第20話「魔力充電、初めての実験」
#第20話「魔力充電、初めての実験」
魔道具に関係して魔道インクの改善、魔石への魔力封入などいろいろと考えたけどすぐには無理っぽい。
そりゃ俺が今すぐ考え付くようなことは他の人も思いついてやっていることだろうからね。みんな、いろいろと考えて現行の方式を選んでいるのだろう。
まずは値段の付かないような小さな魔石でも同じ属性の魔石を集めて溶かせば高品質になるかもしれないと思ったけど無理だった。
小さな魔石は属性を判別するのが困難。だからそのまま属性構わず混ぜて溶かしてインクにするらしい。
そうなると不純物が多いから品質が落ちるのか?それともいろいろな属性(水とか火とか)の魔石が混じっているから品質が落ちるのか?理由が分からない。
できればその辺りの基礎実験もしたいけど今は無理。
そして魔力切れの魔石に魔力を封じるというのもできればやってみたいけど、どうやったらいいのかさっぱり分からない。魔石は手に入るかもしれないけど、そもそも魔石に封入する魔力をどこから持ってきたらいいのか?って話だよね。
文献でも漁れば出てくるかもしれないけど今の俺には無理。
ということで、その辺りはいつかやりたいことリストにだけ入れて諦めた。そして、今できること、すなわち魔道具の修理を続けた。
魔道具の修理はおもしろいし家族にも喜んでもらえるので俺にとっては一石二鳥だ。
あと回路を描く基板も入手した。基板は思ったよりも安かったのでオルドに頼んで買ってもらったんだよね。素材自体がたいしたものではないみたいだ。
基礎実験の前に何らかの魔道具を作るのもいいかもね。また、素材の研究もするといいかもしれない。
そうして魔道具の修理を続けているうちに、魔力が抜けた魔石をいくつか入手できた。
修理のために集められた魔道具の中に壊れているようで、実は魔石の魔力切れなだけのものがあったからだ。
魔石を交換したら、何事もなかったように再び動き出した――つまり、これは故障ではなく魔石の魔力切れだったということだ。
ならばこれを使えば魔力を魔石に封じる実験ができるんだけどな。でも封入する魔力をどうする?
そう考えていたら1つ思いついた。思いついたからにはやってみよう。
「よし、これで実験できるかな?」
俺は机の上に透明な魔石をいくつか並べた。
魔力がほとんど残っていない、いわば“空の電池”のようなものだ。となると前世と同じように充電器と同じような仕組みで魔力を入れることができるかもしれない。
いわば魔力充填?良い言葉が見つからないがこれでいこう。うまく再び魔力を封じることができれば、理論上は再利用が可能になる。
まずは魔石に手を当ててみた。
……おお? なんか吸われている気がする。
手のひらからじんわりと力が抜けていくような感覚だ。これが魔力を吸われているという感覚なのかもしれない。
やっぱりね。この世の中では人にも魔力があって魔法が使える。俺にも魔力があると思ったけど案の定あったようだ。
「これ、いけるんじゃないか?」と思ったのも束の間、途中から逆に魔石から力が戻ってきているような感覚もあった。
「……は?」
うーん。どういうことだ?まるで水を注いだら、また戻ってくるような――そんな妙な感覚だ。魔力が一旦魔石に入ってまた手に戻ってきているような気がする。まあ、ある意味当たり前かもしれないけどね。
取りあえず、人からの魔力充填はそのままでは無理だった。それはそうだよね。触れただけで魔力充填できるのなら既に誰かがやっているだろう。やはり俺は考えが浅い。
でも、すぐにあることに気が付いた。
「そうか。これ、一方通行にしないと駄目だ。その辺りも充電器と同じかもしれない」
前世での知識がよみがえる。
電気回路でも、充電には逆流防止――ダイオード、いわゆる“整流回路”みたいな仕組みが必要だった。魔力も同じように流れがあるなら、逆流防止の“整流回路”が必要になるのかもしれない。
思い出すのは冷蔵庫の回路だ。
あれにも魔力を一方向に流すような“整流回路”があった。
「うん、あの修理はなかなか大変だったけど……やはりいろいろな回路が組み込まれていたので知識の再確認、復習としては役に立つな。今後も、たまには大物の修理もした方がいいだろう」
ともかく新しいヒントが生まれた。ならばやってみよう。回路基板に魔法ペンで魔力の流れを一方向に制御する“整流回路”を書いた。そして魔石を入れるソケットを設置
その上に5センチほどの魔石をセット。
「よし、これで“簡易魔力充填魔道具”の完成だ!」
手のひらの上に簡易魔力充填魔道具を載せて、静かに魔力を流す。
「……おお、吸われてる! 吸われてる!」
魔力がすぅーと流れ出していく感覚。なんだか妙な気持ちだ。
ただ――なかなか満タンにならない。
「こりゃ、ずっと持ってなきゃ駄目か……」
小さな魔石ならともかく、大きめのものだとどれぐらい時間が必要なのかもわからない。
「うーん、面倒だな。腕輪タイプとかにして、寝ながら充電できるようにしようかな。」
ついでにもう少し小さい魔石は指輪タイプにしたら、常時充電できるかも?
そうして、試作品を腕と指に付けたまま眠ることにした。
翌朝。
目を覚まして魔石を見ると――
指輪型の小さな魔石は少し色が戻っている。充電されているっぽい。一方、腕輪型の大きな魔石はほんのり輝いている程度だった。
「うーん……俺の魔力量じゃ、大きい魔石は難しいのか。」
そのとき、ふと一人の顔が浮かんだ。
「そうだ、姉さんだ!」
イリス姉さんは剣と魔法の天才だ。
3歳児が行う魔力測定で相当に魔力が高い、天才クラスと言われていた。ならばこの魔石に魔力を吸わせるのもすぐにできるかもしれない。
「姉さんにお願いしてみよう。そうすれば腕輪型の方もすぐに充電できるかも。うまくいけば“魔力充電魔道具”の完成だ!」
俺は試作機を握りしめ胸を高鳴らせながら姉さんを探した。




