第26話「ギルベルトの決断」
#第26話「ギルベルトの決断」
ギルベルトとセレナはオルドからの報告を聞いて唖然とした。以前の報告で魔道具の修理だけでもびっくりしていたのだが、今度は一から魔道具を作ったという。
現存の魔道具と言えば過去の文献をなぞったものしかない。基本的に回路をそのまま模倣しているだけだ。
それなのに、レオンはどうやって新しい魔道具の構造を知ったのか?もしかしたらこれまでに修理したものをなぞったのか?
しかし魔道具に詳しいオルドによると、この世の中にはない魔道具の可能性が高いとのこと。過去の文献では可能性を示唆するものはあったがその構造は分からないはず。すなわち過去の文献にもないものを一から作り上げた?
全てが常識外れで、もう意味が分からない。ともかくオルドに言われたように秘密保持は絶対だ。まずはギルベルトとセレナはまだレオンが魔道具を修理するなどの異常性を知らないことになっている。だから魔道具修理士のライゼンが作った設定を受け入れる必要があった。
あとは娘のイリスと手伝いの人達にも内緒にさせる必要があるだろう。どうやらレオンはイリスの魔力量の多さに目を付けて魔石への魔力封入を実現したらしい。魔石の色が変わるとか、他に知られたら大変なことだ。こちらも秘密保持が必要だろう。
早急にその辺りを進めるとして、ギルベルトは他に思いつくことがあった。
少し考え、そしてギルベルトは新たな提案をした。
「ならば別倉庫にある過去の魔道具もレオンには見せようと思う。オルド、どう思う?」
「あそこには様々な魔道具があるので坊ちゃんには丁度いいですね。ただし、あそこには魔道具の武器も多数ありますね。それを坊ちゃんに見せるんですか? さすがに危険だと思いますよ。武器はまずいです」
「ああ、それは分かっている。でもレオンは賢い子だ。その辺りの危険も分かるだろう。そしてそれらの魔道具を見ることで新しい開発をするかもしれない」
ギルベルトは冷蔵庫などの魔道具の修理でいろいろな知識を付けたレオンならば他の魔道具も見せることで新たな可能性が出てくるのではないかと考えたのだった。
しかしそこには魔道具の武器もある。さすがに危険であると言えた。
そこでセレナは反対した。
「私は反対、さすがに武器はまだ早いわよ。せめて武器以外だけにしましょう」
「それもそうだな。オルド、武器以外の魔道具をレオンに見せるように手配してもらえるか。それならば問題ないだろう」
「分かりました。そのようにいたします。レオン坊ちゃんのことですから新しい魔道具が見れるとしたら大喜びされるでしょうし。何らかのヒントにしてくれる可能性はありそうです」
魔道具の武器……。
それは以前は重宝されていた。特に戦争時などは魔力が少ない人間でも強力な武器として使えたのだ。
しかし問題もいろいろとあった。
とにかく故障することも多かったのだ。武器ともなると一般の魔道具と違い移動させることが多く、どうしても故障する率が高くなる。当然のことながら故障すると使えない、邪魔な荷物になるだけで大変だった。高価な商品なので捨てるわけにもいかない。
また魔道具武器は多量の魔力を必要とするので何度か使うと魔石の魔力が切れる。多数の魔石が必要になり使うだけで莫大なコストがかかった。そうして以前は重宝されたものの、その後は魔力のある魔法使いを多数集めた方がいいという流れになり廃れた。
それはそうだろう。いつ壊れるかもわからない、しかもコストがかかる魔道具武器を作るよりも、多彩な攻撃もできる魔法使いを育てた方が早い。
魔法使いは接近戦には弱いという弱点はあるがそれは軍が守ればいいだけの話だ。戦術でカバーできる。
そうして魔道具武器は廃れ、魔法使いを育てる流れになった。三歳の時の魔力測定はその流れの一環だ。そこでイリスは魔力量が多く魔法の天才判定を受けている。
そうして魔道具武器は使われなくなった。もはや過去の遺物とされている。
しかしながら……魔石に魔力を封じることができるならばコストは大きく下がる。ギルベルトはそう直感したのだった。
修理もできるレオンに見せればすぐに使い物になるかもしれない。故障が少ない魔道具武器の開発も可能かもしれない。大きな可能性を感じた。
とは言え、すぐに魔道具の武器が必要なわけでもない。そして何よりも二歳児には危険だ、危険すぎる。さすがに今のレオンには早いだろうという、セレナとオルドのもっともな指摘もありそこは断念した。
また倉庫には魔道具武器以外にも多数の魔道具がある。
稼働するものも故障したものもあるだろうが今のレオンならばそれらを修理するなり、それらの構造を見て新しく何かを開発するかもしれない。
そう考えてオルドに魔道具倉庫を案内するように指示した。
そうしてレオンは新しい魔道具をいろいろと見ることになる。もちろん武器の魔道具は見てはいけないと言われても我慢できるはずもなく……
レオンの魔道具開発はこの後どうなっていくのか?それを予想できる人間は当然のことながらいなかった。
レオンが前世の知識を使って更なる暴走をしそうな状況であるが、果たしてどうなるのか。




