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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
1-2章「謎の男性との出会い」

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第15話「中二病、再発中の剣聖さん」

#第15話「中二病、再発中の剣聖さん」


 ライゼンが仕事が欲しいと言い出して困った。そこで話を聞くと剣が得意だとのこと。そして剣聖だと言い出した。いいやつではあるのだが、中二病なのがちょっとやばい。まあ剣聖の設定なのか所作はしっつかりしているんだけどね。

 剣の実力もおそらくそれなりにあるだろうから言うことは聞いておこう。そこで俺は剣を教えてほしいと伝えた。


 すると「剣はまだ早い。まずは一日三十分、走ること」と言われた。

 俺はそれ聞いて走ることを日課にすることにした。まあ確かにそうだろう。さすがに二歳児に剣は早すぎる。

 それに俺は走ることは嫌いではないから丁度いい。


 さて、いつ走るか――昼は暑いし、夜は危ないから駄目だな。

 考えた結果、前世の習慣も思い出して、早朝に走るのが一番だという結論に至った。


 懐かしいな。前世でも、社会人になって仕事が地獄になる前までは、毎朝ランニングをしていたものだ。

 あの頃の朝の空気は最高だった。澄んだ空気が気持ちが良い。そして最高だと言えるもう一つの理由がある――それは美人ランナーの存在である。


 前世では、朝の公園や河原を走ると女性ランナーが必ず一人はいた。まあいつも数人いたよな。

 スラッとした体型に揺れるポニーテールや朝日に綺麗に輝く長髪は素晴らしい。もちろんボーイッシュな短髪の女の子も素晴らしかった。

 そしてタンクトップ姿の女性も多かったんだ。あの後ろ姿を眺めながら追走するあの時間……童貞の俺にとって、あれこそが“人生のご褒美”と思える瞬間だった。

 揺れるお尻や胸をさりげなく見ても誰にも文句を言われることがない至福の時。そりゃそうだろう。誰もが走るのに一生懸命でそんなことに気が付くはずはない。

(注:男性諸君、その視線は確実にばれています。絶対ダメ)

 挨拶してくる女性もいた、その日は一日幸せモード確定だった。だって童貞の俺に笑顔で話しかける女性なんてそれ以外にはいなかったのだ。


(……うん、今から考えると、あれが俺の青春のピークだったかもしれん。その後は仕事尽くしでランニングどころではなかったよな)


 というわけで、この世界でも“朝ラン”を再開してみることにした。

 もちろん、この世界に美人ランナーなんていない。貴族の婦人が屋敷の周りをジョギングしてたら、それはそれで事件だろう。単純に朝は人が少なくて良いという合理的な判断だ。よたよた走りなのも恥ずかしい、それをあまり人に見られたくもないという事情がある。


 だが、早朝に走ってみると意外な発見があった。

 走ったあとのご飯が――とんでもなくうまいのだ。やはり空腹は最大の調味料と言える。

 朝起きてすぐに朝食を食べてもそれは義務感のある作業のようなものでそこまでおいしくもない。

 しかし朝ランした後は空腹になり体が栄養を欲している。早く食べたいという気持ちで食べるご飯は最高なのだ。


「はぁー……うまっ! これが朝ランの真価か!」

汗を流した後の朝食、オルドの焼きたてパンなどが胃に染みわたる。これはもう、やめられない。毎日続けるしかないだろう。


 そんなある日。

 その日もおれはいつものゆったりまったりスケジュールをこなしていた。

 朝早起きして軽く30分のランニング、最高においしい朝食を終えたあと、ニーナの膝の上でだっこしてもらいながらの至福の読書。そして昼食を終わり、大好きな魔道具修理の作業をしていてふと気が付くと――。

 そこにライゼンがいた。どうやら朝にも来ていたらしい。


(ああ、見られたな……あの走り姿を……)


 思い出すだけで恥ずかしい。二歳児がヨタヨタ走ってる姿なんて、可愛いを通り越してシュールだ。

 くそっ、馬鹿にされる覚悟はできている。いくらでも馬鹿にしていいぞと思いながら俺はごまかすようにライゼンに告げた。


「……あ、ライゼン来てたんだ! ごめん、ごめん、全然気づかなかった。お茶も出さずに申し訳ない!」


 慌てて頭を下げる俺に、ライゼンはゆっくりと首を振った。

 その目は真剣そのもの。大丈夫かこいつ。なんだか嫌な予感しかしないんだが。


「レオン坊ちゃん……私は、あなたに一生仕えさせていただきます。これからもどうか、よろしくお願いします。」


(……出たよ、またこれだ)


 なんかさ、こう……やたら重いんだよな、こいつ。別に俺、何か命の恩人とかじゃないからね?あの時は助けたけどそれはオルドだよね?

 そんな重々しくならずに、もう少し軽くいこうよ。


「え? 前もそんなこと言ってたよね。ライゼンは大げさだよ。もっと普通でいいって」


 そう言うと、ライゼンは微笑んだ。

 でもさ、その微笑みが、なんというか……やたら怖いんだよね。いいやつなんだけどたまにこうやって怖くなるんだ。俺はそのプレッシャーに耐えられない。何とかして欲しい。


「いえ、坊ちゃん。あなたのおかげで私は大切なことを思い出しました。これから私は変わります。剣聖だったころの自分に戻ります。そして更なる高みを目指します。」


(あぁ……また出たぞ、必殺の中二病設定)


 こいつ本当にすげーよな。“剣聖”とか“高みを目指す”とか、よく恥ずかしげもなく言えるよな。

 いや、本人はいたって真剣なんだろうけど……その真剣さがまた痛い。そんな中二病設定を二歳児の俺に向かって真顔で誓うなよ、こっちが恥ずかしくなるわ!

 いや相手が二歳児だからこそ言えるのかもしれんな。俺は無邪気に受け止めるべきなのかもしれない。


 そして何よりもライゼンは悪い人じゃない。

 むしろ、すごく面倒見もいいしいい奴だ。現時点で、この世の中において頼れる数少ない大人の一人なのは間違いない。しかも安い給金で満足してくれているし、ずっといて欲しいと思っている。

 “謎の魔道具修理士”設定に協力してくれるありがたい存在なのだ。下手に中二病と馬鹿にして辞めてもらっては困る。


(よし、決めた。もう好きにさせておこう。気が済むまで中二病やらせておこう。もうしばらくしたらライゼンも恥ずかしいことをしたと気付くだろう。それも1つの勉強だ。経験が大切なんだ)



***

 こうして――

 ちょっとしたすれ違いの中にライゼンの人生は再び大きく動き出した。

 だが、その運命を大きく変えた張本人であるレオンはといえば……


「中二病設定、マジでやめた方がいいって。本当に痛いからね。いつか本人に伝えた方がいいだろうがいつにするかな?」

としばらく悩んでいた。

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