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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
3-2章「四歳の誕生日と再度の王都訪問」

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第139話「裏組織の恩」

#第139話「裏組織の恩」


 ある夜。

 シャドウズの拠点でナイラが口を開いた。


「助けてくれた貴族の名は分かったか?」


「はい。ヴァルドリック辺境伯家です。あの子供は辺境伯家の子息でレオンという名前らしいです。そしてもう一人は護衛の騎士といったところでしょう」


 ナイラは口の端を上げた。


「へぇ……とんだ大物じゃないか。ただヴァルドリック辺境伯家は最近は目立たない、落ち目って話だがな。魔道具全盛の今の世の中では田舎の貴族は厳しいよな」


「はい。最近は目立った動きはありませんが、相当な大物です。まあ、それはいいでしょう。それよりも気になります。どうしてそのような状況に? 偶然にしてはあまりにも不自然です」


 部下の言葉を聞いてナイラは目を細めた。確かにおかしな話なのだ。


「確かにな。私はゴミ箱の中に隠れて意識を失っていた。あの凄腕の三人組ですら見つけられなかった。それを、あの二人だけが見つけたんだ。私が襲われた状況の一部始終を見ていたはずもないだろう。どう考えてもおかしいよな」


 ナイラはその時の状況を思い出していた。自分は路地裏で凄腕三人組の急襲を受けた。何とか逃げたが怪我をしており、しかも意識は朦朧としており逃げ切るのは厳しい状況。

 そのため咄嗟の判断でゴミ箱に逃げ隠れたのだ。

 しかし、あの三人組が見つけられないということは誰も発見することができないはず。そのままのたれ死にしてもおかしくない。

 それなのに何故かあの貴族の二人が自分を見つけた。その状況はどう考えてもおかしい。

 もちろんレオンが独自に興味本位で開発した魔力視認魔道具なんて存在を知りようがない。ナイラが分からないのは当然ではある。


「しかも貴族があんな場所にいること自体、異常です」


「そうだよな。あの路地裏は危険で普通の人間は立ち寄らない。貴族が立ち寄るはずもない場所だ。となると、あの二人は何かを探っていた……可能性はあるな」


 そうなのだ。ゴミ箱に隠れていたナイラを見つけたこともおかしいが、それ以前に、あのような場所に貴族がくることなどあり得ないのだ。

 何か目的があってのことに違いないとナイラは考えていた。まあ、現実的にはあの二人は迷子になっていただけではあるのだが。


「なんの目的で王都にやってきたのか? そして何故路地裏にやってきたのかを調べましたが、特段の裏は取れませんでした。分かったのは彼の姉の学園入学式に同行するために王都にやってきたということのみ」


「ならば、居合わせたのは単なる偶然か……?」


「私の調べた情報を整理しましたが結論は出ません。どう考えても不自然ですが、姉御を救った目的は不明です」


 沈黙が落ちた。やがてナイラは肩をすくめた。


「お前が分からないなら、今は保留だ。必要に応じて調査を続けてくれ。もちろん優先順位は落として構わない」


「分かりました」


 王都の裏情報に精通している自分の部下が考えても分からないことならば、いくら考えても分からないだろう。ナイラはそう判断した。

 そして次は敵対組織であり、大きく動いてきたパラダイスに話が移った。


「パラダイスの動きはどうなっている?」


「ぴたりと止まりました。あの凄腕三人組がやられたのがかなり効いているようです」


「そうか。それは良かった」


 ナイラは満足げに頷いた。逆の立場で考えたら当然だ。自信をもって動かした戦力が返り討ちにあったのだ。そうそう簡単には動けないだろう。

 後は「シャドウズには凄腕の用心棒がいる」といった適当な嘘情報を流せばいい。そういった攪乱はシャドウズの得意技で専売特許とも言えた。


「助かったな。この時間で体制を立て直せる。機を見て復讐するぞ」


「そうですね。でも姉御も無理はなさらず」


「ああ、もちろんだ。分かっている。私もこの時間を有意義に使わせてもらう」


 基本的な話が終わり、少しの間が開いた。

 そして部下が少し躊躇しながら言った。


「……ですが、本当に良かったのですか? ゴールドプレートを渡して」


 ナイラは即答した。


「当然だ」


 ゴールドプレートはシャドウズの最上級顧客にのみ与える金の証だ。これまでに渡したのは国王の側近のみ。それ以外には渡したことはない。シルバー、ブロンズのプレートもあるがそれさえもほとんど渡すことはない。

 ゴールドプレートを渡したのは先代も含めて、これが二回目である。


「あの二人がいなければ、私は死んでいた。組織も崩壊していたかもしれない。……恩は、恩で返す。それがうちの組織の流儀だ。これだけは曲げられない」


「承知しました」


 ナイラの言葉に部下は納得し、深く頭を下げた。そして先代の教えをしっかり受け継いでいるとして安堵した。これでシャドウズも当面は安泰だろうと考えたのだ。


 こうして、レオンとライゼンの迷子騒動は王都の裏組織の状況に大きな影響を与えた。

 本来ならばシャドウズはパラダイスに吸収されたであろう。更にその後のパラダイスはシルバーコインをも吸収したかもしれない。

 しかしその動きはほぼ完全に無くなったのだ。

 そして王都の裏組織シャドウズとレオンの間には強い縁が生まれた。


 レオン本人としては中二病の変な女性だったなと思っていたが現実には王都の裏組織の三大組織のうちの一つのトップと繋がってしまった。

 この縁が、いつ、どのような形で繋がるのか。それとも今後は何も起きないのか。

 現時点ではまだ誰も知らない。

いつも読んで頂いてありがとうございます。毎日の投稿を限界まで続けていく予定です。


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