第140話「二人の正座」
#第140話「二人の正座」
話は少し遡る。
イリスは反省を見せているとして正座が解かれた。エリシアが許したのである。
しかし、その後は何故か……同じ場所に今度はレオンとライゼンが並んで正座していた。そして正面には腕を組んだエリシアがいる。
どうにも空気が重い。何故このような状況になっているのか?それには理由がある。
***
ナイラを助けた後、レオンとライゼンは何食わぬ顔で城の一室へ戻ってきた。しかし、レオンは演技が致命的に下手だった。
明らかに挙動が怪しい。見た目に何かを隠しているのは明白。
それを見逃すエリシアではなかった。
「レオン様、何かあったのではないですか? 隠し事をしていませんか?」
「え? いや、何も隠していないよ。エリシアさんは何を言っているの?」
必死にとぼけるレオン。
しかし明らかに目は泳いでいた。そして動きもおかしい、何故かカクカクと動いている。よく見ると右手と右足が一緒に動いている。どう見ても挙動不審だ。
「動きがかなり不自然に感じますが。やはり何かありましたよね?」
「そんなことないよ。ねっ、ライゼン? 今度は変なもの拾ってないよね?」
今度は……って。しかも拾うって……。
同意を求められたライゼンは心の中で頭を抱えた。そんなことを言う時点ですでにバレバレではないか。
確かにトラブルはあった。それは間違いない話だ。しかし正直に話すのはレオンの立場を悪くするかもしれない。
かといって誤魔化すのも不誠実だ。
どう答えるべきか、ライゼンも迷った。その一瞬で、エリシアは確信した。
「……二人とも、正座」
有無を言わせないエリシアの声音だった。そうしてイリスの正座していた場所にレオンとライゼンが正座する状況に至ったわけだ。二人は並んで神妙に正座している。
少し前まではイリスが正座していた場所だが今は違うメンバーの正座となったわけだ。
「レオン様、正直に何があったのか答えてください。正直に話さえすれば怒りませんので」
その言葉を聞いてレオンは早々に観念した。これ以上、ごまかすのは無理だと思ったのだ。そして怒られないうちに正直に話した方がいいという計算も働いた。
そうして少しずつ語り始めた。
「ライゼンと適当に歩いていたらいつの間にか迷子になってさ」
「迷子?」
「うん。二人とも知らない道を歩いてたんだ」
ライゼンは静かに目を閉じた。否定できない。大人の自分が付いていて迷子というのもおかしな話ではあるが実際にその通りなのだ。
一方でエリシアの頭の中は?マークだらけだった。しかし、いちいち質問していては話が進まない。とにかくレオンに続けてもらうことにした。
「それで、どうされたのですか?」
「人が多い方向が王城だと思って、魔力視認の魔道具を使ったんだ」
「なるほど。それで?」
「ゴミ箱の中から大きな魔力が出ているのが分かってね」
エリシアの眉がぴくりと動いた。そして何となく嫌な予感がした。
すでにレオンの父、ギルベルトからは聞いていた。レオンはすぐに変なものを拾ってくるから注意して欲しいと言われていたのだ。
そこでレオンが話を続けた。
「人だったら問題だと思って確認したんだ。そしたら女性がいてさ。怪我していたんだ」
「……」
「だから大丈夫か確認して、自宅まで送ろうとしたんだ。でも、その途中で変な三人組が出てきたんだ」
「変な三人組?」
「うん。でも雑魚だったからライゼンがあっという間に倒したよ」
ライゼンは無言だった。何も言うことはない。全くもってその通りで口をはさむ余地は無かった。
しかしこうやってレオンの口から話を聞くとおかしなことばかりだ。一体、何故このような状況になったのか?
本来は大人である自分がもう少し冷静に考えるべきだっただろうと思えた。しかしすでに起きたことはどうしようもない。
そしてレオンは更に話を続けた。
「その後、女性を自宅に送り届けたら、これをもらったんだ。だからたいした話ではないよね。その程度のことだよ。何も問題ないよね!」
馬鹿なレオンは特に問題ないだろうと得意満面。そしてやめればいいのに懐から一枚のプレートを取り出した。
エリシアはそれを受け取って確認。刻まれている文字を見て、表情が完全に消えた。
「……シャドウズ?」
エリシアも詳しくは知らない。だが、裏組織の一つであることは確かだ。
その名を刻んだプレートを“お礼”として渡すなど、普通のことではない。少なくとも、これは軽く済ませて良い話ではない。
「……二人とも」
静かな声だった。
「しばらくは正座を続けなさい。反省が必要です」
レオンは肩を落とした。おかしい。話が違う。正直に話すれば怒らないという話だったではないか。
「正直に話したのに……」
「それはそうですが……何でも拾ってこないでください。ギルベルト様からそう何度も伺っていますよね?」
「拾ってないよ。助けただけだよ。ねぇ、ライゼン」
「結果的に同じです」
ライゼンに助けを求めたレオンだったがすぐにその言葉は遮られた。そしてエリシアの視線はライゼンへも向いた。
「ライゼンさんがいて、なぜこうなったのですか?」
「……申し訳ありません。これは申し開きようがありませぬ」
連帯責任。
こうして、イリスの次はレオンとライゼンの正座となったのである。
二人とも一応、反省しているようには見える。
だが、今後、同じような問題を起こさないかと問われれば難しい。エリシアは、これでもう大丈夫と断言できる自信は無かった。
いつも読んで頂いてありがとうございます。毎日の投稿を限界まで続けていく予定です。
ブックマーク、評価ポイント、レビュー、いいね、感想などもしていただけると励みになるかもよ?
その他、何らかの頑張れパワーをいただけると更に頑張れるかもです!




