第136話「凄腕?の三人組」
#第136話「凄腕?の三人組」
お姉さんは誰かに襲われたらしい。ならば安全な場所に連れていった方がいいのかな。
「大丈夫? 歩ける?」
俺が聞くと、お姉さんは苦しそうにしながらも頷いた。
「歩くくらいなら……何とか」
「じゃあ家まで送ろうか?」
「……お願いしてもいいかな」
ということで、俺とライゼンはお姉さんを挟むようにして歩き出した。よしよし、これは良い流れだ。変な拾い物かと思ったけど、全くそんなことはないじゃないか。
家まで送った後、王都の中心や王城までの大まかな方向を聞けばいいのだ。それで完璧じゃないか。変なものを拾うという汚名は返上させてもらおう。
これで完璧な計画……のはずだった。
「みーつけた!」
気持ち悪い男の声が路地に響いた。振り返ると、男が三人立っている。いかにも荒事慣れしていそうな雰囲気だ。
お姉さんの顔色が一瞬で変わった。
「やばい……こいつら凄腕なんだ! 私はどうなってもいいから、君たちは逃げてくれ!」
うーん。また厄介ごとが向こうから歩いてきたよ。どうしてこうなるかな。
“なんでもかんでも拾ってくるな”という父さんの声が聞こえた気がする。
でも今回は俺は悪くないよね?ライゼンも一緒だし連帯責任のはず。
……いや、やっぱり魔力視認魔道具で見つけたのは俺か。やはり反省した方がいい?そうだな、今度こそ反省しようかな。
そう思っていたら三人組の一人が怒鳴ってきた。
「何ぼけっとしてんだよ!」
もう、せっかく考え事をしていたのにひどいな。
「さっさとその女をよこせ。死体でもいいが、生きてたら依頼人が高く買い取ってくれるんでな」
「依頼人?」
俺が不思議に思っていると、お姉さんが唇を震わせて答えた。
「裏組織の一つ……パラダイスが、こいつらを雇ったの……。かなりの凄腕なのよ……こいつらのせいで裏組織の勢力図が変わってしまったのよ」
裏組織? パラダイス?このお姉さんも大丈夫か?何だか自分の世界に酔っているようにも聞こえる。
……もしかして、このお姉さんもライゼンと同じで中二病では?
とはいえ、もし本当にこの三人が強いならまずいんだが。
「ねえライゼン、この三人って本当に強いの?」
「いや、全然ですな。まあ、雑魚と言って差し支えないかと」
その言葉に三人組が一斉に怒った。
「雑魚だと!? ふざけやがって!」
「まあいい。よく見たらその子供、金持ちそうだな。そいつも、一緒にさらって身代金でも要求しようぜ!」
「やめてくれ! 私だけでいいだろう!」とお姉さんが再び参戦。
ああ、面倒だしややこしい。ライゼンが言うようにあまり強く見えないんだけどな。でも、お姉さんが嘘を付く理由もよく分からない。
まあ、いいか。考えても分からない。こういう時はライゼンに任せよう。
「ねえライゼン、雑魚ならさっさとやっつけてよ」
「承知しました」
ライゼンが一歩前に出た。
「危ない! そいつら本当に強いのよ!」
お姉さんの悲鳴のような声が聞こえた。だけど一人が剣を振り下ろした瞬間、ライゼンは身体をずらし……。
みぞおちに鋭い蹴りを叩き込んだ。鈍い音とともに男がその場でうずくまった。見るからに痛そうだ。
「なかなかやるな……。お前は手を出すな」
残りの一人が仲間を制し、剣を構えた。一方でライゼンは表情を特に変えない。うずくまって動けない男の剣を静かに拾い上げた。
そして敵が斬りかかってきた瞬間、ライゼンの動きが一瞬ぶれた。気づけば、相手の袖が綺麗に切れている。まじですか。剣の動きがほとんど見えなかったのですけど。
「ば、馬鹿な……!」
「次は本当に斬りますが、覚悟はよろしいですか?」
その時、上からもう一人が飛びかかってきた。いつの間に上に?
「これが俺たちのコンビネーションだ。馬鹿め、油断したな」
だがライゼンは冷静だった。
軽くすり足で避けると、しゃがんで二次攻撃を仕掛けようとする相手の顔面に膝を叩き込んだ。しゃがんだ瞬間は無防備だからね。そこから一拍置いてから攻撃をしようとか無茶だろうに。この人、馬鹿なのかな。
そのまま地面に沈む男。こちらもかなり痛そうだ。
「くそっ!」
最後の一人が突進してきた。二人が簡単に負けているのに、こいつも馬鹿なのかな?
「隙だらけですな」
ライゼンは足を引っかけて転倒させ、起き上がろうとしたところへ顔面に蹴り。相手はずるりと倒れ込んだ。ライゼンも容赦ないな。
こうして、三人はあっという間に沈黙。
さすがライゼンは強いね。でもライゼンは自称剣聖のはずでは?
「ライゼン、実は剣より足の方が強いんじゃない? かなり足癖悪いよ」
「そんなことはありません。剣では下手をすれば殺してしまいますからな。こういう場面では必要に応じて足を使います。魔物退治でも足技は有効です」
なるほど。ライゼンは総合格闘技系剣士だったのか。なんでもありだ。それでは自称するにしても剣聖はないと思うのだが。
俺が呆れていると、お姉さんは呆然としているようだ。
「この凄腕の三人を……こんなにあっさり……」
そんなお姉さんをしり目にライゼンは淡々と近くにあった縄を使って、三人を縛り上げた。
「動けぬようにしておきましょう。あとは警備隊にでも引き渡せばよろしい」
「じゃあ、ひとまずお姉さんを送ろうか」
縛られた三人を路地に転がしたまま、俺たちは再び歩き出した。それにしても、なんで余計なトラブルになるかな……これって俺、悪くないよね?
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