第151話「覚悟の共有」
#第151話「覚悟の共有」
ライゼン、エリシア、ミアの三人はレオンに内緒の話をするために馬車に乗らず徒歩で移動した。
そしてミアはレオンに命をかけて仕える覚悟を示した。ただし、その自分の命を粗末に扱うような覚悟は危うくも感じられた。
そこでエリシアはミアに様々なことを伝えた。レオンの本当の気持ちを知ってもらいたかったからだ。
「違います。逆です。すでにレオン様はあなたに気を許しています。すなわち、あなたは自分で思っておられる以上にレオン様に必要とされているのです。今後もきっと話しかけられることでしょう。そこであなたが身構えれば、レオン様は悲しみます」
「でも私は裏の人間で孤児です。私を惜しむ者もいません。レオン様に命を差し出す覚悟ですが……私が死ねば、レオン様が悲しむかもしれません。下手に仲良くならない方がいいのでは?」
ミアとしてはレオンとの会話は楽しいものだった。ありがたかった。しかし、自分の命を賭けるととなると、その関係がいつまで続くか分からない。
自分がいなくなることで悲しませるぐらいなら、下手に仲良くならない方がいいだろうと思えた。それは悲痛なる覚悟であった。
しかしそれは違うとエリシアは正そうとした。
「あなたは……まだレオン様の本当の偉大さを分かっていませんね」
「レオン様の偉大さ?」
ミアはどういうことかと不思議に思った。ナイラ、そしてシャドウズを救ってくれただけでも十分に偉大なのだ。しかし本質は違うというのだろうか?
そんな様子のミアを見てエリシアは続けた。
「あなたは自分が孤児ということを気にしていますが、レオン様はそんなことを気にされません。実際に、レオン様は前回王都に来た際に二十人以上の孤児を救い、領へ迎え入れました。しかも孤児に隠れて親に土下座までして受け入れを頼み込んでおられたのです。レオン様は身分差も出自も気にしません。そして全ての人を大切に考えています」
ミアはそのエリシアの言葉にびっくりした。貴族の子息が二十人以上もの孤児を救った?しかも身分差も出目も気にせず、親に土下座までして頼み込み全ての人を大切にする?そんなことがあり得るのか?
そのエリシアの言葉にミアは息を呑んだ。
「それは本当ですか?……自分を犠牲にしてまでそれほど多くの孤児を救うとか、とても貴族の子息とは思えません」
「ええ。もちろん、それが貴族の子息として良いことかどうかは分かりませんけどね。だからミアさん、あなたがレオン様を大事に思うなら、自分のことも大事にしなさい。周りの人も大事にしなさい。そうすればレオン様はきっと喜んでくれるでしょう。それこそがレオン様の望みなのです」
エリシアは少し苦笑して話を続けた。
「私もライゼンさんも、周りの人を大切にしすぎて無鉄砲な動きをするレオン様に救われました。今後、更に多くの人を救っていくことでしょう。私たちはそんな方だからこそ、お仕えしています」
ライゼンもそのエリシアの言葉に頷いた。
「レオン坊ちゃんが多くの人を救う、それ自体は素晴らしいことですが危うい。他人のことを考えすぎて、自らの危険を顧みないところがあります故。なので私たちは命を懸けて守ろうと考えています。もちろん、時には自重するように伝えるのも我らの役目」
しばし沈黙。ミアは全てを理解した。詳細は不明だ。しかしエリシアもライゼンもレオンに救われたのたのだろう。それ以外にも自らの危険を顧みずに、多くの人を救ってきたのがレオンという人物なのだろうと。
相手の立場、出目は関係ない。身分差があっても孤児であろうと自分が救えるものは全て救う。それがレオンという人物なのであろう。
確かにそうだった。レオンはナイラ、シャドウズを救ったにも関わらず全く誇ろうとしなかった。それは、レオンにとっては当たり前のことだったからだろう。
裏組織であろうとも困っているならば自分の危険を顧みずに救うのが当然とばかりに動く。とんでもないことを当たり前にこなす……凄い人だ。
ミアは、レオンのような人物こそが人の上に立つべきだろうと感じた。
やがてミアは顔を上げた。
「……分かりました。私もできる限り自然体で接し、その上でレオン様をお守りします。自分のことも、そして自分の周りの人も大切にすることを誓います」
そこでエリシアが頷いた。ミアが本当の意味で理解してくれたと安堵した。そして少し、からかうように言った。
「少し嫌になりましたか?」
「いえ。レオン様が素晴らしい方と教えていただき、ありがとうございました。私の考えが足りなかったようです。しっかりとお仕えさせていただきます」
即答だった。
そして、その答えに、エリシアは満足げに微笑んだ。
「よろしい。ならばあなたは私達の同士です。一緒にレオン様を守りましょう」
「はい」
そうしてエリシアは手を差し出した。ミアはその手を、力強く握り返した。
凄腕の剣士と魔法使いに「同志」と認められた。光栄であるが、少し照れくさい。
だが悪くない……ミアはそう思った。同志として認めてもらえる、そしてレオンに必要とされていることが何よりも嬉しかったのだ。
こうして、レオンの知らぬところで、また一つ守りの輪が強固になったのだった。
ただ、三人ともレオンをまるで神のように扱っているが美化しすぎである。レオンはその場の勢いで動いているにすぎないのだから。
レオンが仮にこの3人の話を聞いたなら……それはおかしいとして悶絶するに違いない。
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補足)ちら裏情報。ここ5話ぐらいは書いていて、しっくりこないことが多く何度も何度も書き直しました。みなさんの感想にも助けられています。感謝です。m(_ _)m
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