第4話「書斎で見つけた、魔道具の秘密」
#第4話「書斎で見つけた、魔道具の秘密」
書斎に入った瞬間、俺は思わず息をのんだ。それはもう想像以上だったからだ。
――本、本、本! 壁一面、本だらけ!
棚が天井までびっしり埋まっている。まるで小さな図書館みたいだ。す、すげぇ……これは感動ものだ。
母さんの話によると、この書斎の本はひい爺ちゃん――つまり、俺の曽祖父の代に集められたものらしい。
その頃は領地もそれなりに栄えていて本を買い集める余裕もあったとか。以前はもっと魔石が高く売れたらしいのだよね。小さなものでもそれなりに高値で売れたらしい。
でも魔道具が効率よく製造されるようになって魔石の需要が増えたのはいいけど値段が一気に下がってしまったらしい。それで今はすっかり貧乏領。
本棚の立派さと今の家計のギャップが、なんとも切ない。まあでも以前の繁栄があったからこそこうやって本が読めるんだからありがたいのだけどね。
「奥の方は古代文字で書かれている書籍が多いの。だから私たちが見てもちんぷんかんぷんなの」
「手前の方は現代語で書かれている書籍が多いから手前から読むといいわよ」
棚の手前に並んでいるのは現代文字の書籍で奥に行くと古代文字の書物、どうやら誰も読めないものもあるらしい。
……まあ、どっちにしても俺も読めないんだけどね。俺はまだ文字勉強中。
「魔道具の本はこっちね」と母さんが指さした棚には、ずらりと百冊以上の分厚い本が並んでいた。
「うわ……すごい」
俺は思わず声を漏らした。
母さんに魔道具初歩の本を何冊か選んでもらって部屋に持ち帰った。
ページをめくると、図解がたっぷり。文字は分からないけど、図を見ているだけでも何となく意味が伝わってくる。
……やっぱり、これ、どう見ても電気回路だよな。
ラインの引き方や接点の配置、信号の流れ――どう見ても回路図だ。およそ理解できる。そして仕組みが単純なのかそこまで複雑でもない。
この程度なら俺でも再現できそうだ。
「読めないなら、お手伝いさんに読んでもらう?」と母さん。
「うん、それは助かる、お願いする!」と手を上げて即答した。
そしてしばらくすると俺のために、若いお姉さんのお手伝いさんが笑顔でやってきた。ミーナという名前のお姉さん。十五歳ぐらいだろうか?かわいい女の子だ。
「レオン様、私が読み上げますね!」と元気な声。
読んでもらうのに彼女に嫌がるそぶりは全く無いので良かった。むしろ嬉しそう。面倒くさそうに読まれたら俺も辛いからね。
ついでに文字も少しずつ覚えよう。読む練習だ。
「レオン様、じゃあまずここ座ってください」
でも、じゃあここ座ってと言われて俺は困惑した。そこはミーナの膝の上なんですけど???
おどおど座ると「違います、反対向きです」と言われた。ああそうか、そういうことか。俺は同じ方法を向くようにミーナの膝の上に座った。そうしたら一緒に本が読めるからね。
女の子の膝の上に座るなんて経験がないからおかしなことをしてしまったよ。でも、いずれ膝枕とかもお願いできるかな?前世での経験がないから是非体験したい。
そんな煩悩をしていたらすでに朗読が始まった。
ミーナが本の文字を指さしながら朗読していくのがありがたい。おそらく俺が少しでも覚えるようにしてくれている。
そして、その内容を追っていくと魔道具の基本構造が見えてきた。
予想通りでほぼ間違いない。
「基板(電気回路)」+「電源ユニット(魔石)」+「外枠」。
……なるほど、やはり構造はシンプルなんだな。構造自体は前世の家電製品とたいして変わらない。まあ動力に魔石を使っているところは大違いだけどね。
そして、魔道具の基板部分は“魔法インク”という特殊な液体で回路を書くらしい。
そのインクの材料は――なんと魔石を溶かしたもの。一度溶かすと一か月ほどインクとして使えるという。
なるほどね、エネルギーを導く素材そのものを溶かしてインクにしているのか。
品質の高い魔道インクは大きな魔石を溶かして作るらしい。魔石は万能だな。動力源になるだけでなく、溶かしたら回路を書くインクにもなると。それで魔道具の回路基板が作られる。
ただし一般の魔道具は小さな魔石を雑に溶かした“安物インク”で書かれた基板で作られている。
動くけど耐久性や性能が低いらしい……まるで前世の粗悪パーツみたいだな。
だから母さんはあの小さな魔石は売れないとして俺にくれたんだ。でも逆に考えるとあの魔石を溶かせば魔道インクは作れるわけだ。もしかしたら俺もすぐに基板を作れるかも?
そして――
基板にその回路が正しく描かれていれば、あとは電源ユニットに魔石をはめるだけで作動する。
外枠は装飾や用途に合わせたデザインの違いに過ぎないから適当でいい。
「ふむふむ、つまり“魔力を通す基板”と“エネルギーを供給する魔石”さえあれば完成ってことか」
声に出してつぶやくと、ミーナが首をかしげた。
「え? なんですか?」
「いや、独り言!」
――さすがに回路オタクの血が騒いでるとは言えない。うずうずしてきた。
さらに読み進めると、魔石にも属性があると書かれていた。
水、火、熱、光、闇、風、雷など――系統違いの魔石。それぞれの魔道具に対応する属性の魔石を使うらしい。
たとえば、水を出す魔道具には水属性の魔石。火を出すなら火属性。照明など光を出す道具には光属性。
――理にかなっている。魔道具は完全にエネルギー変換デバイスだ。合理的なようだけどめっちゃファンタジー!
仕組みがどんどん分かってきて、胸が高鳴る。
「これ……本の通りにやれば、俺にも魔道具が作れるよな?」
思わずそんな言葉が漏れた。
まさか一歳児(もうすぐ二歳)がそんなことを考えているとは誰も思うまい。
けれど、俺の中ではすでに様々な回路設計図が浮かび始めていた。
――やばい、めっちゃ楽しい。
この世界、面白すぎる。早く魔道具を作ってみたい。
そう思って、ふと気が付くと頭の後ろにやわらかいものが当たっているような気がする。なんだろう?と振り返ってみるとミーナの胸だった。やわらかいけど張りがある、これはとてつもなく素晴らしい。
魔道具もいいけどもちろんミーナのお胸様も素晴らしい。思わずちょっと頭を後ろに押し付けてしまったよ。
これは勉強にもなるしミーナの胸も楽しめるし二重の意味で最高かもしれない。
「どうしたんですか? レオン様」
「いや、なんでもないよ。本を読んでくれてありがとう。もっと他の本も読みたいし、これからも頼める?」
「もちろんいいですよ」
なんと了解を得てしまった。これからしばらくはいろいろな意味で幸せな日々を過ごせるかもしれない。これなら文字を無理に覚えなくていいかな?




