第137話「シャドウズ」
#第137話「シャドウズ」
変な雑魚三人組を路地に放置し、俺とライゼン、そしてお姉さんの三人で歩き出した。
しばらく進むと、お姉さんが立ち止まった。
「ここだよ」
「えっ?」
紹介されてびっくりした。
なんだか結構大きな建物なんですけど。家というよりは何かのお店、もしくは旅館みたいな感じだ。
門構えもしっかりしているし、少なくとも普通の民家という雰囲気ではない。もしかして、実はいいところのお姉さんなのかな?
お姉さんが声を掛けると、中から男の人が慌てた様子で出てきた。
「姉御! ご無事だったんですか!? 戻ってこないので心配しましたよ!」
姉御?
なんかまた、変なワードが飛び出してきたぞ。
「ああ、怪我して動けなくなっていたところを、この人たちに助けられた」
お姉さん――いや、姉御は俺たちを振り返った。助けたのは俺じゃなくてライゼンだけどね。
「ありがとうございます。本当にどうなることかと……」
その男性は深々と頭を下げてきた。悪い気はしないけどちょっと気恥ずかしい。
するとお姉さんが話を続けた。
「なんと、あの凄腕の三人組をあっさりやっつけてくれたんだよ。今は縄で縛られて路地に転がっている。始末してもらえるか?」
「はい。承知しました。あの三人には随分とやられましたからね。恨みを持っている子分も多いんで丁度いいです」
男性はすぐに中へ声をかけ、子分らしき人たちを数人呼び出した。
……なんだろう。
お姉さんだけでなく、この人たちも中二病全開に見えてきたんですけど。姉御、凄腕、始末、子分とおかしな言葉ばかりだ。
なんで俺の周りにはこんな変な人ばかり出てくるのだろうな。自称剣聖のライゼンとか、やたらと重たい人とか。
まあいいか。
俺とライゼンの目的は無事に王城に戻ることだ。この手の面倒ごとには絶対に関わってはいけない。俺も学習したんだ。もう間違えない。
こういう時は……そうだ、要件を手短に伝えよう。
「すみません。実は道に迷っていまして。王城の方向はどちらか分かりますか?」
「私が案内します。少しお待ちを」
男性が即答してくれた。良かった、助かったよ。
「姉御は傷の手当てを。医師を呼びます」
「ああ、すまない。本当は私が送っていければ良かったのだが」
「いやいや、とんでもない。怪我しているのだから治療優先にしてほしいです」
俺がそう言うと、お姉さんは少しだけ柔らかい表情になった。
「……ありがとう。本当に助かったよ。この恩は絶対に返す」
なんとも大げさだなと思う。でもちゃんと返事をしないと帰れそうにない。
「うん、何かあったらお願いね」
軽い感じでそう言うと、お姉さんは懐から小さな札のようなものを取り出した。
「これを持っていって欲しい」
なんだろう?
金色の金属製のプレートのようなものだ。紋章が刻まれている。
「これがあれば、うちの“シャドウズ”のメンバーが動く。君たちの実力ならうちの戦力は不用かもしれないが、うちは情報も扱っている組織だ。王都関連で欲しい情報があれば連絡してくれたらいい」
シャドウズね、そして金色プレートか。
うん、お姉さんは最後まで中二病全開だった。もうお腹一杯だよ。
でも、まあ……悪い人たちではなさそうだし、何かあれば使わせてもらおう。あてにしてはいけないだろうけどね。
「では、こちらへ」
案内役の男に先導され、俺とライゼンは王城方面へと歩き出した。振り返ると、お姉さんはまだこちらを見ていた。俺は笑顔で手を振らせてもらった。
……ともかく、たいして面倒ごとにならなくて良かったよ。本当に、今回はこれで終わりだよな?
その後、俺は今日のライゼンの戦闘について聞いた。
「二人目の敵、上から来たのは見えてたの?俺はちょっと不意を突かれたんだけど」
「あれはかなり、あからさまでしたからな。ともかく二人以上の敵がいる時には常に注意は必要です」
「そっか、さすがだね。特にそのすぐ後のライゼンの動きは凄かったね。咄嗟だったのに、二人に囲まれないポジションを取ったのはびっくりしたよ」
俺がそう言うと、ライゼンは驚いたようだ。どうしたのだろう?
「いやはや、そこに気付きましたか。やはり、レオン坊ちゃんはたいしたものですな」
「ライゼンは大げさだな。気付くだけなら誰でもできるよ」
まあ、前世で格闘技とか見るのは好きだったからね。その影響はあると思う。別に何か素質があるというわけでもない。
そう思っていたらライゼンは続けた。
「いや、そんなことありませぬ。まさか、その前の袖を切った剣は見えませんでしたよね」
「うん、あれはほとんど見えなかったよ。おぼろげに剣筋が見えた程度だね」
そう言うとライゼンは再び驚いたようだ。
「ほう……まさか、あれも見えましたか。レオン坊ちゃんはかなり目がいいのかもしれませんな」
「どうなのだろう?視力は悪くないと思うよ。それにあの剣はほとんど見えなかったからね。たいしたことはないと思う。それに見えたところで反応できなかったら意味ないし。どうしたってあれは避けられないよ」
確かに近くのものも遠くのものもしっかり見える。それは間違いないけどね。ここは両親に感謝だ。
ともかく今日は良かった。また、変なものを拾ってと、文句を言われなくて済んだ。
ちょっとしたトラブルはあったけど全く問題はなかった。結果オーライということにしよう。
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