっと人を呼んだらいいんじゃない?」
「そうしたいのはやまやまだが……うちの領は王都付近に比べて貧しい。仕事が少ないから、若い者はみんな王都や公爵領へ行ってしまうんだ」
「なるほどね……」
土地はあるのに人がいない。前世の日本でも同じだった。みんな若い人は都会に住みたがる。現実に仕事はたくさんあるしね。都会には人があふれ、逆に田舎は人口減少、特に若手の人不足になっていたことを思い出した。
でも都会は都会できつい。まずは土地が高いんだよね。当然、家賃も高い。遊ぶところも多いので誘惑も多く、すぐにお金が無くなる。都会は楽しかったけど生活は厳しかったことを思い出す。
結局のところ、都会も田舎も一長一短。どちらがいいとは一概に言えない。
ただ父さんのように領主の立場で見たら、もっと自分の領を栄えさせて人を呼び寄せたいのだろうね。前世でいうところだと地方の知事みたいな立場だろうか。
そう考えると、やっぱり経済は大事だ。王家や公爵家が魔道具の特許や生産を独占してしまう理由も分かる気がする。
多少はうちの領にもその魔道具生産関連の産業や仕事、そして人を分けて欲しいところだ。地方が栄えないと王国全体が栄えないからね。
そうして進んでいくうちに途中で一服。そこでは、オルドが簡単な昼食を作ってくれた。さすがに屋敷にいる時のような食事は無理。簡素なものだ。
でも外で食べる食事はおいしい。こちらの世界に来て初めての経験だけど、風が気持ちよくて、味もいつもよりおいしいような気がする。
「外で食べるご飯って、こんなにうまいんだね!」
「そうでしょう? 自然の空気が一番の調味料ですわ」
「さすがオルド! うまいこと言うね」
父さんと母さんも笑っていて、まるで小旅行のような雰囲気。イリス姉さんも上機嫌。たまにはこんな感じの旅行もいいな。
久しぶりに家族みんながのんびりしている気がする。
食事が終わった後、馬車は再びゆっくりと進み、やがて父さんが地図を見せてくれた。
「もうすぐ隣の領地に入る。このまま順調に進めば3日ほどで王都に着く」
「わー、楽しみだね!」
初めての遠出。初めての王都。初めての魔力測定。俺の心は、期待でいっぱいだった。
――その時だった。
ガタン、と大きく馬車が揺れた。
「きゃっ!」と母さんの声が上がり、馬がいななき、御者の怒鳴り声が響く。
「どうした?」
馬車が止まり、外から護衛の騎士の声がした。
「前方に魔物の群れがいます。しばらくお待ちください」
父さんがやや険しい表情になる。
「……ちょっと見てくる。みんなは馬車の中にいなさい」
そう言って父さんが出て行った。魔物が本当にいるのか!俺はかなり不安になった。父さんは大丈夫なのだろうか?
しかし母さん、イリス姉さん、オルドは落ち着いたものだ。一体どういうことなのだろう?
「ねぇ、父さんは大丈夫なの?」俺は心配になってみんなに聞いた。
「心配ないわよ。あなたの父さんは強いんだから」と母さん。
「そうだよ。父さんはスパッ!と魔物を切っちゃうから凄いよ」 と姉さんも続く。
そして外を見ると……本当だ。魔物を一方的にやっつける父さんや騎士団の人達。魔物の数は少なくなっていき、しばらくしたら逃げて行った。
俺の父さんは凄い強い、ちょっと尊敬だ。
どうやら、この辺りにいる魔物はそこまで強くないらしい。なのでみんな落ち着いていたんだな。
慌てていた自分がちょっと恥ずかしい。そしてもう少し、魔道具以外の勉強が必要だと思った。
俺はまだまだこの世の中のことを知らなすぎる。何をするにもやはり知識は必要だ。




