第160話「小型武器、初実験」
#第160話「小型武器、初実験」
俺とエレンさんは小型魔道具武器の性能実験をすることにした。オルドには小さな魔石を加工してもらって準備が進んだ。
また、魔道具とはいえ、その中身は魔法になる。エリシアさんにも相談して、時間を取ってもらった。実験段階で魔法の専門家がいるのは心強い。
三人して向かったのは騎士団の使う魔法訓練所。
武器の魔道具の秘密が漏れたら困るので、人払いをしようかと思ったのだけど……そもそも人がいなかった。
もともと、うちは魔法使いが少ない。わざわざ人払いをする必要もなかったようだ。
ちなみに小型武器を固定する台も作ってある。いきなり人が構えて撃つのは危険だからね。威力が高すぎて筒が破裂したら危険だし、反動で腕を痛めるかもしれない。その辺りのテストも兼ねている。
少し距離を取った位置から操作することにした。スイッチを紐で引く形だ。
更には暴発対策としてエリシアさんに盾を構えてもらった。俺はその盾に隠れるような位置からスイッチ操作することになる。やはり怖い。安全が第一なのだ。
まずは様子見のために倍率は最小。使う魔石は風魔法タイプ。そして一番細い筒から試した。
「準備はいいです」
盾を構えたエリシアさんの声が聞こえたので、その後ろから俺が紐を引いた。
すると、軽い衝撃音とともに、十メートル先にある人型の的に揺れが走った。これは魔法が当たったということだよね?
「これは凄い! さすがレオン、天才です!」
エレンさんが目を輝かせた。みんなで的に向かった。その的を確認してみると、目立った損傷はない。あれれ?
俺は状況が今一つ分からないので、エリシアさんに聞いた。
「これ、威力はどうなんだろう?」
「普通の人が受ければ、それなりに痛いと思いますよ」
「普通の人って?」
エリシアさんが普通の人とか言うので少し疑問に思った。
鍛えている人と鍛えてない人の違いかなと思ったら少し話が違った。
「魔力の大きい人は、魔法を受けてもダメージを受けにくいのです。理屈としては身体の表面に魔力障壁があるとされています。なのでこの魔道具から出る風魔法も魔力の高い相手には全く意味を為さない可能性があります」
「つまり、魔力が低い相手には有効。でも魔力の高い相手には厳しいということ?」
「そういうことですね」
何ともこの世の魔法の世界は奥深い。これでは魔力マンセーじゃないか。魔力が小さい人は不利すぎる。
「だったら、魔力の高い魔法使いは圧倒的に有利じゃん」
「はい、その通りですよ。魔法使い同士が戦ったら基本的には魔力の大小で勝負が付きますね。魔力の小さな者が大きな者に勝つには、同じ場所へ精密に連続で当て続ける必要があります。それで魔法障壁が薄くなった時には攻撃が通ります」
えええ……魔力の大きさで勝負が決まる?生まれ持っての資質の話で俺はもう駄目確定じゃん。
この世界では俺は最弱確定?魔力の大きさだけで決まるんだったら、どうしたって魔法使いには勝てないよ。
「ただし、魔法使いが最強と言えばそうとも限りません。物理攻撃は普通に通りますから。なので魔法使いを倒すには接近戦を仕掛ければいいのです」
「なるほどね。相性があるわけか。魔法が弱い人は剣を極めればいい。体を鍛えるのもあり、ライゼンみたいにね」
「そういうことになります」
やはり俺は剣も頑張らないといけないな……。そう言えばイリス姉さんは魔力が大きいし剣の才能もある。本当に最強じゃないか。
となると俺は姉さんに守ってもらったらいい? でも、それはさすがに男として恥ずかしいよな。当然、姉さんがいつも隣にいるわけでもないし……。
そして俺は更に思いつくことをエリシアさんに聞いた。
「となると、この武器も連射性能がないと、魔法使いには通用しないということ……」
「はい、おそらくは」
なかなか厳しい。魔石が小さいから連射も厳しいだろう。すぐに魔力が尽きる可能性があるからね。
普通の人相手なら有効でも、対魔法使いでは工夫が必要かも。
例えば、この魔道具武器の攻撃で牽制して接近戦に持ち込むなどの工夫が必要かもしれない。
その後、倍率を上げてテストした。倍率を上げるごとに威力は確実に増す。的の揺れが明らかに強くなる。
ただし、固定台に伝わる反動も徐々に大きくなったようにも見える。もしかしたら手袋とかカバーとかが必要かもしれないな。その辺りは実際に手で持って使って実験しないと分からない。
続いて他の太さの筒も試す。ドランさんに作ってもらったのは三種類あるからね。
すると、筒が太いほど魔力は広範囲に拡散するようだった。威力は落ちるが、攻撃範囲は広がる。うまくいけば範囲攻撃ができるかもしれない。威力が落ちるということで、攻撃というよりも牽制用になるかも。
距離も検証した。
やはり距離が伸びると威力は減衰した。風魔法は空気抵抗の影響をそれなりに受けやすい。
それでも一番細いタイプは、十メートルほどまでは明確な衝撃を与えられている。
十分実用圏内のような気がする。
「風魔法なら細筒型が最適かな。太いものは状況によりけりだけど威力がかなり落ちるよ」
エレンさんが頷いた。
ともかく特に損傷もなし。暴発もなし。現時点では回路も安定しているように見える。
スタートとしてはかなり順調だろう。
「とりあえずデータをまとめよう。もう少し実験をして余裕ができたら水と火も試したいね」
「はい。レオン、いろいろ試していきましょう」
エレンさんがワクワクを止められないという感じだ。ともかく、風がこの結果なら、他属性も期待できる。
魔法使い相手には厳しいかもしれないけど、それなりに形になりそうな気がする。
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