第32話「姉さんの魔力も見えた!」
#第32話「姉さんの魔力も見えた!」
魔力視認魔道具の修理ができた。それで魔力が見えるようになった。それがとにかく楽しい。人でも魔石でも魔力が揺らめくのが見える。
更に魔力視認魔道具は大きくて動かせないという弱点があったので小型化することも成功、持ち運べるようにもできた。
しかしそこで問題があった。姉さんの魔力が強すぎて直視できなかったのだ。とにかく、まぶしすぎる。これではどのような種類の魔力なのかさえ分からない。
ということで次は姉さんの魔力も見ることができるようにしたい。どうにかして調整機能を付けたいと考えた。
単純に考えれば、増幅回路の倍率を下げた回路に変えるだけでいいのだよね。
でも、それだと魔力の少ない人――つまり俺みたいなタイプ――では、魔力がまったく見えなくなってしまう可能性が高いんだ。
魔石の魔力も、俺と大差ないので視認できなくなるだろう。それではちょっと残念だ。いくつかの倍率のゴーグルを作るというのはありなんだが……いちいちゴーグルをかけなおすのは利便性に欠ける。
そこで俺は思いついた。
「なら、可変式にすればいいか?」
可変にするというのは電気回路では普通にある。例えば照明の明るさを変える時なども増幅率を変えたりしている。ならば魔力を通す回路でも同じようにできる可能性がある。
つまり魔力の強弱に合わせて倍率を変えられる構造にするのだ。姉さんのように魔力が大きい人を見る場合には倍率を下げればいいだろう。逆に俺のように魔力が小さい対象には倍率を上げられるような形にすればいい。
となると……増幅率はむしろ高めに設定しておいて、可変抵抗で自由に調整できるようにすればいいんだよな。
普段は抵抗を上げて倍率を低く――つまりまぶしさを抑え、必要な時だけ抵抗を下げて倍率を上げればいい。
「うん、とりあえずの方向性はこれで決まりだな」
俺は作業机に向かい、増幅回路の一部を分解。そこに可変抵抗を組み込み、簡単なつまみで調整できるようにした。
さらに、ON・OFFスイッチも追加。よく考えたら常に稼働している必要はない。使うときだけ動作すれば十分だ。魔石を取り外してもいいがいちいち外すのも面倒だしね。
「よし、これで完成――倍率可変式魔力視認魔道具だ!」
再び姉さんに協力してもらうことにした。
最初は倍率を最大近くにして、姉さんのいる方向を探した。すると一方向に光の揺らめきが見える。おそらく姉さんの魔力だろう。
「おお、こちらの方向だな。やっぱり遠くにいても光ってる……さすが姉さんだ」
遠くにいるのに光が揺らめく、まるで灯台みたいにわかる。
その後は少しずつ倍率を下げながら近づいていった。
「おっ、いい感じかも。これなら近づいても大丈夫そうだ」
姉さんの部屋にたどり着き、倍率をできるだけ下げた後にそっとドアを開けた。
中には、姉さんがやっぱりいた!
それにしても凄いな。
倍率をかなり下げているにも関わらず、姉さんの魔力は俺の何倍も明るいように見える。単純に考えて俺の数百倍の魔力か?いやそれ以上の差があるのかもしれない。
「……どれだけ差があるんだよ」
実際にその倍率で俺の魔力を同じ倍率で見てみたがほとんど何も見えない。光が揺らめいているかもしれないというレベル。輝きがまったく違う。これが才能の差という奴なんだろうね。
倍率を押さえているにもかかわらず姉さんの魔力は輝いている。色も様々な種類だ。種類が多いのは俺と同じだね。人の魔力とはそういうものかもしれない。
それにしても姉さんは本当に凄いな。魔法の天才ってやつなんだろう。
俺はさすがにちょっと落ち込んでしまった。
「姉さんはやっぱり凄いな。魔法の天才と言われるだけあるよ」
「レオン、どうしたの? レオンも凄いよ」と姉さんが励ますように言ってくれる。
「いや、俺なんか全然、魔法の才能は全くないしね」
「そんなことないよ。レオンは凄いよ。たくさんおしゃべりできるし、歩けるし、凄いよ」
ああ、俺は馬鹿だ。変なことで落ち込んで姉さんを心配させてしまっている。
そうだな。天才と比べても仕方がない。それは前世でも良く分かっていたことだ。天才は何もしなくても光るんだ。
そんな天才に勝とうと思ったら……努力するしかないんだよね。それは前世でも今世でも同じだ。
でもそう考えるとやっぱり嫌だなぁ。
俺はもう努力はできるだけしたくないんだけどね。今世ではスローライフを楽しみたいんだ。働きたい時だけ働く、そんな自堕落な生活をこのまましたいんだ。
だからこそ“魔道具”があると考えよう。魔道具があればある程度は魔法の代用になるはずだ。
俺はたいして魔法が使えなくても、魔道具を通じて魔法の力を形にできるはず。魔法を扱えないなら、魔法を作る人間になればいいよな?
前世の知識である程度は魔法使いと同じようになれると思う。
「うん、俺は魔法使いじゃなくて、魔道具使いでいいや」
才能には勝てないからがっくり……そんな気持ちはまだある。それが少し胸に引っかかってはいるけど、そればかりを気にしても仕方がない。
何よりも姉さんに心配をさせて気を使ってもらっている。これじゃ駄目だよね。俺は俺の道を作っていこう。
俺には……魔道具があるんだから。




