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辺境生まれの小さな天才魔道具師( 旧:辺境伯貴族家の息子、魔道具修理で無双し王女をも救う)【書籍化予定】  作者: まめたろう
2-5章「王都からの帰還」

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第129話「約束の魔石」

#第129話「約束の魔石」


 エレンさんとの打ち合わせ通り王都到着の翌日の夜に作戦を決行することにした。

 そう、俺は王女ソフィア様に魔石を渡すために部屋へ向かうことにしたのだ。


 あの時と同じ変装。すなわちレイゼンとしての姿だ。

 そして、いくつか確認事項がある。これが肝心だから心にしっかりと留めておこう。

 まずは一つ目。

 俺はレオンではなく、レイゼンだということ。間違っても俺がレオンだとばれてはいけない。ばれたら大変なことになる。

 そして二つ目。

 余計なことを言わないことだ。前回、うっかり「三カ月に一度魔石を交換しに来ます」と言ってしまった。

 その一言があったから、今回も来ることになったのだ。これからは、絶対に余計な言質は取られないようにしないとね。俺も成長しないといけない。


 そうしてエレンさんと共に部屋を出た。エレンさんには申し訳ないが見張りをしてもらうことになっている。

 

 そして、ざっと見たが廊下には誰もいない。人の気配さえ感じられない。

 ……俺、やっぱりなんだかんだで運がいいのかもね。

 俺は小さく拳を握り、エレンさんの方を振り向いて小声で語りかけた。


「エレンさん、素晴らしいよ。誰もいない。もしかしたら俺ってかなり運がいいのかも?」


「……そうかもしれませんね」とエレンさんが答えてくれた。


(実際には人払いが済んでいるだけなのですが……)


 誰もいないということで、いい感じだ。そして部屋の前で深呼吸をした。

 軽くノック。


「どなたですか?」


 澄んだ声が扉の向こうから聞こえた。


「レイゼンです。魔石をお持ちしました」


「どうぞ、お入りください」


 よし、うまくいった。ここまでは完璧だ。あとは魔石を交換しよう。

 扉を開けると、そこにはベッドに腰掛けたソフィア様がいた。柔らかな灯りに照らされ、どこか儚げだ。しかし前回とは違って元気そうに見える。


「わざわざありがとうございます」


「いえ、約束ですから」


 そう言って魔石を出した。魔力吸引魔道具を定期的に使ってくれているようで魔石の色が変わっている。俺は魔力の入っていない魔石に交換した。

 そしてソフィア様に確認した。


「体調はいかがですか?」


「はい。あれからずっと……問題ありません」


 よし、やはり問題ないようだ。

 なんだかんだで少し安心する。


「それは良かったです。ならばもう大丈夫ですね」


 できれば、今回で終わりにしたい。大丈夫なら、もう来なくてもいいのでは……と、淡い期待が頭をよぎった。

 だが、そこでソフィア様の表情が曇った。


「……でも、怖いのです」


「え?」


「できれば今後も、魔石の交換をお願いできませんか?」


 悲しげな瞳でそう言われて、断れるわけがない。


「はい。もちろんです。次は三カ月後くらいに。多少遅れることもあるかもしれませんが、そこはご了承ください」


「よかった……」


 ほっとしたように息を吐き、ソフィア様は言った。


「もしかしたら、もうレイゼン様は来ないのではないかと思っていました。不安で、不安で……でも今回来てくれて、そして今後も来てくれるということで本当に良かったです」


 そう言って、俺の手を握る。そして、じっとこちらを見つめてくる。

 ちょっと待ってください……距離が近いのですけど?


「やはり私は、不安なのです」


「……でしょうね」


 それは凄く分かる気がする。S級という魔力は凄い。そして魔力過多で重い症状だったと聞いている。不安があるのは当然だろう。

 そう思っていたらソフィア様が続けた。


「私には夢があるのです」


「夢、ですか?」


「はい。やはり私も女です。大好きな男性と結婚したいのです」


「なるほど……それはそうですよね」


 当然の願いだ。

 王女である前に、一人の女の子なのだから。結婚に夢があるのは当然だと思う。

 きっとソフィア様は公爵の子息2人のどちらかが好きなのだろうな。その夢はかなえてあげたい。


「私は、その時まで生きることができるのでしょうか?」


 その問いは、静かで、それでいて重いものだった。


「もちろん、大丈夫だと思いますよ。これまで順調でしたし、これからもきっと」


「本当ですか?」


「はい。大丈夫だと思います」


 少しだけ、ソフィア様の表情が柔らいだ。俺の言葉ぐらいで安心してくれたならば何よりだ。


「ならば……私の想い人と結婚できますよね?」


「ええ。きっと。ソフィア様が好きな方と結婚できることでしょう」


「……安心しました」


「それは良かったです」


 少しの沈黙。手はまだ握られている。じっと見つめられているので、目を逸らすこともできない。

 でも……そろそろ戻らないと。


「では、私はこの辺で」


「分かりました。ありがとうございます。ではまた三カ月後くらいに。お待ちしておりますね」


「はい。分かりました」


 そうして俺は部屋を出た。はぁ……何とかなった。とりあえず今回は余計な言質は取られていない。

 ……いや、三カ月後は確定したけど。それでも、変な約束は増えていない。


 だから今日はそれで良しとしよう。俺は小さく頷きながら、静かな廊下を戻っていった。

 そこにはエレンさんが待っていた。俺は思わず指を立てて、うまくいったことを伝えた。声を出せないからね。

 エレンさんもほっとした様子。そうして俺はエレンさんと一緒に部屋に戻ることにしたのだった。

いつも読んで頂いてありがとうございます。毎日の投稿を限界まで続けていく予定です。


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