第37話「王都と王家の勉強」
#第37話「王都と王家の勉強」
今日からは、しばらくミーナと一緒に勉強の日々になる予定だ。もうすぐ三歳の魔力測定で王都に行くからね。
その前に少なくとも王様の名前は覚えないといけないと言われている。まあ、それぐらいは大丈夫だとは思うけどやや心配。記憶力はあまり自信が無い。
好きなことだったら難なく覚えることができるけど、前世で典型的な理系だった俺は興味の薄い社会とか国語とかの教科は壊滅的だった。
だから三流大しか行けなかったんだよね。こっちではどうなるかは分からないけど、苦手な部分も少し頑張ろうと思っている。
父さんから渡された本――『王国基礎史』。
表紙は立派だけど、内容はびっしりと文字が詰まっていて、正直ちょっと怖い。
これと比較すると図解がたくさん入っている魔道具の本の方が圧倒的に楽しい。文字だけの本を見ると、どうしても遠い目になってしまう。
とは言え、今は勉強するしかない。
「さあ、レオン坊ちゃん。今日からしばらくはこの王国の本を一緒に読みましょうね」
ミーナは相変わらず優しい笑顔で、俺を膝の上に座らせてくれた。
ああ、やわらかくて暖かい。そしてかわいい女の子とぴったりとくっつくこの距離感。これだけで頑張れそうだ。
「まず最初は王家についてです。王家の名前は……アストラル家になります」
「アストラル?」
「はい、アストラルは“星”という意味があるそうです。星のように国を導く、そんな意味だとか」
「へえ、かっこいいね」
アストラル家――王家の名前からして、もう強そうだ。そして国の名前はアストラル王国ということになるのかな?
「ならばこの国はアストラル王国なの?」
「さすがレオン坊ちゃん、かしこいですね。その通りです!」
ふふふ、この世の中ではたいしたことない話でも大げさに褒めてくれる。俺はうれしくなって更に頑張っちゃうよ。
でも天狗にならないようにだけは気を付けないとね。
「国王は、エドワード・フォン・アストラル陛下です」
「ならば、俺は『エドワード王』と呼んだらいいのかな?」
「そうなりますね」
「エドワード王って、どんな人なの?」
「穏やかですが、とても聡明で現実的な方だそうです。先代に続いて魔道具経済で国を富ませた、偉大な王様なんですよ」
「魔道具……経済?」
「魔道具を国の主な産業にしたんです。今の国の豊かさはそのおかげなんです。あまり大きな声では言えませんが、うちの領はその波に乗り損ねてちょっと厳しい状況ですけどね」
ふーん。これは前世でいうところの“産業革命”っぽいな……この国、結構やるじゃん。とは言え、うちがその波に乗れていないのは残念なところ。
父さんというか……爺ちゃんの世代が波に乗り遅れたという感じかな?まあ今更それを言っても仕方ない。
そう言えばオルドが2つの公爵家が魔道具生産していると言っていたような気がする。
すなわち、波にうまく乗ったのがその2つの公爵家ということなのかな。
まあ、その辺りはおいおい確認していけばいいだろうね。
「王妃はカタリーナ様。教育にも厳しく、王子や王女を立派に育てておられるとか」
「厳しいの? 怖そう……ちょっと苦手かも」
「大丈夫ですよ、優しい方ですから。厳しいというよりは芯の強い方だということですよ」
なるほど、王様はエドワード様で、王妃はカタリーナ様ね。これだけは最低限、覚えないと駄目だろうね。
「他にも家族はいるの?」
「いますよ。第一王子はユーリウス殿下。六歳で強い魔力をお持ちのようです」
「強い魔力って、イリス姉さんみたいだね。俺は全然ダメなのに……」
「焦らなくても大丈夫ですよ。坊ちゃんは坊ちゃんの良さがありますから」
いや、そう言われると逆にプレッシャーなんだけどな。とにかく、この世の中が魔力マンセーの考えだったら落ちこぼれ扱いされるかも。それはちょっと嫌だな。
その場合はニートのように籠って魔道具開発を進めるか?
「第一王女はソフィア様。三歳です。レオン坊ちゃまと同い年ですね」
「へえ、俺と同い年なんだ」
「金髪に碧い瞳で、とても可愛らしいお方だとか」
「ふーん……(いや、気になるじゃないか)」
父さんによると三歳の貴族はみんな一緒に魔力測定をするという話だったよね。
ならば王女様も一緒に魔力測定をするのかな?ならば会えるかも。どんな女の子だろうね?同じ歳の女の子ということならば興味がある。
でも待てよ。変に気に入られたら逆に面倒かも。責任のある仕事とかに抜擢されたら大変。
俺がこの世で目指すのはスローライフだ。絶対に目立たないようにしよう。よし、王女様は話しかけられない限りはスルー一択で決定。
「続いては公爵家の説明になります」
ミーナが本のページをめくると、そこには二つの家の名前が並んでいた。魔道具生産しているのがこの二家なのだろう。
魔道具は好きだからちょっと羨ましい。
「公爵家の一つ目はヴェルムンド家。魔道具の生産で富を築いた家です。王都と接しており王都から見ればすぐですね」
「やっぱり公爵家は魔道具が凄いんだ! おれの好きなやつ!」
「ですね。そのヴェルムンド公爵の当主はゲオルグ様。商売上手だそうです」
「なんか、魔道具ですごく儲かっているらしいね」
「はい。そして奥様のエリーゼ様は社交界で有名な方。息子さんのカール様もかしこい方とのことです。魔法をすでに使っているという噂もありますね。坊ちゃんと同じ三歳です」
「……三歳で魔法? 凄いな」
「そうですね。でも、いずれ魔法は習うことになると思います。そこまで気にしなくてもいいと思いますよ」
ほう、魔法は習うのか?いつ習うのだろう。まだ姉さんが使っているのを見たことがない。魔道具も興味深いがやはり魔法も興味深い。
魔法については、是非ともいろいろと勉強したいところだ。
「ではもう1つの公爵家について勉強しますね」
「うん! お願い!」
「もう1つの公爵家はザクセン家と言います。やはり魔道具の生産で有名な家です。他国との貿易でも有名な家ですね。魔石を輸入して魔道具を輸出しています」
「へえ、外国との繋がりがあるとか凄いね」
「当主はフリッツ・ザクセン公爵。頭の良い方として知られています。息子さんのハインリヒ様も頭脳明晰とのことです。やはり坊ちゃんと同じ三歳です」
「また三歳!? そして、なんでみんなそんなに優秀なんだよ……」
「坊ちゃまも十分優秀ですよ」
うーん。ライバル視とかされても困るな。どうしたものか?公爵家の2人についてはどうしたらいい?話しかけられたらどうしよう?友達になるべきかどうか?




