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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
3-2章「四歳の誕生日と再度の王都訪問」

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第146話「ミアの派遣」

#第146話「ミアの派遣」


 話は少しさかのぼる。

 王都の裏路地にある隠れ家。その奥の一室で、シャドウズのトップ――ナイラは一人の女性と向かい合っていた。


 その女性の名はミア。小柄で童顔だが、組織でも屈指の戦力である。

 その自らの特徴を生かして様々なところに潜り込み情報を抜き出していた。動きは早く小柄なので見つかっても捕まりにくい。更にはスタミナも豊富だった。

 純粋な戦闘力はそこまででもないが戦闘や魔物退治などでも活躍。斥候的な動きが得意だ。


 もともとミアは孤児だった。

 シャドウズの先代に拾われ、ナイラと共に育てられた。血の繋がりはない。だが、真の姉妹にも等しい時間を過ごしてきた。


 だからこそ、ミアのナイラへの恩は深い。だがその日のミアの声にはわずかな苛立ちが滲んでいた。


「私がヴァルドリック領に?」


「ああ、そうだ。お願いしたい」


 ナイラは即答した。ミアをヴァルドリック領に派遣することが最適だと判断したのだ。


「なぜですか? 私が……不要になったのですか?」


 それは悲痛な声だった。

 組織に生きる者にとって“外へ出される”というのは、時に切り捨てを意味する。今回もその手の話だと思ったのだ。

 しかしナイラはすぐに首を振った。


「違う。逆だ。信頼しているからこそ頼みたいんだ」


 そして、静かに話を続けた。


「私はヴァルドリック辺境伯家の子息に命を救われた。更にはパラダイスが雇った三人組を退けてくれた。私にとっては恩人だ。命を救われただけじゃないのは分かるよな」


 ミアの目が細くなる。


「パラダイスの三人組と言えば……先代の敵討ち」


「そうだ。私たちの誰もが果たせなかったことを、貴族の子息がやってくれた。そして、あれがなければうちは潰れていただろう」


 そうしてしばし重い沈黙が落ちた。ミアとしては理由の一端は分かった気がした。しかしまだ納得がいかなかった。

 自分をヴァルドリック領に派遣する必要性が分からなかったのだ。


「ですが……何のために私を?」


 ナイラは少し視線を落とし、やがてミアに対し問いかけた。


「不思議に思わないか?」


「不思議とは?」


 ミアとしては細かい事情は分からなかった。なので不思議と言われてもピンと来ない。

 そこでナイラが話を続けた。


「私はパラダイスの三人組に襲われた。命からがらゴミ箱に逃げ込んだ」


「はい。その辺りについては、少し聞いています」


「そして――ヴァルドリック辺境伯家の子息と、その付きの者に見つけられた」


 ミアの眉がわずかに動いた。さすがにここまで説明を受ければおかしいと気付いた。


「……確かに、おかしいですね」


「そうだ。あんな危険地域の裏路地に貴族がいるはずがない。しかも、誰も気が付かなかった私を見つけた。さらに言えば、あの三人組を撃退までした理由も分からない。私は危険な相手だから逃げろと言ったのに、彼らは私を助けるために動いたんだ」


「なるほど……」


 ミアは静かに頷いた。確かに言われてみればおかしい。路地裏の人が少ないところに貴族が来ることなど普通に考えてあり得ない。危険だからだ。

 しかもナイラがゴミ箱に隠れたことで、戦闘をしたパラダイスの三人組にさえも見つからなかったのになぜ貴族が気付いたのか。

 そして三人組を撃退した理由も分からない。貴族が見ず知らずの人間を助けるなど考えられない。危険だから逃げろと言われたにも関わらずだ。

 いずれの動きも貴族の動きとは思えない。不思議なことばかり。

 そう考えているとナイラが話を続けた。


「だからこそミアに頼みたい。まずは恩返しだ。ヴァルドリック辺境伯家に何らかの形で貢献してほしい。お前の斥候としての腕でもいい。情報の伝手としてでもいい。うちからはすでにゴールドプレートを渡しているのでそのつもりで動いて欲しい」


 そして、言葉を区切った。


「そして更には――」


 ミアがその続きを察した。


「ヴァルドリック辺境伯家を探る、と?」


「そうだ。どう考えても不自然だ。あんな場所に現れることも、私を見つけたことも、三人組を退けたことも。何らかの理由があるに違いない」


 ナイラは、はっきりと言った。

 ヴァルドリック辺境伯家の息子には確かに恩がある。その恩返しは必須だ。しかしその理由によっては考え直す必要があるかもしれない。

 目的が王国の裏組織への介入であればそれはさすがに問題視せざるを得ないのだ。


「何が裏にあるのか確かめたい。そのためにもミアに頼みたいんだ。この仕事ができるのはミアしかいないと思っている」


 ミアはしばし沈黙し、やがて静かに頭を下げた。理由がはっきりした。そして、確かに自分が適任だろうと判断した。


「……分かりました」


 ナイラはほんのわずかに表情を緩めた。


「すまんな」


「いえ。私は先代と姉御に救われた身です。いかようにも」


 その声に迷いはない。

 こうしてミアがヴァルドリック領へ向かうことが決まった。まずはレオンたちが帰る前に確認を取って引き受けてもらうことを打診することにした。


 本当はナイラとミアが考えているような深い意味などない。レオンとライゼンが迷子になって、たまたま魔力視認魔道具で見つけ、何となく助けただけの話だ。


 その騒動を元にしたナイラの決定、そしてミアの行動が本当に恩返しとなるのか。それとも新たな波紋を生むのか。

 この時点では、誰にも分からなかった。

いつも読んで頂いてありがとうございます。毎日の投稿を限界まで続けていく予定です。


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