第3話「魔道具の動力源、それは魔石」
#第3話「魔道具の動力源、それは魔石」
俺は順調に育ち、もうすぐ二歳になる。歩くのもすっかり慣れてきたし、話せる言葉もかなり増えてきた。普通はもう少し遅いよね。どうやら俺は早熟っぽい。
最近は本を読むのが日課になっている。とは言え俺はまだ文字が読めないんだ。だから眺めるだけなんだけどね。それでも前世の家電製品と同じ部分が多いのである程度は理解できる。特に基盤にある回路は完璧と言うほどに理解できる。
そんなある日、ふと面白いものを見つけた。
――魔道具の図解の中に、必ず描かれている“何か”。本体の横や基盤の近くにケースがあり、そこに石のようなものがセットされている。これは何だろう。
前世の感覚で言えば……これはもしかして電源ユニットか?
・外枠
・回路基板
・ケース(電源ユニット?)
魔道具のその全てが基本的にこの3つを組み合わせた構造に見える。
そうだな、いくら魔道具でも動力源がなければ動くわけがない。前世でも電気製品は電気がなければただの邪魔ものだ。こちらの魔道具も何らかの動力源があるはず。
なら、この世界では何が“電気”の代わりをしているのだろう?もしかしてこの石のようなものが動力源になっているのかもしれない。
その疑問が気になって仕方がなくなった俺は母さんに聞いてみることにした。
「ねえねえ、母さん、この本にある、これはなあに?」
「ん? ああ、それは魔石ね。魔物を倒すと出てくるの。それをセットすると魔道具が動くのよ」
「魔物……?」
「そうよ。レオンはまだ魔物は見たことないわね。外に出るとね、魔物って人を襲う恐ろしい動物がいるの。でもそれを倒すと魔石が取れるのよ。その魔石を魔道具にセットすると動くの。魔力を供給してくれるのよ」
……なんと。
電気の代わりに魔物のドロップアイテムがエネルギー源?
これぞ異世界ファンタジー。科学じゃなく魔力で動く文明だ。異世界すげー!
俺が「その魔石を見てみたい」と言うと、母さんは笑って小さな袋を持ってきた。
中には大小様々の色付いた小さな結晶のような石がいくつも入っていた。くすんでいるもの、光が反射して光っているものなど様々だ。魔石にもたくさんの種類があるのかな?
「うわぁ……これが魔石か!」
俺は感動した。触ってみると、ほんのり温かいような気もする。触れてみると何かが流れているような、そんな感覚もあった。もしかしてそれが魔力なのかもしれない。
「大きい魔物を倒すと、もっと大きな魔石が取れるのよ。それは高く売れるの。でもこのぐらいの大きさの魔石は小さすぎて魔力が弱くて使い道がないから売れないの。だから欲しかったら全部レオンにあげるわよ」
母さんはそう言って笑った。
「本当!? 欲しい欲しい、これ全部頂戴!」
「いいわよ。売れない小さいのはまだまだあるから、欲しかったらレオンにあげるわね」
なるほど、経済の基本はここにあるのか。魔物=資源だよ。魔石はこの世界の“電池”であり“燃料”でもあるのだ。
ただ……その説明の中に少しだけ引っかかった。
「どうやって魔石は取れるの?魔物を倒すと魔物が魔石に変わるの?」と聞いてみた。異世界小説なんかではそんな感じで記載されていたような気がする。確か魔物が消えてドロップするんだよね。
「ぷっ、何を言っているのレオン、魔物が魔石に変わるわけないじゃない。魔物の心臓近くにあるから抉って、取り出すのよ」と母さんは笑っていった。
「ええっ……、抉るの?」
なにそれグロい。異世界最高だと思ったけどちょっと舐めすぎたようだ。魔物を倒して解体して心臓付近から魔石を取るらしい。そりゃそうか。魔物が魔石に変わるとか異世界と言うよりはゲームの世界だよな。
そんなグロいことを平気で言う母さんにもちょっとドン引きしたのだがおそらくこれがこの世界の常識だ。俺の方が慣れないといけないのだろう。
とは言え俺には魔物を倒したりとか心臓近くを抉ったりとかちょっと無理かもしれない。異世界、やっぱり油断ならないぞ、これは。
それでも「小さな魔石はほとんど値が付かないから全部あげる」と言われ、手のひらいっぱいの魔石をゲットした。うん、これは全部俺の宝物だね。とにかく嬉しい。
色がちょっとずつ違う?汚れているので良く分からないけど種類があるのかな?でもこうやって見ると普通の石だよね。1cmから3cmぐらいまで大小、様々だ。聞くと5cmぐらい以上だとそれなりに使えるので売れるらしい。
「魔石が動力源か……。まるで前世の電池、バッテリーだな」
思わず口の中でつぶやく。
となると、魔石の魔力が尽きたら魔道具は使えなくなるんだろうか?魔石をセットすると使えるということは交換もできるのかな、あと魔力が尽きた魔石は使い捨てなのか?それとも充電可能?
うーん、気になる。実に気になる。いろいろとまだまだ分からない。
細かい原理は分からないかもしれないけど知りたいことばかりだ。
もっと知りたい。そう思った俺は母さんに「他の本も見たい」と頼んだ。
すると「本が読みたいなら書斎があるわよ。書斎は誰もいないけどね」と教えてくれた。
どうやら普段は誰も使っていない書斎があるらしい。それは素晴らしいじゃないですか。でも不思議だよね。
「何で書斎は誰も使っていないの?」
「みんな忙しいからね。ギルは昼間は魔物退治や書類整理で忙しいのよ。私もそれを手伝っているのよ」
「そっか、みんな仕事で忙しいんだ」
「だから書斎はレオンが好きなだけ使っていいわよ」
――なんと書斎を好きなだけ使っていいそうだ。これはありがたい。他にも本があれば魔道具の詳細な原理が更に分かるかもしれない!
俺はこの世の中の魔石や魔道具の原理はまださっぱり分からない。そういった未知の知識が詰まった場所、書籍……が我が家にある、そして普段は誰も使っていないから使い放題だと!?
本棚いっぱいの書物を想像して、胸が高鳴る。もしかしたら魔道具や魔石の仕組みがもっと詳しく書かれた本もあるかもしれない。
俺は母さんに手を引かれながら、初めての書斎へと足を踏み入れた。
これはもうワクワクが止まらない。




